6月27日にイギリス・ロンドンで開幕するウィンブルドン(6月27日~7月10日)。 第1シードのセレナ・ウィリアムズ(アメリカ)はロジャー・フェデラー(スイス)と同年齢で、今年9月に35歳になる。このベテランを大本命に推す以外、まったく…

 6月27日にイギリス・ロンドンで開幕するウィンブルドン(6月27日~7月10日)。

 第1シードのセレナ・ウィリアムズ(アメリカ)はロジャー・フェデラー(スイス)と同年齢で、今年9月に35歳になる。このベテランを大本命に推す以外、まったくの白紙というのが女子の実情だ。ドーピング違反によるマリア・シャラポワ(ロシア)の資格停止の影響だけではない。セレナの2年連続7度目の優勝に向けた進撃を阻むだけの安定した成績を誰も残していない。

 ツアーには世界ランキングと別に、今シーズンの活躍だけ反映する「ロード・トゥー・シンガポール」がある。そのレースでは、1位=セレナ(世界ランキング1位)、2位=アンジェリック・ケルバー(同4位/ドイツ)、3位=ビクトリア・アザレンカ(同6位/ベラルーシ)、4位=ガルビネ・ムグルッサ(同2位/スペイン)、5位アグネツカ・ラドバンスカ(同3位/ポーランド)、6位=カルラ・スアレス ナバロ(同13位/スペイン)、7位=マディソン・キーズ(同10位/アメリカ)、8位=シモナ・ハレプ(同8位/ルーマニア)……。

 セレナのウィンブルドンぶっつけ本番は例年通りだが、アザレンカは直前に故障欠場を表明し、トップ争いをする選手の最近の内容があまりに寂しい。全豪オープン優勝のケルバーは全仏オープンで1回戦負け、その全仏でメジャー初優勝を果たした22歳のムグルッサは今年初開催のマヨルカでの芝のトーナメント1回戦でベテランのキルステン・フリプケンス(ベルギー)に敗退した。2年前に4強入りしたハレプは年初に痛めたアキレス腱の不安を抱えたままで、2012年準優勝の実績を持つラドバンスカはバーミンガム1回戦でココ・バンダウェイ(アメリカ)に敗れた。2度優勝のペトラ・クビトバ(チェコ)も同2回戦で19歳のエレナ・オスタペンコ(ラトビア)に不覚をとっている。

 そんな中、芝の前哨戦のタイトルは、ノッティンガムの優勝がカロリーナ・プリスコバ(チェコ)、スヘルトーヘンボスはバンダウェイ、バーミンガムは21歳のキーズ、マヨルカは22歳のカロリーヌ・ガルシア(フランス)と伏兵にばかり手柄を与え、直前のイーストボーンがドミニカ・チブルコバ(スロバキア)だった。この中で、抜け出てきそうなのは21歳のキーズあたりか。今年はクレーコートのローマで準優勝し、昨年のウィンブルドンでベスト8に入った。ムグルッサ、ラドバンスカ、ハレプにも勝っているパワーヒッター。それにしても、セレナにだけは3戦全敗で1セットも奪えていない。

 本命セレナも万全ではない。シュテフィ・グラフ(ドイツ)が持つメジャー通算優勝回数「22」の記録まであと1勝に迫ったものの、昨年のこの大会から3大会連続でいずれもあと一歩でチャンスを逃してきた。全仏オープン決勝ではムグルッサに完敗だったものの、昨年の全米準決勝のロベルタ・ビンチ(イタリア)、全豪決勝のケルバーに対しては自滅の色濃い敗戦だった。球足の速いウィンブルドンの芝コートとなれば、セレナのパワーは威力を増すが、一昨年は3回戦で第25シードのアリゼ・コルネ(フランス)、その前年は4回戦で第23シードのサビーネ・リシツキ(ドイツ)に敗れており、波乱があるとすれば〈中だるみ〉の頃の下位シードとの対戦か。

 日本勢は3人が本戦入りした。そのトップは5月に一度は38位までランキングを上げた土居美咲(ミキハウス)。1回戦の相手はウィンブルドン初出場の20歳ルイーザ・チリコ(アメリカ)だ。土居が予選を勝ち上がってウィンブルドン・デビューを果たしたのは2011年で、メジャー大会での3回戦進出はこのときの1度だけだが、左利き特有の外に逃げるサービスは芝で有効。今季の好調を象徴するような好結果につなげたい。

 ナンバー2、日比野菜緒(フリー)には初めてのウィンブルドンだ。全豪はシャラポワ、全仏はハレプとドロー運の悪さに泣いたが、今回も第32シードながら経験豊かなアンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)と手ごわい。体当たりの挑戦を期待しよう。

 奈良くるみ(安藤証券)の相手はこれまで2勝1敗と勝ち越しているマディソン・ブレングル(アメリカ)。メジャー大会での大勝こそないが、初戦負けも少なく、ウィンブルドンでは過去3度とも突破している。

 大坂なおみ(日本)を膝のケガで欠いて寂しくなった日本勢だが、3人の奮起に期待。明るい話題を日本に届けてほしい。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)