全仏以降の目標やテニスとの向き合い方について語った二宮真琴 二宮真琴は、同い年の穂積絵莉と組んだ女子ダブルスで、今年ローランギャロス(全仏オープンテニス)の決勝へ日本女子ペアとして初めて進出し、準優勝という輝かしい結果を残した。 すでに…



全仏以降の目標やテニスとの向き合い方について語った二宮真琴

 二宮真琴は、同い年の穂積絵莉と組んだ女子ダブルスで、今年ローランギャロス(全仏オープンテニス)の決勝へ日本女子ペアとして初めて進出し、準優勝という輝かしい結果を残した。

 すでに2017年ウィンブルドン女子ダブルスではベスト4に進出していたが、その自己最高の結果を上回った。グランドスラムの決勝の舞台に初めて立ったことで、二宮は自分のキャリアに関してある重大な決断をパリで下すことになる。

 彼女が決断したときの心境やこれからの目標についてじっくり語ってもらった。

――全仏の決勝では敗れはしましたが、全体を通してどんな大会でしたか?

二宮真琴(以下、二宮)決勝には、正直行けるとは思っていなかったです。絵莉と2人で試合中にでも話し合っていたので、いつも前向きにできていたのが、だんだん結果につながっていったんだと思います。私はクレー(赤土のコート)が苦手で、絶対勝てないと思っていたんですけど、結果が出たので、意外にいけるのかなと思っちゃいました(笑)。

――穂積さんと日本女子ペアとして、初めてグランドスラムの決勝に進んだことに大きな意味があると思いますが、二宮さんはどう捉えていますか。

二宮 日本人同士でというのは、すごいことだと思うんですけど、私自身、グランドスラムの決勝にいけたということが驚きでした。まだ、そこにいく実力が自分にはついていないと思っていたので。でも、もっとやればできるんだということも感じることができました。

――全仏でのベストマッチは?

二宮 2回戦かな、あの試合は結構大きかったです(2-6、6-2、6-0 アタウォ/グローネフェルド)。第1セット0-4で、どうしようという状況でした。第1セットは落としたけど、こうやったら2ゲームを取れたよねとか、戦術を考えてまだいけるとか、2人で話し合ってできた試合が2回戦でした。

――穂積さんが前衛で二宮さんが後衛の陣形の時、二宮さんのフォアハンドトップスピンロブが効果的で、相手ペアの陣形を揺さぶっていましたよね。

二宮 手応えがすごくありました。昔からロブは使っていたんですけど、いつもより決まる確率が高かったと思います。ロブが決まるだけでなくて、ロブによって相手の返球が甘くなったところを決めてポイントが取れた。クレーでバウンドがより跳ねるので、フォアのロブは効くなと思って、相手の陣形も崩せるので、ロブを打てるときはどんどん使っていこうと話していました。

 感覚で打っているので、どうやって打つとかタイミングがどうとかは、わからないですけど、相手前衛がちょっと前に出るのが見えたら、打つようにしていました。あと、自分の打ったボールがサイドにいって、相手をコートの外へ追い出せたら、(ダウンザラインへの)ロブを使って、さらに相手を多く走らせるようした。自分の調子がいいと、相手の動きがよく見えるし、全体的な調子もよくて噛み合っていたんだと思います。

――”えりまこ”ペアは、オーストラリアンフォーメーション(後衛のサーバーと、味方前衛が同じサイドで構える変則フォーメーション)も使いますよね。例えば、準決勝のマッチポイントでは、オーストラリアンフォーメーションから相手にダウンザラインへのリターンを打たせて、二宮さんがフォアクロスロブのウィナーを決めて、勝利しました。

二宮 あんなにきれいに決まることはあまりないですけど(笑)。私が、バックハンドでラリーするよりもフォアハンドでラリーする方が強いので、絵莉と以前組んだときから、オーストラリアンフォーメーションを使って、私がフォアサイドに移動する戦術をとっていました。

――決勝では、グランドスラムのセンターコートで初めてのプレーでしたね(決勝 3-6、3-6 クレチコバ/シニアコバ)。

二宮 始まる前は、グランドスラムのセンターコートでのプレーですごく緊張していたんですけど、入場した時に観客が少なくて、「あ、これ大丈夫だ」と思って、コートに入った瞬間、緊張がなくなりました。(試合後は)思ったより反響がすごく大きかったですね。(帰国時の羽田)空港での人の多さにびっくりしました。ほんのちょっとの間だけ楽しんでおこうかなって思っていました(笑)。
――全仏準優勝後の、

