専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第168回 今年ほど「プロアマトーナメント」という言葉が、全国区に躍り出た年はありません。これもひとえに、片山晋呉選手の功績(?)と言ってもいいのかもしれません。 プロとアマチ…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第168回
今年ほど「プロアマトーナメント」という言葉が、全国区に躍り出た年はありません。これもひとえに、片山晋呉選手の功績(?)と言ってもいいのかもしれません。
プロとアマチュアが一緒にゴルフをするから「プロアマ」ですが、その試合形式は多岐にわたり、「これが、プロアマなの?」といったコンペもあり、その裾野は広がっています。
というわけで、今回は「プロアマ」の種類と広がりについて、考察していきたいと思います。
プロアマで最も有名なのは、AT&Tペブルビーチプロアマ(1986年~)でしょう。
そもそもの始まりは、1937年からスタートしたビング・クロスビー・ナショナルプロアマ(1985年まで)。4日間のトーナメントで、プロとアマが組んでの試合となります。
独特な組み合わせとスコア計算方法で行なわれていますが、プロトーナメントとして成立しており、PGAツアーに組み込まれています。
他、ボブ・ホープ・クラシック(1960年~2011年)が前身となる、キャリアビルダー・チャレンジ(2012年~2015年まではヒューマナ・チャレンジ)も、PGAツアーのトーナメントのひとつで有名です。
先のビング・クロスビーはアメリカの歌手・俳優で、『ホワイト・クリスマス』などのヒット曲で一世を風靡。ボブ・ホープもアメリカのコメディアンで、『腰抜け二挺拳銃』などの映画で人気を博しました。
特にボブ・ホープのゴルフ好きは有名で、PGAツアーにも出ているし、歴代の大統領とラウンドもしているし、果てはゴルフ殿堂入りまで遂げています。
こうして、ゴルフ好きの俳優が自分の名前を冠にしてプロアマを行なってきたアメリカ。それが、日本にも伝わって、「じゃあ、日本でもやろう」と登場したのが、平尾昌晃チャリティゴルフや、大橋巨泉インビテーション(1977年~1993年)などです。
一方、プロトーナメントの世界でも、アメリカではプロアマが盛り上がっていると評判になって、日本でも「じゃあ、前夜祭がてら(大会の)前日にでもやってみよう」となったようです。いずれにせよ、試合前はセレモニーをやっていたので、スポンサーのご機嫌伺いには、プロアマはちょうどよかったみたいです。
日本で最も有名なプロアマは、男子ツアーのフジサンケイクラシックのプロアマです。日本のゴルフ好き芸能人が総結集すると言われ、プロアマのみのテレビ放送があったりして、その人気は本大会をしのぐ勢いです。
こうなると、プロアマに出場する芸能人は”営業”仕事になりますから、お車代と称して、ギャラまでもらえます。
とはいえ、芸能人ばっかりのプロアマはフジサンケイぐらいなもので、あとは女子ツアーのサマンサタバサ ガールズコレクション・レディースのプロアマが派手かな、という印象ですね。
男子ツアーのトーナメントにおけるプロアマの多くは、”ギョーカイ”のゴルフ好きオヤジがコネを使って潜り込んでいる場合が多く、ただのオッさんのコンペにしか見えないこともないです。
通常のトーナメントのプロアマにおいて、出場者の偉い順番を言うと、以下のとおりです。一番はなんといっても、これ↓です。
(1)スポンサー筋
これは、冠スポンサーのお偉いさんと、同スポンサーの取引先のオーナー連中です。取引先の金融機関や出資者のお偉いさんとかですかね。
(2)関連企業、自社の社員、取引先の重役筋。
(3)がんばっている下請け企業の社長たち
(4)マスコミ、タレント関係
深夜のゴルフ番組などで活躍する女性MCやリポーター、そしてゴルフ雑誌の関係者ですね。
