新生・森保ジャパンにオススメの選手(2)MF青山敏弘(サンフレッチェ広島) 森保一監督の代名詞ともいえる3-4-2-1の布陣で、カギを握るのはどのポジションになるだろうか――。3度のJ1優勝を成し遂げたサンフレッチェ広島時代の戦いを鑑(…

新生・森保ジャパンにオススメの選手(2)
MF青山敏弘(サンフレッチェ広島)

 森保一監督の代名詞ともいえる3-4-2-1の布陣で、カギを握るのはどのポジションになるだろうか――。3度のJ1優勝を成し遂げたサンフレッチェ広島時代の戦いを鑑(かんが)みれば、各ポジションで求められる役割が浮かび上がってくる。

「新生・森保ジャパンにオススメの選手(1)」はこちら>>>



32歳でも高いレベルのパフォーマンスを維持している青山敏弘

 後方からのつなぎを大事にした広島では、GKやセンターバックは守備力だけでなく、高い足もとの技術も不可欠だった。また、守備時にはサイドバック、攻撃時にはウイングと、ひとり二役を求められるウイングバックは何より走力が必要で、森保監督の戦術を体現するうえで重要な存在だった。

 2シャドーにはパサータイプとセカンドトップ型がバランスよく配置され、前線での起点になるとともに、一方がラストパスを供給し、もう一方がゴール前に侵入してフィニッシュワークを担う。また、守備時には両サイドに開いて、相手のサイド攻撃を封じる献身性も求められた。

 そして1トップは前線にとどまるよりも、何度も動き出しを繰り返し、自らが受け手になるだけでなく、味方のためにスペースを作り出す。森保監督は広島時代の晩年に収まるタイプの1トップを重用したが、より機能していたのは、動き出しに優れる佐藤寿人が務めていたときだった。

 基本布陣は3-4-2-1だが、攻撃時に4-1-5、守備時には5-4-1となる可変システムは、各々が状況に応じた判断と明確な役割を理解していなければ成り立たない。その構造は実に複雑ながら、それぞれがやるべきことをまっとうしていたからこそ、広島は高い組織力を築き、黄金期を生み出すことができたのだ。

 ただし、その組織性も彼らがいなければ成り立たなかっただろう。青山敏弘と森﨑和幸――。この2ボランチの阿吽(あうん)の関係性こそが、広島の複雑なスタイルを機能させていたのだ。

 攻撃時には森﨑が最終ラインに下がり、ビルドアップの役割を担う。青山は4-1-5の「1」の位置で、後ろと前方のつなぎ役をこなす。逆に守備時には青山が高い位置でプレスをかけ、カバーリングとインターセプト能力に優れた森﨑が最終ラインの手前でボールを刈っていく。攻守両面において、この2ボランチの役割は大きなウエイトを占めており、実際に広島の3度のJ1優勝は、このふたりがシーズンを通してフル稼働できた年に限られている。

 本題に移ろう。森保ジャパンに推薦したい選手は誰か?

 この議題に対して、筆者はこのふたりを推したい。もっとも、コンディション不良で今季のリーグ戦で出番のない森﨑の代表入りは、37歳という年齢や、これまでに代表選出経験がないことも含め、現実味に欠ける。ただ、先の西野ジャパンでも候補に入っていた青山は、現在の調子を考えても十分に代表入りを果たす可能性はあるだろう。

 そもそも、長く代表から遠ざかっていた青山が、ロシアワールドカップ直前に代表復帰を果たしたのは、西野監督の参謀役を担った森保コーチの意向が大きかったと考える。3バックの導入も視野に入れていたなか、そのシステムでタクトを振るう青山の姿を思い描いていたはずだ。

 しかし、結果的に青山はメンバー入り直後に負傷が発覚し、代表から離脱する。大会直前の合宿やガーナ戦で3バックを試しながら、結局その構想が頓挫したのは、青山の離脱と無関係ではなかっただろう。

 現役時代にボランチだった森保監督は、広島を率いていた時代から青山に大きな信頼を寄せていた。高いパスセンスに加え、ハードワークを厭(いと)わず、球際の争いでも強さを発揮する。連覇を成し遂げた翌年の2014年からキャプテンの大役を与えたのも、さらなる成長を願ってのことだろう。その期待に応えるように、青山は精神的な強さに磨きをかけ、2015年にはチームを3度目のJ1優勝に導き、自身はMVPに輝いている。

 青山の特長はなんといっても、そのキック精度にある。低い位置から一発のフィードで決定機を生み出す能力は、他の追随を許さない。森保監督は就任会見で目指すべきスタイルとして、「速攻もできれば、遅攻もできる」と語っている。とりわけ世界を見据えたときに、「速攻」は大きなテーマとなるはずで、高精度のロングフィードは戦況を変えるうえでの大きな武器となる。

 パサータイプのボランチは、ロシアでブレイクを果たした柴崎岳が一歩リードする存在だろう。また、故障をきっかけにロシアで出場機会を得られなかった大島僚太も引き続き候補になるはずだ。ただし、両者はショートパスでリズムを作り、高い位置で違いを生み出すタイプ。どちらかといえばポゼッション型のチームでこそ、輝きを放つ選手だ。

 一方で青山は、カウンターを導くのはもちろん、大きなサイドチェンジで攻撃の幅も生み出せる。ウイングバックを置く3-4-2-1の布陣では、よりサイド攻撃が重要となるだけに、正確なフィードで両サイドを走らせることのできる青山の能力が求められる可能性は高い。

 ネックとなるのは年齢か。現在32歳で、4年後は36歳になる。同年代の本田圭佑は代表引退を発表した。ロシア大会前に「おじさんジャパン」と揶揄(やゆ)された日本代表は、世代交代が大きなテーマとなっており、青山の招集はその流れに逆行するものだろう。

 もっとも、今季の青山は32歳にしてコンディションをさらに高めている。動きのキレが増し、運動量に衰えは見られない。とりわけ守備時における対応力は、これまで以上の強さと鋭さを備えている。

 2014年のブラジルワールドカップでは、唯一の出場となったコロンビア戦で世界との差を痛感した。4年の月日が経ち、雪辱を果たすチャンスを得ながら、今回は負傷によってその機会を失った。おそらく青山には、4年後を目指すモチベーションが備わっているはずだ。ましてや、恩師ともいえる監督が率いるチームである。その指揮官は就任時にこう語っている。

「世代交代に関しては、言葉ありきではなく、この世界には競争があります。実力がある選手が生き残っていく世界。年代間の融合を図りつつ、新しい日本代表を作り上げていきたいと思っていますが、ベテラン選手を呼ばずに若い選手と入れ替えるのではなく、ベテラン選手の持っている経験を若い選手に伝えてもらいたい」

 年齢によるハンデは、培ってきた経験と揺るぎない信頼によって補われるはずだ。

(3)へつづく>>