開幕戦以来の今季2勝目である。「去年のように6勝すると、誰もが毎戦、優勝争いを期待する。逆に今年はカタールだけなので、そうなると今度は皆が『調子が悪いね』と口々に言うようになる」右から、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、ホルヘ・ロレンソ、…

 開幕戦以来の今季2勝目である。

「去年のように6勝すると、誰もが毎戦、優勝争いを期待する。逆に今年はカタールだけなので、そうなると今度は皆が『調子が悪いね』と口々に言うようになる」



右から、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、ホルヘ・ロレンソ、マルク・マルケス

 第10戦・チェコGPの優勝後にそう話したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)は、要するに、『皆は表面上の結果に気を取られるけれども、自分たちの本質的な部分をあまり見ていないものなんだ』ということを言外に含意しようとしていたのかもしれない。

 昨年は最終戦までマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)とチャンピオンを争ったが、今年のドヴィツィオーゾは表彰台を逃すことが多く、ホームGPのイタリア・ムジェロサーキットで2位を一度獲得したのみ。短いサマーブレイクが明けて、後半戦の端緒を切った今回のレースウィークは初日からリズムのいいペースで、土曜の予選でもポールポジションを獲得した。

「決勝に向けて準備を整えてきて、十分かどうかはともかく、明日の用意はできている」と優勝争いに向けた自信を見せた。

 ドゥカティは今回のレースウィークで、新しいエアロフェアリングを投入している。ドヴィツィオーゾに次ぐ2位でチェッカーを受けたチームメイトのホルヘ・ロレンソは土曜の走行を終えて、「このフェアリングにネガティブな面はない」と話し、良好な感触を強調していた。

 本来このようなニューマテリアルに対しては比較的慎重な態度を見せることが多いドヴィツィオーゾも、「今日はタイヤなど他の要素も変更しているので、評価が難しい」と留保をしながらも、このニューフェアリングを試した際に「(従来型との違いについては)こういうものはいつも判断が難しいけれども、ブレーキングではこちらのほうがいいかもしれない」とポジティブな印象を伝え、「決勝レースもおそらくこっちのフェアリングで臨むと思う」と述べた。

 そして日曜午後の決勝には、ドヴィツィオーゾ、ロレンソともに予定どおり、このニューフェアリングで臨んだ。

 ポールポジションスタートのドヴィツィオーゾは、序盤からロレンソやマルケスたちとトップグループを構成し、レースを引っ張る形で周回が推移していった。最後はこの3台が抜け出し、ひとつふたつの波乱が生じそうな雰囲気を漂わせつつも、最後まできっちりと抑え切ったドヴィツィオーゾがトップでゴールラインを通過した。

 25点を加算したドヴィツィオーゾは、ランキング3位に浮上。首位を快走するマルケスと77ポイントあった差を少し詰めて68ポイントにした。

「今年はどのコースでも去年より速く走れている。今回のレースウィークは、去年よりもバイクがいいことを確認できた」と話す一方で、「問題は3戦(第4戦・スペインGP、第5戦・フランスGP、第7戦・カタルーニャGP)でノーポイントだったこと。その3戦はいずれも表彰台争いをしていただけに、失ったポイントは多い」と痛恨の前半戦を振り返る。

 これはあくまで計算上の話だが、今後の9戦でドヴィツィオーゾが全戦優勝を果たしたとしても、マルケスが毎戦2位でゴールし続けていれば、最終戦を待たずにマルケスの年間総合優勝が確定することになる。

「目標は毎戦しっかりとレースを終えること」と決勝後に話したマルケスは、この戦況とシーズンの推移を踏まえていることは間違いなく、その意味では、シーズン後半戦の趨勢(すうせい)は一戦を経るごとにマルケスがチャンピオンの地固めをしていく展開になるのかもしれない。

 ただし、各決勝レースの戦いはドヴィツィオーゾやロレンソが高い戦闘力を発揮している分だけ、さらに緊張の度合いを増していくことにもなるだろう。