日本代表とグランドスラム優勝への思いを語った穂積絵莉 穂積絵莉/二宮真琴組は、グランドスラムの今季第2戦であるローランギャロス(全仏オープンテニス)の女子ダブルスで、惜しくも準優勝に終わったものの、日本女子ペアとして初めてグランドスラム…



日本代表とグランドスラム優勝への思いを語った穂積絵莉

 穂積絵莉/二宮真琴組は、グランドスラムの今季第2戦であるローランギャロス(全仏オープンテニス)の女子ダブルスで、惜しくも準優勝に終わったものの、日本女子ペアとして初めてグランドスラムの決勝を戦い、日本テニス史上に新たな足跡を残した。

 準優勝に輝いた女子ダブルスのひとりである穂積が、自分たちが成し遂げた快挙についてどう思い、今後はどういった目標を持ってテニスに取り組んでいくのか聞いてみた。

――準優勝プレートを手にした時、どんな感情でしたか?

穂積絵莉(以下、穂積)負けた直後で、表彰式の時はかなり悔しかったです。負けたこともそうなんですけど、(決勝で)いいプレーができなかったのも両方悔しかった。決勝まで来た喜びよりも、あの優勝トロフィーをもらいたかったなというのが正直な感想でした。でも、(準優勝の)プレートは、やっぱり重みがあって、これを手にできてよかったという思いもありました。

――二宮選手と日本女子ペアとして、初めてグランドスラムの決勝に進んだことに大きな意味があると思いますが、穂積選手はどう捉えていますか。

穂積 やっぱり日本人と組むのが好きですし、いろいろ話し合ったりとか、作戦を立てたりとかできるのが性格的にもすごく合っている。特に今回は同期で、一緒に勝ち上がれたのはうれしかったですね。(周りから)言われるまで知らなかったんですけど、やっぱり史上初もうれしかったです。

――全仏でのベストマッチは? 

穂積 選ぶのが難しいんですけど、うれしかったのは2回戦(2-6、6-2、6-0 アタウォ/グローネフェルド)です。今年の全豪2回戦(パートナーは加藤未唯)で当たって、ボコボコに負けて、嫌なイメージがありました。ドローを見た瞬間から1回戦を勝っても、次はあの2人かと思って、実際に第1セットが0-4になると、またかと(負けたときのことが)よぎりました。そのまま第1セットは落としてしまいましたが、真琴と話して、第2セット以降はいいプレーをできたのがよかったです。

――全仏の自己分析を教えてください。2017年全豪女子ダブルスベスト4のときとは何が違ったのでしょう?

穂積 全豪の時は勢いと、本当に調子がよかったけれど、自分の中ではたまたまというか、ベスト4に進んじゃったという感覚があったんです。でも全仏は、1個1個ちゃんと勝っていった感じがあって、試合の中で、いい時と悪い時の波がお互いにあっても、ちゃんと2人で持ち直せたんです。

――以前は、穂積選手が前衛、二宮選手が後衛の時が弱点でしたが、今回はこの陣形でもポイントに結びつけられるようになりました。

穂積 それは大きかったですね。真琴のロブは、以前組んだ時から武器としてあって、サーブが真琴の変化としては大きかったと思います。前は真琴のダブルフォールトが多くて、大事なところでサーブがあんまり入らなかったんですけど、全仏の時は安定していた。2人合わせて、ファーストサーブの確率が70~75%で高かったので、それが大きかったと思います。

――最近では少なくなったオーストラリアンフォーメーション(サーバーと味方前衛が、同じサイドにいる変則フォーメーション)もうまく活用しましたよね。

穂積 私も真琴もフォアがいいので、フォアで打っていきたいという狙いがありました。例えば、アドサイド(コートの左サイド)から真琴がサーブを打つ時、私が前衛でそんなに動けるタイプではないので、真琴がバッククロスのラリーだと相手に押されてしまうことがある。ラリーが長くなってしまうんだったら、真琴は、フォアの方が威力があるし安定もしているので、オーストラリアンフォーメーションを使ったわけです。

――決勝を振り返ってください。(3-6、3-6 クレチコバ/シニアコバ)

穂積 相手ペアのスローなペースにつき合ってしまいました。私も、今までよりクオリティが落ちたり、真琴もゲームの最初でボレーミスが出てしまったり。私が、サーブを打つ時のゲームは落としてはいけないというのがあったので、序盤でブレークされてダメージが大きかったですね。

――母・盛子さんが決勝に急遽駆けつけました。自分のプレーを、グランドスラムのセンターコートで見せられましたね。

穂積 ウィッシュリストというのを、スマホに28個書き出しているんです。その中に、「お母さんをセンターコートに招待してプレーを見せる」というのがあって、それを叶えられてすごくうれしかったです。



全仏オープンでは、同期のえりまこペアの息がぴったりと合っていた

――元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんを、今年の3月からツアーコーチに招いたのはなぜですか?