(5)運営各社、ボランティア、開催コースの地元の偉い人
実は、ゴルフ場周りの旅館組合とか、ゴルフ場の運営に携わっている会社などに対して、「ご苦労さん」の意味を込めて、それらの幹部を招待している場合があります。
まあ、ざっとこんな感じですか。
男子トーナメントのプロアマは、いろいろと脚色して華を添えて盛り上げないと、地味になりがちです。だから、女性のマスコミ&ゴルフ関係者は”お呼ばれ”される確率が高く、そうした方々は非常に重宝されます。
いずれにせよ、プロアマはBSなどで放送されることも減って、利益を産まなくなりました。
プロアマ自体がクローズされた”インビテーション”であり、一般の人が参加できない閉塞性も問われています。今は、大会スポンサーの”懐の深さ”を見せるためのプロアマで、今後どうなっていくのか、その成り行きを見守りたいと思います。
一方、大手のゴルフチェーンでは、傘下のゴルフ場から成績優秀者のメンバーを招待して、プロアマ大会を運営していました。
実は、このプロアマに取材がてら出たことがあるのですが、参加選手はすごく盛り上がっていました。女子トーナメントの前日開催だったのですが、出場してくるアマチュア男子はシングルクラスがほとんど。女子プロより飛ぶし、ショットは正確だし……といった具合で、女子プロたちですら「出番がなかった」とぼやいていました。
ハンデ15ぐらいで出場している私なんか、当然「お呼びでない」。ラウンドしているときから、疎外感をひしひしと感じていましたね。
一応、チーム戦だったので、どこかで貢献しないといけないのですが、そんな機会はなかなか訪れません。悩んだ挙句、やけくそでパターを打ったら、長いのがポンポンッと入ってくれて、なんとかメンツは保てたかな、と。
それはいいのですが、招待されたアマチュアの面々は、自分たちの倶楽部の誇りを懸けて、なおかつ、和気あいあいと戦える試合ということで、異常なハイテンションになっていました。
そうした姿を見ていると、やはりプロアマは、社会的なポジションというより、いかにゴルフを愛しているかで呼ばれるべきではないかと思うのですが、いかがでしょう?
いろいろな意味で、プロアマの転換期に差しかかっている昨今、最近流行り出しているのが”なんちゃってプロアマ”というか、数人のプロをゲストで呼んで、チャリティ形式だったり、レッスン形式だったりで、プロアマ大会を開くというものです。
出場している選手は、シードプロもおりますが、一時期活躍していたけど、今はシニアツアーに向けて充電期間中、みたいなプロが多いです。
プロと回るのがそんなにうれしいかって、やっぱり最初はかなり興奮するものです。
機会があれば、1度はプロと一緒にラウンドしてみたいものですね...
だいたい普通のアマチュアゴルファーは、プロとラウンドする機会なんて滅多にありません。もしそれが、ラウンド代に1万円ぐらい上乗せすればできる状況にあれば、1回ぐらいはラウンドしてみようか、と思いますよね。
シングルのアマチュアとは、何回かラウンドしたことがある方も多いでしょうが、プロとなると、球筋が違ってきます。アイアンでかなり高い球を打ってきます。これは、アマチュアにはなかなかできないことです。
もしレギュラーティーでのラウンドなら、パープレーぐらいの勢いで、すべてパーオンでグリーンに乗せてくる感じです。ただ、そこで「やっぱりプロはすごいなぁ~」と言うと、「それでも試合に出ると、ぜんぜんダメですよ。最近は決勝ラウンドに残れませんね」と、ぼやくプロが結構います。
それでも、特にシード権を持っているプロはすごいですよ。普通のセッティングのコースなら、大概アンダーを出して、スコアが潜りますから。
何かの機会があったら、一度”なんちゃってプロアマ”でもいいので、参加してみてください。プロの素晴らしさ、そしてプロの厳しさが、はっきりわかると思いますよ。
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