WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季最後のメジャー、全米プロゴルフ選手権(8月9日~12日)が開幕した。 第100回という記念すべき大会の舞台となるのは、ミズーリ州セントルイスのベルリーブCC(7316ヤード、…
WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス
今季最後のメジャー、全米プロゴルフ選手権(8月9日~12日)が開幕した。
第100回という記念すべき大会の舞台となるのは、ミズーリ州セントルイスのベルリーブCC(7316ヤード、パー70)。1897年に創設された歴史あるクラブだ。
当初は9ホールの会員制クラブとしてスタートし、ミズーリ州のノルマンディー地方にあった。それが1955年、現在のセントルイス郊外に移転。ロバート・トレント・ジョーンズJr.の設計で、1960年にあらためて開場された。
同クラブは難コースとして瞬く間に評判となり、5年後の1965年には全米オープンが開催された。その際、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)が優勝し、4大メジャーをすべて制する”キャリア・グランドスラム”を達成している。
同大会の設定も7191ヤード(パー70)と、当時から距離の長いコースと知られていたが、最大7500ヤードまで設定可能ということで、さらに大きな話題を集めた。
1992年には全米プロが開催され、ニック・プライス(ジンバブエ)がメジャー初勝利を飾った。その後、2001年9月には世界選手権シリーズ(WGC)のアメリカンエキスプレス選手権が行なわれる予定だったが、開幕直前の9月11日に米ニューヨーク州などで起きた『同時多発テロ事件』が発生。同大会の開催は中止となった。
そして記憶に新しいのは、2013年に開催された全米プロシニアゴルフ選手権。日本の井戸木鴻樹が、シニアながらメジャー制覇を果たした舞台となった。
同コースは、2006年にリース・ジョーンズ氏らによって大きなコース改造が行なわれている。多くの木々が切られた他、11ホールで池が絡むようになり、11番ホール(355ヤード)が1オン可能なパー4になるなど、より戦略的なコースとなった。
さて、日程が大きく変わる来年からは5月開催と、全米プロが8月に開催されるのは今年で最後となるが、昨年の大会では松山英樹が熾烈な優勝争いを展開。最後はジャスティン・トーマス(アメリカ)との戦いに敗れて男泣きした。その姿は、いまだ鮮明な記憶として残っている。
メジャー制覇を目指す松山英樹に注目が集まる
結果は5位。メジャーの最高成績(同じく昨年の全米オープン2位)には届かなかったが、ある意味、メジャー制覇にもっとも近づいた大会だった。その激闘を今一度、振り返ってみたい。
舞台となったのは、PGAツアーのウェルズファーゴ選手権が毎年行なわれている、ノースカロライナ州シャーロットのクエイルホロー・クラブ(全長7600ヤード、パー71)だった。
前週のWGC ブリヂストン招待で優勝した松山は、心身ともに充実していた。初日は出入りの激しいプレーながらも6バーディー、5ボギーの「70」で回り、首位と3打差の15位と、まずまずのスタートを切った。
圧巻だったのは、「64」をマークした第2ラウンド。序盤から安定したプレーを見せて、驚異の「61」を記録した前週の最終日を彷彿とさせる、素晴らしい内容だった。
その後、3日目は一時首位に立つ場面もあったが、首位のケビン・キスナー(アメリカ)に1打差の2位で最終日を迎えることになった。
最終日、松山と激しい戦いを見せたのが、松山と同組で首位から2打差の4位でスタートしたトーマスだった。優勝の行方は、徐々にふたりの争いに絞られていった。
序盤は松山が優勢だった。1番で1.2mのバーディーパットを外して、やや不穏なスタートになったものの、6番、7番で連続バーディーを奪取。松山が単独首位に立ってバックナインを迎えた。
だが、そこから”幸運”を呼び込んだのは、トーマスだった。10番パー5では、ティーショットを大きく左に曲げながら、バーディーチャンスをつかんだ。そしてそのパットが、最後はカップの縁に止まりながら、数秒経って転がり落ちた。
このトーマスの”ツキ”が、逆に松山の勢いを止めることになる。11番で1.2mのパーパットを外してボギーとすると、そこからまさかの3連続ボギーを叩いて後退。14番、15番と連続バーディーを奪って、再度トーマスに1打差に迫る粘りを見せたが、16番でまたもボギーを叩いて差を広げられてしまった。
悔やまれるのは、その16番パー4。ラフから打った第2打が、フライヤーとなってグリーンをオーバーしてしまったのだ。その第3打を1.5mまで寄せたが、このパーパットが左に蹴られて万事休す。松山は結局、17番でバーディーを奪ったトーマスに3打差をつけられて敗れた。
「悔しいですね……」
ラウンド後にそう言ったあと、松山の涙は止まらなかった。松山自身がもっとも悔やんでいたのは、ボギーにした11番(パー4)の、フェアウェーから打ったセカンドショットだった。
「難しくない状況から、ミスをしてしまった。アプローチとパットでしのげなかった。流れが悪くなる原因を(自ら)つくってしまった」
結果は5位も、メジャー優勝にもっとも近づいた大会だったことは間違いない。松山が最後に語った言葉が印象に残っている。
「ここ(メジャー勝利まであと一歩)まで来た人はたくさんいると思いますし、そこから(メジャーを)勝てる人と勝てない人の差が出てくると思う。(自分は)勝てる人になりたい」
松山を振り切って、メジャー初制覇を遂げたトーマスは今、勢いに乗っている。昨年の松山と同様、前週のブリヂストン招待を制して、ディフェンディングチャンピオンとして今大会に臨んでいる。
一方、松山は今季未勝利と苦しい時間を過ごしている。トーマスだけがライバルではないが、メジャーでは少しの”幸運”によって大きく展開が変わる。今年はその”幸運”が、松山に転がり込んでくることを期待したい。