クリスティアーノ・ロナウドのユベントス移籍で号砲が鳴ったこの夏の移籍市場だが、大物選手の動向については、ほぼ決着がついたというのが大方の見かただ。それでも今月末の移籍期限に向けて、滑り込みでどのようなドラマが繰り広げられるのか、最後ま…
クリスティアーノ・ロナウドのユベントス移籍で号砲が鳴ったこの夏の移籍市場だが、大物選手の動向については、ほぼ決着がついたというのが大方の見かただ。それでも今月末の移籍期限に向けて、滑り込みでどのようなドラマが繰り広げられるのか、最後まで見逃せない。
プレシーズンマッチに出場した香川真司(ドルトムント)
日本人に関していうと、乾貴士(エイバル→ベティス)、大迫勇也(ケルン→ブレーメン)、原口元気(デュッセルドルフ→ハノーファー)ら、主だった選手はW杯前に新天地を決めていた。
余談になるが、これには、W杯で日本代表がさほど好成績を残すとは考えられず、そこでの活躍が年俸アップにつながることはないだろうという判断も関係したようだ。だが、これによってW杯で過度なアピールをする必要がなくなったため、チームプレーを重視する日本代表のスタイルにはプラスに働いたように思える。
一方、W杯前から取りざたされていた香川真司(ドルトムント)のフェネルバフチェ(トルコリーグ)移籍の話はなくなったようだ。
そもそも、香川のトルコ行きは、キッカー誌、ビルト紙、あるいは地元紙のルールナッハリヒテンなど、ドイツのメディアでは、ほとんど報じられていなかった。日本に伝わってきたのは、トルコメディアをニュースソースにした情報ばかり。
日本では、ガラタサライで長友佑都が生き生きとプレーし、ポジティブな発信をしていることから、仲のいい香川も……という受け止め方があるのかもしれないが、あまり信ぴょう性のないものだったと見るしかない。
ドイツ人にとって、トルコリーグへ移籍するということは日本人が思っているよりも抵抗がある。トルコを選択するというのは、よほど現所属チームとソリが合わないか、金銭的に折り合いがつかず、しかも他の欧州主要リーグで獲得される見込みがない場合に限られると言っていい。
したがって、トルコへの移籍は、基本的にはキャリアの終盤に差しかかっていることを意味する。フィオレンティーナからベシクタシュに移ったものの、その後、ブンデスに復帰、ヴォルフスブルク、シュツットガルトでプレーして輝きを取り戻し、ドイツ代表に返り咲いたマリオ・ゴメスなどは例外中の例外だ。29歳の香川がフェネルバフチェに行くというのは、いまひとつ想像しがたいものがあるのだ。
とはいえ、ドルトムントが若返りを考える時期に入っていることは確かだ。
この夏はソクラティス・パパスタソプーロスがアーセナルへ、アンドリー・ヤルモレンコがウェストハムへ、アンドレ・シュールレがフラムへ移籍。中堅、ベテランが去っていった。また、昨季チェルシーからレンタル移籍中だったミシー・バチュアイはバレンシアへと移籍した。
一方で、ドルトムントがここまで獲得したのは8選手。ベルギー代表のMFアクセル・ヴィツェルを中国の天津権健から、19歳ながらモロッコ代表としてW杯に出場したDFアクラフ・ハキミをレアル・マドリードから獲得。マインツでレギュラーだったDFアブドゥ・ディアロ、争奪戦を経てフランクフルトから獲得したFWマリウス・ヴォルフあたりも即戦力となるだろうが、小粒感は否めない。
香川自身は明言こそしていないものの、その発言からは移籍願望が見え隠れする。その心境は、昨シーズン終了後のコメントが、すべてを物語っているように思う。
「新しい監督が来て、選手も代わって、毎年そういうのが続くっていうのは、なかなか(大変)……。ミキ(ミキタリアン/マンチェスター・ユナイテッド)だったり、マッツ(・フンメルス/バイエルン)だったり、イルカイ(・ギュンドアン/マンチェスター・シティ)だったり、オバ(オーバメヤン/アーセナル)だったり、常に中心選手が毎年抜けていくなかで、これまでよく耐えてきたと思うんですけど、さすがにやっぱりそういうの(戦力ダウン)は感じました。
でも、それをリカバリーしてこのチームでやっていかなきゃいけない。ある意味、いい経験になったと思うので、来シーズン以降、巻き返すという意味では、この経験は必ず生きてくるんじゃないかなと思います」
ビッグクラブに移籍していったチームメイトの名前を並べたあたりに、その思いがこもっているように聞こえてならなかった。
トルコへの移籍はなくなったとはいえ、新しい動きがあるかもしれない。まだまだ今夏の移籍市場における香川から目が離せない。