ドイツ代表として、1982年スペインW杯から1998年フランスW杯まで、実に5回のW杯に出場。1990年イタリアW杯では優勝を果たしているローター・マテウス。まさにレジェンド中のレジェンドと言っていいだろう。 だが一方では、歴代のドイ…
ドイツ代表として、1982年スペインW杯から1998年フランスW杯まで、実に5回のW杯に出場。1990年イタリアW杯では優勝を果たしているローター・マテウス。まさにレジェンド中のレジェンドと言っていいだろう。
だが一方では、歴代のドイツ代表のなかでも、かなり奔放なイメージを持たれている人物でもある。現役引退後は世界各地で監督をしているが、たった数カ月で性格の不一致により(?)、ブラジルのチームを投げ出したこともある。プライベートでも結婚5回と、かなり破天荒だ。
今回のロシアW杯では、カタールに本拠地を置くスポーツチャンネルbeINの解説者として多くの試合を観戦していた。そんなマテウスを直撃した。
モスクワ・赤の広場にできたフットボールパークで少年サッカーをコーチするローター・マテウス photo by AP/AFLO
マテウスは開口一番、こう叫んだ。
「俺は日本を恨んでいるんだ!」
どういうことだろう。
「俺は日本の試合を3試合、解説した。大会前は、はっきり言って、日本なんて1試合も勝てないんじゃないかと思っていた。ところが初戦のコロンビア戦を見て、俺の考えはコロっと変わってしまった。あの試合の日本は落ち着いていて、相手が誰であろうと何の心配もしていない感じで、ただ自分たちのサッカーをすることに集中していた。プレーのシステムも気に入った。だから俺は試合後にテレビで、日本は大会最大のダークホースになるぞと宣言したんだ」
セネガルとも互角に戦う日本を見て、マテウスはその確信を深めたという。
「だからベルギー戦では、俺自身もドキドキしながら試合を見ていた。ここで日本が勝ったら、俺は預言者となれるかもしれない。読みの深い名解説者として、大人気になれるかも、とね」
だが、日本は2-0とリードしていながら負けてしまった。
「本当にがっかりだったよ。あの数分間の子供みたいなプレーがなかったら、日本はもっと先まで行けたかもしれない。でも、良くも悪くも日本のサッカーは子供のサッカーみたいに純粋だった」
日本以外のチームについてもマテウスは話してくれた。まずは祖国ドイツをバッサリ。
「あんなプレーを見せるくらいなら、ドイツはドイツから出るべきではなかったね。ただ世界に恥をさらしただけだった。やる気も見られなかった。最悪だ」
また、何かと取りざたされるネイマールについてもひと言。
「ネイマールがもしあんなプレーを続けるのなら、活躍の場所をピッチから劇場に移したほうがいいね。ボールを持っているときの彼は一流で、足も頭の回転も速いのに、何かが起こると別のスイッチが入ってしまうようだ。彼の使い方は今後のブラジルの大きな課題だろう」
しかし、レジェンドに言わせると問題があるのはネイマールだけではないようだ。
「今のサッカーは、80年代,90年代のサッカーに比べると貧相だね。なにより選手たちに情熱がまったく感じられない。ハートがないんだよ。みんなサッカーロボットのようだ」
また、今回から導入されたVARシステムにも反対だという。
「決勝でフランスに与えられたPKを含めて、あまりにも間違いが多すぎる。こんなの本物のサッカーじゃないね。それに審判の質も落ちてきている。VARなんかに頼るのも、結局は自分たちに自信がないからだろう。彼らは自分たちで努力せずに、機械に頼ったというわけだ」
マテウスは現在、監督業は休業中だが、今後はサッカーが成長している場所で監督をしたいと思っている。
「今、サッカーが伸びている場所といえばアフリカとアジアだ。しかしアフリカにはすでに大勢のヨーロッパの監督がいるから、俺はアジアに興味がある。ただ、中国は金ばかりが先走って、サッカー自体はまだまだという気がするし、フース・ヒディンクから話を聞いた限り、韓国もあまり外国人監督の居場所がないようだ。そうすると残るは日本ということになる」
マテウスは、かつてのチームメイト、ピエール・リトバルスキーからも日本の話を聞いているという。
「日本が今、ヨーロッパスタイルのサッカーを目指しているのか、南米スタイルのサッカーを目指しているのかはよくわからないが、俺だったらそのどちらも指導できるよ」
最後にはさりげなく自己アピールを忘れないマテウスだった。