今季からハノーファー(ブンデスリーガ)でプレーする浅野拓磨が、親善試合のアスレティック・ビルバオ(リーガエスパニョーラ)戦でゴールを挙げたほか、先制点にも絡む活躍で、幸先のいい滑り出しを見せている。ビルバオ戦でゴールを決め、今季の活躍…

 今季からハノーファー(ブンデスリーガ)でプレーする浅野拓磨が、親善試合のアスレティック・ビルバオ(リーガエスパニョーラ)戦でゴールを挙げたほか、先制点にも絡む活躍で、幸先のいい滑り出しを見せている。



ビルバオ戦でゴールを決め、今季の活躍が期待される浅野拓磨

 浅野は今季、2016年から2シーズン、プレーしたシュツットガルトを離れた。だが、ハノーファーへのレンタル移籍元はシュツットガルトではなくアーセナル。レンタル期間は1年間だ。

 アーセナルが保有権をキープしながら他のチームを渡り歩いた日本人選手といえば、宮市亮(現ザンクトパウリ)が思い浮かぶ。宮市の場合、アーセナルが保有権を持っていた4シーズンで、アーセナルでプレーしたのは最初の半年間と、2013-14シーズンのみ。労働ビザの問題は早々にクリアしていたにもかかわらず、負傷がちで、評価が上がらず、アーセナルには定着できなかった。

 浅野の場合は欧州で3季目に入ったが、いまだにアーセナルでプレーするチャンスは訪れていない。今後、浅野はどのような道をたどるのか。本人の活躍が求められるのは当然だが、注目に値するだろう。

 その浅野は昨季、シュツットガルトで終盤はベンチにすら入れず、第18節以降、出場はなかった。かといってツヴァイテ(Bチーム)に合流するというわけでもなく、レギオナリーガ(4部に相当する地域リーグ。シュツットガルトはU-21中心のチームが参加している)での出場も2試合にとどまった。

 年明けの第21節から指揮をとったタイフン・コルクト監督からは、2列目の選手とみなされ、得点は求められず、「守備に奔走しておけ」と、心が折れてもおかしくないようなテーマを与えられた。もちろん、FWだけでなく攻撃的MFとしてプレーする必要もあるが、浅野本来の、裏に出たボールに俊足をいかして追いついてチャンスにすることへの期待はまったくなくなった。

 だが、そんな状況はハノーファーに来たことで一変した。

 ビルバオ戦での浅野のポジションは4-4-2の2トップの左だった。24分のハノーファーの先制点のシーン。浅野は右後方からのロングボールをペナルティエリア内で受けると、ドリブルで相手DFをかわし、クロスを入れ、ゴール前でこぼれたところをニクラス・フュルクルクが押し込んだ。

 その5分後、左MFリントン・マイナが相手のボールをインターセプトし、前線にスルーパスを送る。浅野は難なくそのボールに追いつき、左足ダイレクトでゴール左隅に追加点を押し込んだ。

 どちらのシーンも、周囲が浅野の動きと特徴を理解し、さらにはそれを信頼し、あてにしたものだった。浅野が説明する。

「チームのなかでも、自分の裏への走り出しをひとつの武器として見てくれている。監督もそこを求めていますし、それをチーム全体で意思統一するように言ってくれているので、求められていることをやるだけかなと思います。

 ゴールのシーンも、僕だけじゃなくて、チーム全体でそこだけは意識できているのが形になったものだと思います。試合中に監督が、すごく『そこを狙え』って、ディフェンスの選手や、ボールを持っている選手に言っているのを、僕も聞いていました。

 僕のタイミングでほしいなというところが、今回の試合でいっぱいありましたし、ボールが出てこないシーンもありました。でも、ちょっとずつ、自分の武器を出せてきているかなと思っていますし、チームとしても意識してきてくれているかなと、今日の試合で感じましたね」

 自分のストロングポイントを、チームがそのまま受け入れて武器のひとつとしてくれている。こんなに気持ちのいいことはないはずだ。

 この日はベンチ外だったチームメイトの原口元気がミックスゾーンを通りかかり、「拓磨は今季ブレイクすると、なんとなく思う」と、ポツリと呟いた。原口の予言は当たるかもしれない。