「ダブルスを極めたい」という二宮さんの決断の言葉が印象的でした。なぜ決心したのか、改めて教えてください。

二宮 注目度や賞金も、シングルスの方が断然高いので、シングルスで勝ちたいと思っていたんですが、(今年の)2月と4月のフェドカップ(女子国別対抗戦)がきっかけで考えが変わりました。ダブルスで国の勝敗がかかる試合を任せてもらい、そこで勝てたのが大きかったんです。

 ダブルスでもっと上を目指していきたいし、2年後に東京オリンピックがあるから、そこも狙えるし、出るからにはメダルも獲りたい。でも、2年しかないので、今からシングルスのランキングを上げるのは絶対大変で、ダブルスの方が(出場条件のランキングに)近い位置にいるから、とりあえず東京オリンピックまではダブルス一本で行こう、と。フェドカップと全仏の結果もあって決めました。



全仏でダブルスを組んだ穂積絵莉とは94年生まれの同期で、いい関係性を築いている

――プロ6年目の二宮さんは、8月13日付けのWTAランキングで、シングルス676位、ダブルス26位(日本女子でダブルスはトップ)。これまでシングルスを中心にしてきたのは、どんな理由があったんですか?

二宮 まず、シングルスとダブルスの待遇の違いがあります。海外選手はダブルスプレーヤーが多いので、そんなに変わらないのですが、日本人はシングルスへのこだわりがある。会社の方(所属先の橋本総業)も、シングルスでという意向が強かった。(日本では)やっぱりシングルス(重視)なんだなというのは感じていましたし、(私自身にも)すごくシングルスに未練がありました。

 例えば、会社のボーナスも、シングルスのランキングによって反映されていました。元々ダブルスは(査定対象では)なくて、私のダブルスランキングがすごく上がってきたときに考えてくださって、反映されるようになったんです。

 30歳ぐらいになったら、ダブルスだけで、というのもありかもしれないですが、24歳だとまだ動けるし、今のうちシングルスをやっておかないという思いもありました。一方で、これ以上中途半端にやっていると、東京オリンピックに間に合わなくなってしまう焦りもありました。

 現在は、ダブルス専門の新しいツアーコーチを探していますが、なかなか見つからないんです。

――普段のツアーは個人戦ですが、女子国別対抗戦・フェドカップで日本代表として戦うことは、どう捉えていますか?

二宮 ジュニア時代から今まで日の丸を背負って団体戦を戦ったことがなかったんです。初めて団体戦を戦ったのは、(橋本総業で出場した、実業団の)日本リーグでしたから。もちろん初めて選ばれたときはうれしかったです。日本代表としては、プレッシャーや緊張感も、普通の試合と違ったものがありました。団体戦はすごく楽しい。でも、まだそんなに特別な思いというのはなくて、自分のプレーをするだけだと思っているので、勝っても負けても、自分らしいプレーをしたいです。

――2018年アジア大会(インドネシア・ジャカルタ、テニス競技8月19~25日)に、なぜ出場しようと思ったのですか?

二宮 アジア大会に選んでもらえるのなら、大きい大会だと思うので、プレッシャーのかかる所でやりたい気持ちがありました。自分の中では、オリンピックの練習だと思ってやりたいと思っています。

――2020年東京オリンピックへの思いを聞かせてください。

二宮 日本開催というのは、私の中では大きいですね。自分が、ダブルスのトップ10に入っていれば、パートナーを自分で選ぶことができるので、まずはそこを目指したいです。

 ちなみにミックスダブルスもあるので、メダルも含めてちょっと狙いたいと思っています。オリンピックのメダルを獲ると、人生が変わるって言われているので(笑)。

――ダブルスで世界のトップ10に入るために必要なことは?

二宮 今までは、Gプロジェクト(2016リオオリンピックの女子ダブルスで金メダルを取るという日本テニス協会のプロジェクトがあったが、2013年にプロジェクト自体が消滅)で学んだことがベースになっていたんですが、ダブルスの動きをもっと勉強したいです。サーブのスピードを上げたいですし、いろんなショットのレベルも上げていきたいです。

――グランドスラム女子ダブルス初優勝への意気込みは?

二宮 今は大きい目標がオリンピックになるんですけど、1年に4回グランドスラムがあるので、どこかで爆発して優勝できるような力をつけていきたいと思っています。

 元々ハードコートが好きなので、全豪か全米でグランドスラム優勝をするという目標があるんですけど、実は、まだ両方とも1勝もできてないんですよ。今度の全米では、(加藤)未唯と組むので、ちょっとでも勝ちたいです。力をつけていけば、どこでもチャンスはあると思っています。

――最後に、2018年後半戦の目標を教えてください。

二宮 ダブルスに専念すると決めたので、結果も大事だと思います。ツアー優勝をまだ1回しかしたことがないので、またツアー優勝をしたいです。ランキングを上げて、来年につなげられるようにがんばります。