始動して約2週間で、前年度のワールドカップイングランド大会8強のスコットランド代表を迎えた。2連戦の2戦目は終盤までリードを保つも、5点差で惜敗。ここで悔しがるのが、いまの日本代表の姿である。 この国の梅雨らしい蒸し暑さに、アウェーの相手…

 始動して約2週間で、前年度のワールドカップイングランド大会8強のスコットランド代表を迎えた。2連戦の2戦目は終盤までリードを保つも、5点差で惜敗。ここで悔しがるのが、いまの日本代表の姿である。

 この国の梅雨らしい蒸し暑さに、アウェーの相手は難儀。かたやジャパンは、SO田村優のパスとキックの差配で首尾よく戦った。前半19分に先行後、しばしリードを保った。

 スコアが16-9となった折、スコットランド代表は主将のSHグレイグ・レイドローを投入。日本代表はここから、公式で「34,073人」のため息を誘うこととなる。

「皆に合わす顔がない」とは、ノーサイド直後のLO小瀧尚弘である。

 7点リードを守りたかった後半12分、自陣22メートルエリアでLOジョニー・グレイにタックルを放つ。

 押し返したかったところだが、「足が止まって、受けてしまって」。群青色の下敷きとなった赤白のLO小瀧は、接点から展退しないノット・ロールアウェーと判定された。

 相手のSHレイドローがペナルティゴールを決め、16-12とした。

 空中戦のラインアウトでは長身ジャンパーから逃れるサインコールで魅せたLO小瀧は、顔中に傷を作って収穫と課題を語るのみだ。

「前に出られたら互角にやれた。あとは、それをずっと続けられるか…」

 攻めても加点できなかった。例えば16-15と迫られ迎えた、後半22分頃。

 テンポ良い連続フェーズで巨躯揃いの防御をふらつかせる。
 
 約7分前に登場のCTB小野晃征は、「前半で相手の足が止まった」。試合中盤からは、横幅の広い守備網に対し縦、縦と境界線を破りにかかった。

 ゴールライン手前の接点に入り、SO田村へ球を渡す。そのSO田村が相手を巻き込んだ、さらに右側へ回り込む。SH内田啓介からパスをもらい、右ポスト手前へ直進する…。

 ここで、落球した。

「ボールが、汗で滑って…」

 この時間帯から、8対8で組み合うスクラムでもエラーが重なる。

 最前列の選手が順に入れ替わったことで、先発のPR稲垣啓太いわく「(組む際の)コミュニケーションがぎくしゃくし始めた」。不和ではなく、かすかな接触不良という意味だ。そのためか、終始観客のブーイングを誘ったマリウス・ミトレア レフリーを、味方に付けられなかった。

 後半30分。自陣10メートルエリアで組んだ1本で、故意に崩すコラプシングの判定を下される。

 10分前から出ていた中央のHO木津武士は、こう振り返るほかない。

「こちらが反則を取られるような崩れ方をしたのは、反省点です」

 ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチを据える秋、ジャパンはようやく新体制を本格始動させる。選手の合流時期がまばらで、昨秋のワールドカップでの3勝がナショナルチームの立場向上に直結せず。この初夏に渦巻いたこんな体制批判は、結果を残してからこそ伝えたかったろう。それだけに口惜しさは消えない。

 38歳のLO大野均は、ただただ、夜空を見上げていた。

「これだけ準備期間の少ないなかでこれだけの戦いができて、悔しさを感じられたのは、幸せです」
(文:向 風見也)