WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季メジャー第3戦の全英オープン(カーヌスティ/スコットランド)は、フランチェスコ・モリナリ(35歳)が優勝。イタリア人として初のメジャーチャンピオンに輝いた。 欧州の先進国にあ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季メジャー第3戦の全英オープン(カーヌスティ/スコットランド)は、フランチェスコ・モリナリ(35歳)が優勝。イタリア人として初のメジャーチャンピオンに輝いた。

 欧州の先進国にありながら、”ゴルフ大国”とはいえないイタリア。国民のゴルフに対する関心も薄いようだが、さすがにモリナリの全英オープン制覇は大ニュースとなった。



全英オープンを制したフランチェスコ・モリナリ

 イタリアにおける国民的なスポーツといえば、サッカーだ。ところが、先のロシアW杯でイタリア代表の姿はなかった。まさかの予選敗退を喫したからだ。おかげで、国内のスポーツ熱はすっかりトーンダウンしていた。

 かろうじて、サッカーに次いで人気のあるモータースポーツでは、イタリアのフェラーリがF1で奮闘中。全英オープンと同時期には、ドイツGPが開催されていて、当初はそちらに対する注目度のほうが高かったという。

 ゆえに、モリナリが快挙を遂げても、ドイツGPでフェラーリが優勝したら、「(イタリアの)新聞のヘッドラインは、ぜんぶフェラーリに持っていかれるだろう」とモリナリは憂いていた。しかし、ドイツGPではメルセデスが上位を独占。モリナリの全英オープン制覇が、イタリア各メディアのトップニュースを大々的に飾ったそうだ。

 ちなみに、イタリアにおけるゴルフの歴史は決して浅くはない。国内最初のゴルフ場『フィレンツェ・ゴルフクラブ』が創設されたのは、1889年。現在もイタリア全土で250を超えるコースが存在し、地中海に面した風光明媚なコースもある。

 ところで、第1回大会が1860年に開催され、150年以上の歴史を持つ全英オープンだが、歴代チャンピオンを輩出した国々は、今回のイタリアで12カ国目となる。

 最多は、地元イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)で39人。次いでアメリカが30人と、この2カ国が圧倒的な強さを誇る。

 その他、複数の優勝者を出しているのは、オーストラリアと南アフリカだけで、いずれも4人。あとは、アルゼンチン、フランス、ニュージーランド、アイルランド、スペイン、スウェーデン、ジンバブエ、そしてイタリアから1人ずつの勝者が出ている。

 これらのなかでも、1人しか優勝者を出していない国で記憶に残る選手といえば、スペインのセベ・バレステロスだろうか。スペイン唯一の勝者ながら、3度も全英オープンを制しているのだ。

 初勝利を挙げたのは、1979年のロイヤルリザム&セントアンズ(イングランド)での戦い。当時22歳のバレステロスは、攻撃的なプレーで世界のファンを魅了。スペインの”新星”として、初のメジャー制覇を果たした。

 その際、忘れられないのが最終日の16番、駐車場から放った1打だ。

 ほとんどの選手がアイアンでティーショットを打つ同ホールにおいて、バレステロスはドライバーを握って果敢に攻めたが、そのティーショットを大きく曲げて右の駐車場に打ち込んでしまった。

 しかし、バレステロスは落ち着いていた。そこからグリーンをとらえるショットを放って、なんとバーディーを奪取。2位に3打差をつける勝利の”伝説の1打”となった。

 思えば、昨年のロイヤルバークデール(イングランド)での戦いにおいても、優勝したジョーダン・スピース(アメリカ)が最終日の13番ホールでティーショットを右に大きく曲げた。そして、練習場にドロップした2打目をグリーン近くまで運んでパーとしたが、あの1打はバレステロスの”伝説の1打”を彷彿とさせるものだった。

 さて、バレステロスがその後に制した全英オープンは、1984年のセントアンドリュース(スコットランド)、1988年のロイヤルリザム&セントアンズで開催された大会。その間、マスターズでも2度の優勝を遂げたバレステロスは、スペインの英雄となった。

 以降、そんなバレステロスに憧れて育った選手がスペインから続々登場。そのうち、ホセ・マリア・オラサバル、セルヒオ・ガルシアらがメジャーチャンピオンとなって、ゴルフの小国だったスペインを大国に押し上げた。それらのことは、まさしくバレステロスの功績といえるだろう。

 今回と同じカーヌスティで行なわれた大会を振り返ってみれば、2007年大会ではアイルランドのパドレイグ・ハリントンが優勝。これが、アイルランド人として初の全英オープン制覇だった。

 アイルランドには、300以上のコースがあり、世界を代表するリンクスコースを有する国でもある。欧州におけるゴルフ大国のひとつでもあるだけに、その結果はなんとも意外なものだった。

 同大会において、当初注目を集めていたのは、最終日を単独首位で迎えたスペインのガルシアだった。しかし、ガルシアは前半からスコアを落としていった。

 そんなガルシアを尻目に、スコアを着実に伸ばしていったのがハリントン。14番パー5でイーグルを決めるなどして、ガルシアを猛追した。最終18番こそ、ティーショットをバリーバーン(小川)に入れてダブルボギーを叩くも、最終組のガルシアも最後に1.5mのパーパットを外してボギー。ハリントンとガルシアが通算7アンダーで並んで、勝負の行方はプレーオフへと持ち越された。

 4ホールのプレーオフでは、1番でバーディーを奪ったハリントンがそのままガルシアを振り切って勝利。アイルランドの悲願となる全英オープンの『クラレットジャグ(優勝トロフィー)』をついに手にした。

 同大会では、タイガー・ウッズ(アメリカ)の3連覇も阻止したハリントン。翌2008年のロイヤルバークデールでの大会も制して、全英オープン連覇を達成している。

 残念ながら、我らが日本勢はいまだ全英オープンはもちろん、メジャー制覇を成し遂げられていない。今年も全英オープンには10選手が出場したものの、優勝争いに加わることさえできなかった。

 全英オープンは、日本人にとって「最も優勝が近いメジャー」と言われている。近い将来、全英オープンの勝者が日本から出てくることを期待したい。