MotoGP第11戦・オーストリアGPの舞台レッドブル・リンクは、ドゥカティが強さを発揮するコースだ。当地でのレースが復活した2016年以降は毎年優勝を飾っており、今年もやはり存分に強さを見せつけた。激しいバトルを演じたホルヘ・ロレン…

 MotoGP第11戦・オーストリアGPの舞台レッドブル・リンクは、ドゥカティが強さを発揮するコースだ。当地でのレースが復活した2016年以降は毎年優勝を飾っており、今年もやはり存分に強さを見せつけた。



激しいバトルを演じたホルヘ・ロレンソ(左)とマルク・マルケス(右)

 今年の勝者は、ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ・チーム)。第6戦・イタリアGPと第7戦・カタルーニャGPに続く、今季3勝目である。僅差の2位は、チャンピオンシップをリードするマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)。マルケスは昨年もアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)を相手に、最終ラップの最終コーナーまで熾烈なバトルを続けたが、今年はロレンソとの一騎打ちという展開になった。

 そのドヴィツィオーゾはというと、マルケスとロレンソを相手に、レース序盤から予想どおり三つ巴のバトルを繰り広げたが、リアタイヤ右側の消耗が激しく、中盤以降は一気にペースを落として、今年は3位でレースを終えた。

 今回のレースでは、優勝したロレンソ、2位のマルケス、3位のドヴィツィオーゾは、それぞれタイヤ選択が三者三様に異なっている。ロレンソのリアタイヤはソフトコンパウンド、マルケスはハード、そしてドヴィツィオーゾはミディアム、というチョイスだった。

 ソフト、ミディアム、ハードという3種類のコンパウンドの違いは、大まかにいえばグリップ性能と耐久性の差と考えればよい。ソフトコンパウンドは初期からのグリップ性能に優れる半面、摩耗性も高い。ハードコンパウンドは十分なグリップ力を引き出すまでにある程度の時間を要するため、初期の作動性では一般的にソフトよりも劣るものの、その分だけ耐久性にまさる。ミディアムはその中間、という具合だ。

 ポールポジションスタートのマルケスは、「今日の目標は、終盤でドゥカティ1台との争いに絞り込むことだった」とレース後に明かしたが、そのために序盤からハイペースで飛ばし、相手のタイヤ消耗を誘うという作戦に出た。それを察したソフトコンパウンドのロレンソは、「マルクはふつう、序盤から攻めるようなことをしないライダーだけど、今日は彼のペースやラップタイムを見ていて、攻めるつもりだということがわかった」と振り返った。

 ハードコンパウンドで揺さぶりをかけるマルケスにピタリと張りつき、冷静に対応し続けた状況については、「タイヤがオーバーヒートしないようにマネージするのは、とくに序盤10周が大変だった。昨日までは、マルクやドヴィと比較して(コース全4区間のうち)セクター3でだいぶ損をしていたので、映像で自分の身体の使い方をチェックした。今日の決勝では、その部分をレース中に走りながら、どんどんよくしていくことができた。最後までマルクとの争いになると思ったので、自分は体力とタイヤを3~5パーセント温存して、攻めどきを待った」。

 その言葉どおり、ロレンソは全28周のレースで残り10周となった19周目にマルケスの前に出た。しかし、マルケスもロレンソに対して、コース上の自分が得意なポイントで勝負を仕掛けていった。

 レース終盤は、マルケスがロレンソに対して0.028秒前、という状態で最終ラップを迎えた。1コーナーではロレンソが仕掛けて前に出た。その後、マルケスが得意の3コーナーで再度勝負を挑むものの、ロレンソがアウト側から抑え切り、最終区間でもマルケスに隙を与えず、0.130秒の僅差で先にチェッカーを受け、息詰まる激戦を制した。

 この勝利で25ポイントを加算したロレンソは、年間ランキング3番手に浮上した。今季初勝利を挙げたイタリアGP以前の状態と比べると、見違えるような復活ぶりだ。第6戦・イタリアGP直前の状態を見てみると、95ポイントでランキング首位のマルケスに対して、ロレンソはわずか16ポイント。この当時は、ランキング14番手に低迷している有様だった。

 ところが、イタリアGPとカタルーニャGPで連勝して以来、今回までの6戦でロレンソは114ポイントを獲得。一方のマルケスは106ポイント。とはいえ、ふたりの現在の点差は71で、マルケスの高い安定感も考慮すれば、今季残りの8戦でこの差を埋めるのは容易なことではないだろう。

 ロレンソ自身も、「現実的には、チャンピオンシップの2位争いが目標。バレンティーノ(・ロッシ)は離れてないし、アンドレアは1ポイント後方にいる。これからは、毎戦優勝を目指して表彰台争いをしたい」と話す。

 この言葉にあるとおり、現在ランキング2番手につけるロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)と3番手ロレンソの差は12ポイント。苦戦の続くヤマハが現在の厳しい状況を脱しないかぎり、ランキング2番手争いは、遠からずロレンソとドヴィツィオーゾの2名に絞り込まれていくのかもしれない。