穂積 プロになって3~4年目ぐらいから、シングルスでもランキングが上がったら、愛さんにコーチとして見てもらいたいと思っていました。昨年末に、杉山芙沙子(愛の母親)コーチと(契約が)終わったので、コーチを探すことになって、日本人コーチを探していたんですけど、あまりツアーコーチがいないんです。

 自分の母とも相談して、愛ちゃんに聞いてみたらという話になって、今年の2月にやってもらえませんかと聞いたら、快く引き受けてくれました。

――杉山愛さんからのいい返事を聞いて、どうでしたか?

穂積 うれしかったですね。どういう感じの練習になるんだろうとか、始まる前からすごく楽しみでしたし、早く練習を見てもらいたいなという気持ちでした。ただ、杉山コーチはずっとツアーに帯同できないので、4月からイギリス人のアダム・ロンスブローコーチについてもらっています。

――杉山さんから、どんなことを学びたいですか?

穂積 私自身もそうだし、愛さんも思っている課題が、フットワークの向上です。芙沙子さんからは、打ち方とかフォームのことを言われていて、ベースはできたので、今はいいフォームで打つためのいいフットワークに取り組んでいます。

 球出しでコートの真ん中で打つ時から意識をフットワークに持っていて、とにかくどのボールでもいい位置に入るようにしています。一球たりとも手を抜かずに打つ意識をしただけで、キツさが今までと違って、めっちゃ疲れます。練習の質が上がりましたね。

 あとは、フォアの打点が体に近くて、つまることが多かったんですけど、それをどうやって離して打てるのか、アドバイスをもらっています。安定感が増すと思いますし、やっぱり毎回同じところで打てたら、最高じゃないですか。そこに、より近づけるようにするために、フットワークの大切さが改めてわかりました。

――ちなみに、杉山さんと全仏準優勝について何かお話はしましたか。

穂積 喜んでくれました。最後は、悔しかったね、惜しかったねという感じでしたけど、3月からやってきたことが、結果につながってよかったねと言ってくれました。

――穂積選手は、8月13日付けのWTAランキングで、シングルス242位、ダブルス32位です。2012年1月1日にプロ転向して、24歳になり、プロ7年目の現在の立ち位置をどう捉えていますか。

穂積 基本的にもっと上にいたいです。(ツアー下部のITF大会を転戦するのは)大変ですけど、やっぱり私は(単複)どっちもやりたいんで。WTAツアーのよさを知っているからこそ、シングルスでもそこで戦いたいと思います。

――シングルスでは、グランドスラムの本戦にストレートインできる目安となる世界ランキングトップ100入りが、まず目標になるのでしょうか?

穂積 やっぱりトップ100ですよね。来年(1月)の全豪は(予選を戦わずに)ダイレクトに本戦に出たいので、何とかそこまで持っていきたいです。

――女子国別対抗戦・フェドカップやオリンピックなどの日本代表として戦うことを、どう捉えていますか。

穂積 日本代表として戦う時は、賞金もポイントもないので、普段のツアーとは全然違うんですが、それでも日本代表として戦うことで結果を残したら、普段サポートしてくれている人や応援してくれている人に、より感謝を伝えられると思いながらやっています。団体戦は大好きですよ。楽しいですし、味方がいるのって心強いです。

――2018年アジア大会(インドネシア・ジャカルタ、テニス競技8月19~25日)に、出場することを決心したのはなぜですか。USオープンの予選と日程が重なり、多くの選手が難しい決断を迫られましたよね。

穂積 シングルスで出ます。すごく迷ったんですけど、東京オリンピックに出たいというのがベースにあったので、出場できるチャンスがあるんだったら、出た方がいいかなと。USオープンは毎年あるので、東京へのチャンスを取りました。(シングルスの優勝者は、2020年6月8日付けの世界ランキング300位以内であれば、東京オリンピックの出場資格を獲得できる。ただし、4名の日本女子選手がダイレクトに出場を決めた場合は、アジア大会優勝者でも出場できない)

――穂積選手は、リオデジャネイロオリンピックに出場して、オリンピック自体はすでに経験していますが、2020年東京オリンピックへの思いは、また特別なのでしょうか。

穂積 やっぱり日本開催というのは強く意識しますね。絶対出たいです。東京オリンピックに限らず、私のテニスを見てくれている人に、元気とか感動を与えたいと思って常にやっています。また見たいなと思ってもらえるようなプレーをしたいと思っています。

――2018年シーズンの目標を教えてください。

穂積 アジア大会優勝が、直近の大きな目標になります。今はダブルスよりシングルスを頑張りたいです。グランドスラムでは、単複で優勝が目標です。男子があれだけ厳しいと言われてきた中で、錦織(圭)君が準優勝できたんです。日本女子テニスも盛り上げていきたいです。

――最後に、穂積選手にとってテニスとはどういった存在ですか?

穂積 テニスをやっていなかったら今の私はないので、テニスは今の私を作り上げたものでもあるし、これから成長していくうえで、絶対に必要なものです。