およそ2ヵ月にわたるワールドカップ中断期間を終え、J1リーグが7月18日に再開する。 ロシアの地で躍進を遂げた日本代表は海外組が主体のチームだったため、”凱旋ムード”は高まらないかもしれない。だが、Jリーガーと…

 およそ2ヵ月にわたるワールドカップ中断期間を終え、J1リーグが7月18日に再開する。

 ロシアの地で躍進を遂げた日本代表は海外組が主体のチームだったため、”凱旋ムード”は高まらないかもしれない。だが、Jリーガーとして唯一、主軸を担った昌子源(鹿島アントラーズ)をはじめ、山口蛍(セレッソ大阪)や槙野智章(浦和レッズ)など、時間は限られたもののワールドカップの舞台に立った選手たちのパフォーマンスは、再開後のJ1リーグの見どころのひとつとなるのは間違いない。



新天地にサガン鳥栖を選んだフェルナンド・トーレス

 ワールドカップの熱狂にかき消され、2ヵ月前の記憶を呼び戻すのは簡単ではないかもしれないので、改めて今季のJ1リーグの展開をおさらいしておこう。

 第15節終了時点で首位に立つのは、サンフレッチェ広島だ。今季より指揮を執る城福浩監督のもとで、開幕から9戦無敗とロケットスタートに成功。15試合でわずか8失点の堅守を武器に、ここまでわずか2敗と安定した強さを発揮し、2位に勝ち点9差をつけて早くも独走態勢を築いている。

 したがって再開後のリーグ戦のポイントは、「ストップ・ザ・広島」になる。その一番手は、2位のFC東京だ。

 出足にはつまずいたものの、長谷川健太監督の戦術が徐々に浸透していくと、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑の強力2トップが機能し、チームに躍動感を生み出している。昨季王者の川崎フロンターレはACLとの並行戦の影響からか、なかなか調子が上がらなかったものの、中断前の2試合で連勝を果たし、3位に踏み止まる。昨季2冠のセレッソ大阪は開幕4試合勝ち星なしと苦しんだが、徐々に調子を取り戻して4位に順位を上げている。ミハイロ・ペトロヴィッチ新監督のもとで攻撃スタイルへと転換を図った北海道コンサドーレ札幌の躍進(5位)も、前半戦の大きなトピックのひとつとなった。

 一方で鹿島アントラーズ(11位)、浦和レッズ(14位)、ガンバ大阪(16位)、横浜F・マリノス(13位)といった強豪クラブは苦戦を強いられている。なかでも、G大阪は開幕から6戦未勝利と大きく低迷。その後、徐々に盛り返してはいるものの、16位と厳しい状況は変わらない。さらに苦境に陥るのは名古屋グランパスで、第3節以降は勝利がなく、勝ち点わずか9で断トツの最下位に沈む。

 このように、すでにはっきりとした勢力図が描かれているなか、この中断期間に各チームは積極的に補強に動いている。なかでもビッグニュースをもたらしてくれたのは、ヴィッセル神戸だ。ワールドカップ開幕を控えた5月24日、バルセロナよりアンドレス・イニエスタを獲得。世界屈指のメガクラブの主軸を担う現役スペイン代表(ワールドカップ後に代表引退を表明)の獲得は、Jリーグの歴史上でもっとも衝撃的なビッグディールとなった。

 イニエスタについては、すでに詳細を語る必要はないだろう。今年で34歳となったが、ワールドカップでも証明されたように、その能力に陰りは見られない。さまざまな攻撃性能を高いレベルに備えるこの天才アタッカーが、現在6位と健闘する神戸をさらなる高みに導いていくことは間違いないだろう。

 もっとも、気になるのは「先輩Jリーガー」のルーカス・ポドルスキの状態だ。7月12日に左足剥離骨折で全治6週間と発表されている。ワールドクラスの共演はしばらく持ち越しとなりそうだが、いずれにせよイニエスタのプレーは神戸だけでなく、他チームのファンにとっても再開後のJリーグでもっとも魅力的なコンテンツになるはずだ。

 一方で、神戸は2年前の得点王であるレアンドロ(→東京ヴェルディ)と韓国代表のチョン・ウヨン(→アル・サッド)を放出。さらにハーフナー・マイク(→ベガルタ仙台)、小川慶治朗(→湘南ベルマーレ)とふたりのFWもレンタル移籍させている。外国人枠をひとつ空け、FWの数も減らしていることから、さらなるビッグネームの補強も匂わせている。Jリーグの夏の補強期間(第2登録期間)は7月20日から8月17日と設定されており、それまでにサプライズも起こりうるかもしれない。

 また、神戸に次いで、サガン鳥栖も”衝撃”を提供してくれた。7月10日に元スペイン代表FWのフェルナンド・トーレス(前アトレティコ・マドリード)の獲得を発表。一時は暗礁に乗り上げていたものの、粘り強い交渉の末に獲得にこぎつけている。

 全盛期は過ぎたかもしれないが、そのスピードと決定力、そしてなによりスター性を兼ね備えたフェルナンド・トーレスは、一見地味なこの地方クラブを大いに盛り上げるだろう。鳥栖は現在17位と降格圏に沈むが、「エル・ニーニョ(神の子)」の愛称に違わぬパフォーマンスを示し、チームを高みに押し上げる活躍が期待される。

 その鳥栖は今季、韓国の蔚山現代に期限付きでレンタル移籍していた豊田陽平の復帰も発表している。元コロンビア代表のビクトル・イバルボも含めたFW陣の質は、一気にJ1トップクラスの破壊力を手にした。得点力不足に悩まされていた鳥栖が後半戦、急浮上を果たしたとしても不思議はないだろう。

 この両チームのインパクトには敵わないものの、最下位に沈む名古屋も精力的な動きを見せた。川崎Fからエドゥアルド・ネット、FC東京から丸山祐市、柏レイソルから中谷進之介と、各チームのレギュラークラスを次々に補強。いずれも守備的な選手であり、リーグワースト失点を喫する守備の改善を求めるクラブの狙いがはっきりと打ち出された補強を実現している。

 ジュビロ磐田は川崎Fから大久保嘉人を獲得した。FC東京から1年で古巣に戻った大久保だったが、昨季優勝を果たしたチームで出番は少なく、わずか半年で新天地への移籍を決断した。中村俊輔とのホットラインを開通させ、得点力不足に苦しむチームの救世主となれるか。

 そのほか、広島はオーストラリアリーグで2度の得点王を獲得した実績を持つコソボ人のべサルト・ベリーシャ(前メルボルン・ビクトリー)を獲得。FC東京はヴァンフォーレ甲府からリンス、浦和は元鹿島のファブリシオを迎え入れ、それぞれ前線のテコ入れを図っている。

 一方で下位に沈む横浜FMは、守備の要を担っていたミロシュ・デゲネクがレッドスター・ベオグラードに新天地を求めた。また、G大阪はライバルのC大阪から柿谷曜一朗の獲得を狙ったものの、交渉は不発に終わり、現時点で戦力アップを実現できていない。17位の鳥栖と18位の名古屋が大型補強に成功するなか、16位のG大阪が新戦力を確保できないようだと、シーズン終了後によもやの結末も待ち受けるかもしれない。