3戦連続150球以上には懸念「164球はないですよね」 第100回全国高等学校野球選手権記念大会は17日、13日目を迎え、第2試合で金足農(秋田)が横浜(南神奈川)を劇的な逆転劇の末、5-4で破り、23年ぶりの準々決勝進出を決めた。試合序盤…

3戦連続150球以上には懸念「164球はないですよね」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会は17日、13日目を迎え、第2試合で金足農(秋田)が横浜(南神奈川)を劇的な逆転劇の末、5-4で破り、23年ぶりの準々決勝進出を決めた。試合序盤から2点差の攻防を繰り広げた好試合は、2点ビハインドの8回裏に金足農の高橋佑輔がバックスクリーンに土壇場の逆転3ランを運び、最後はエース吉田輝星が3者連続三振締め。164球の熱投でチームを勝利に導いた。

 この日の主役は、やはり吉田だった。3試合連続で9回完投。打席に立っても、3回には自らバックスクリーンへ同点2ランを叩き込んだ。8回裏も先頭打者だった吉田のセンター前ヒットから逆転劇がスタート。9回には自身今大会最速の150キロも計測し、12安打を許しながらも14三振を奪うピッチングとなった。

 最後まで攻める姿勢で投げ続けた吉田は、開幕前からプロスカウトも注目する逸材として知られていた。元阪神でメジャー右腕の藪恵壹氏も「吉田君のあのストレートは本当に質がいいですね」と感心する。質がいいストレートとは、どんな球なのだろうか。

「ボールが指先から離れた瞬間からキャッチャーミットに収まるまで、勢いを失わずに落ちることがない。本当に質のいいストレートを投げますね。一度トラックマンを使って、どんなストレートなのか、球の回転数など数値化してみたくなる。そんなピッチャーですね。

 あの球が投げられるのは、しっかり下半身を使って投げているから。右足1本で立った後、踏み込んだ左足にグワッと一気に体重を移動することができる。1から一気に100までグッと移動できる感じですね。高校生であれだけ上手く下半身を使った投げ方ができる投手は、そう多くはいませんよ。

 最後、9回にスタミナは大丈夫か心配しましたが、逆に力を入れましたね。150キロを投げて、さらに3者三振斬り。それまで毎回の12安打を許していたのに、最後だけ3者凡退に締めましたから。これは見事でした」

「3試合すべてで150球以上を投げているのは気になります」

 左打者の足元に切れ込むスライダーも威力十分だが、藪氏が注目するのは「落ちる変化球」だ。「チェンジアップなのかフォークなのか。打者の左右関係なく投げられる、あの落ちる球を有効に使えていますね」と高評価。だが、同時に3試合連続で投球数が150球を超えたことには、元投手という立場からも「心配ですね」と懸念を示す。

「今日は164球ですか。164球はないですよね(苦笑)。投手が1枚しかいないんでしょうが、3試合すべてで150球以上を投げているのは気になります。あの下半身の使い方だったら、上半身や腕だけの投げ方ではないので、見た目以上にダメージは少ないかもしれない。それでも、やっぱり肩肘に投げただけの負荷は掛かりますし、何よりもトーナメント方式だとリカバリーの時間がない。これで準々決勝は明日でしょ。第4試合だということが唯一の救いですが、やはり球数は心配ですね」

 敗れた横浜は、同点で迎えた6回に1点を勝ち越すと、7回にも3連打で1点を追加。「ここで投手を及川(雅貴)君に代えるのかと思いました」と藪氏は言うが、横浜の平田監督は先発・板川佳矢を最後まで投げさせた。8回表、1死三塁の場面で途中出場の小泉龍之介がスクイズを仕掛けるも失敗。打ち直しは遊ゴロとなり、追加点を奪えなかった。「あそこはもう一度スクイズで攻めても良かったかもしれませんね。もう1点取れていたら、横浜勝利で終わっていたと思います」と振り返る。

 1995年以来23年ぶりのベスト8進出を決めた金足農は、準々決勝・第4試合で近江(滋賀)と対戦する。強打を誇る近江だが、藪氏は「投手戦になるかもしれません」と見る。

「金足農はもちろん吉田君が先発するでしょう。近江の背番号18、左腕・林(優樹)君もいいピッチャーですよ。常葉大菊川戦で最後に投げた背番号1の金城(登耶)君も同じく左腕で、3失点はしましたが決して悪くないピッチャーです。強打を誇る近江が吉田君をどう攻めるか。バントを絡めて攻撃する金足農が、近江の左腕コンビをどう食らいつくか。これはいい試合になりそうですね」

 悲願の優勝まで、あと3勝。甲子園がいよいよ大詰めとなってきた。(Full-Count編集部)