「いい準備ができた1週間」と話したFL金正奎。(撮影/松本かおり) 2試合続けて7番を背負う責任を重く感じている。ブレイクダウンからの球出しのスピードはジャパンがスコットランドを倒すための生命線だ。オープンサイドFLの金正奎は6月25日に…

「いい準備ができた1週間」と話したFL金正奎。(撮影/松本かおり)


 2試合続けて7番を背負う責任を重く感じている。ブレイクダウンからの球出しのスピードはジャパンがスコットランドを倒すための生命線だ。オープンサイドFLの金正奎は6月25日におこなわれる第2テスト(東京・味の素スタジアム)で勝利に貢献するイメージを「常に相手より低く、はやく」と明確に描いている。

 6月18日の第1テストでは敗れたものの(13-26)、自身の強みを存分に出せた。アタックでは、相手防御のウラに出た後のパスがつながらないなど「もっと積極的にいけば良かった」と悔やむシーンもあったが、ディフェンスでは目立った。ジャパンが奪った唯一のトライも、この人がブレイクダウンでボールを抱え上げて得たPKからSH茂野海人が仕掛けて奪ったものだった。
「自分の強みである低いプレーを徹底した結果です。こちらが低くプレーすると、相手のパワーが上に抜けていきました」
 177cm、93kg。スコットランドFWのほとんどは自分より10cm以上大きく、10kgほど重かった。しかし先に動き、低く相手の懐に入り込めば、体格差は克服できた。「大きな相手に対しても、いつも通り、自分のできることを出し切る。そこに気をつけてプレーしたら、より一層強みが活きた」と分析する本人は、「このジャパンは自分の特徴を尊重してくれるのでプレーしやすい」とも話した。

 スコットランド戦での2試合連続先発という事実も自信を呼ぶ材料にはなっているが、つかんだ手応えの大きさは、自分の中の感覚にある。
「例えばブレイクダウンで相手のボールをジャッカルする際、獲れると判断したときに獲れるようになった。自分の考えと結果のギャップが小さくなってきたように感じるんです」
 トップリーグ1年目(2014年度)は所属する所属するNTTコムでレギュラーに定着できなかった。タックルの精度の物足りなさ、ワークレートの低さを首脳陣に指摘された。
 そんな課題を胸に向かったニュージーランド(2014年度シーズン後)。シーズンオフの海外留学時に学んだのは、「小さいからといって、ただガムシャラにプレーするのではなく、サイズに恵まれていないからこそ判断して動く」ことの大切さだった。そう意識するようになったことが、2015-2016年シーズンの飛躍を呼ぶ。トップリーグのベストXVに選出。この春からジャパンにも入り、戦いのステージをアジアから世界へと引き上げた。

 先週、初めてのティア1国との対戦で十分に戦えた理由をこう話した。
「ヘンドリック(FLツイ)とナキ(NO8アマナキ・レレィ・マフィ)が『フィジカルなことは俺たちに任せ、正奎はボールに絡んでくれ』と。そう言ってくれたことで、やるべき事が明確になったのも大きかった」
 ユニットで動く。コミュニケーションを取りながらプレーする。インターナショナルレベルこそ、そんな基本中の基本が大切とあらためて感じた。
 第2テストも同じ布陣で戦いに挑む。この1週間、チームで、そしてバックローで話し合ってきたことすべてをピッチで示したい。第1テストでは足りなかった規律を厳格に。そこは厳守しつつ、もっと激しくプレーすることが勝利へのキーワードとなりそうだ。

 アマナキ・レレィ・マフィはNTTコムでもチームメート。ジャパンの中では、誰よりもこの危険なランナーのことを深く知る。頼りになる部分も人一倍わかっているし、魅力の引き出し方も。だから絶対に勝ちたいこの試合では、自身がすべてを出し切るのと同時に、最高の仲間の最大の力を引き出すことにも注力しようと思っている。
「常に声をかけ続けようと思っています。ひとりにすると(マフィは)独りよがりのプレーになるので」
 家族。友人。多くのファンも味の素スタジアムを訪れるだろう。テレビ中継を見つめる人は、どれだけの数にのぼるのか。「その期待に恥じないプレーをしたい」と言った試合前日の表情は、やるべきことはやって戦いに臨む者のそれだった。