専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第163回 現在、大いに盛り上がっているサッカー界から、お話をさせていただきます。 ロシアW杯では、日本代表が予想外の白星スタートを切って、日本列島が沸きましたねぇ。そんな日本…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第163回

 現在、大いに盛り上がっているサッカー界から、お話をさせていただきます。

 ロシアW杯では、日本代表が予想外の白星スタートを切って、日本列島が沸きましたねぇ。そんな日本代表の活躍も含めて、日本のサッカーマーケットは紆余曲折を経て、今やトップリーグ(J1)に限らず、J2もそれなりの盛り上がりを見せています。

 それは、地元の熱心なサポーターのおかげでもあるし、チームを引っ張る”リーダー”の、卓越した指導力のなせる業かもしれません。

 今回、サッカービジネスの成功例を参考にして、日本男子プロゴルフ界のトーナメントを盛り上げる策が何かないか、考えてみました。

 モデルとするのは、『ジャパネットたかた』でお馴染みの高田明初代社長が、地元長崎のV・ファーレン長崎の経営を引き受けて、V字回復させたお話です。倒産寸前だったクラブを黒字経営に転換し、J2でも低迷を続けていたチームをJ1昇格にまで持っていった手腕は、見事としか言いようがありません。

 具体的に行なった例を挙げれば、最寄りの駅からスタジアムまでの道のりが遠いので、その間を楽しく歩けるようにプロムナード化したとか。また、試合会場では高田社長が自ら宣伝マンとなって、敵味方関係なく声をかけて、長崎に来るように働きかけていたとか。

 そうやって、高田社長が手がけたことや、想像もつかない取り組みはたくさんあって、すべて”伝説”となっています。

 そのエピソードを挙げればキリがないのでこれ以上記しませんが、高田社長がやってきたことを参考にして、話を男子ツアーに置き換えて、具体的な人寄せプランを提示してみたいと思います。

(1)トーナメントの”顔”を作る
 通常のトーナメントの会長は、スポンサー筋だったりして、ぜんぜん顔が見えません。”片山晋呉騒動”のときの大会会長は青木功プロで、青木さんがいたからこそ、事件を隠すことなく、公表したとも言われています。

 そこで、往年の名選手でもいいし、ゴルフ通の俳優でもいいのですが、どのトーナメントでもそうした方々を名誉会長にでも祭り上げて、そのうえでツアー集客プランをスタッフと練り挙げるというのはどうでしょう。

 もちろん、不祥事やトラブルも隠蔽することなく、オープンにやる。そうやって、情報公開を進めるべきですね。

(2)全米オープンを反面教師に
 今年の全米オープンをご覧になりましたか? 正直言って、ぜんぜんつまらない試合で、試合というより”苦行”とか”罰ゲーム”みたいな感じでした。

 余りにも速いグリーンのおかげで、「アメリカのゴルフの良心」とも言われたフィル・ミケルソンが、転がっているボールを打ってしまうほど。2ペナもよしとしたミケルソン、完全に壊れていましたね。

 そんなふうに、ミケルソンの人間性までも崩壊させる試合って、何なの? 菜々緒さん演じるドSキャラしかいませんよね。

 というわけで、4日間のトーナメントだったら、トータル15~20アンダーぐらいのセッティングでいいと思います。所詮、ゴルフはスポーツの”ショー”なのだから、バーディー連発でいいじゃないですか。

 ホームランのない野球、0-0のサッカーとか、いくら白熱した試合でも、つまらなかったりしますし……。

 ということで、次。

(3)盛り上がるセッティング
 ゴルフの試合を盛り上げるには、バーディーをいかに量産させて、ミスしたらどれだけ叩かせるか、です。

 ロングホールでは、2オンを狙わせる設計にして、必ずグリーン手前は池かクリークにする。さすれば、ドラマチックな演出になります。

 日本のコースは、テレビ中継で見ることをさほど考えていない、昔ながらのコースが多いですが、いずれのトーナメントコースでも、2~3ホール改造するのは、今からでもできると思います。そうやって、グリーン手前に池やクリークを作っちゃいましょう。

 池だと時間も、お金もかかるでしょうから、まずは溝をこしらえて、そこに丸い石を散りばめて、枯山水(かれさんすい)のクリークを作るのです。さすがに小石の上からは打てませんから、実質ワンペナのハザードが出来上がるってものです。

 プロのトーナメントが終わったら、その石ころを取り除いて、ただのグラスバンカーに戻せれば、なお結構。それなら、通常営業時にラウンドするアマチュアも難儀はないでしょう。

(4)トーナメント会場へのアクセスを重視
 冒頭でも触れたように、高田社長はアクセスの重要性を説いていました。

 日本のトーナメントは、地方開催が多いですよね。しかも、駅からのアクセスが悪いコースがほとんど。多くはその間をシャトルバスで補っていますが、地方だと移動時間も長いし、そもそも動員数にも限りがあります。遠くから来た場合、宿の確保も大変でしょう。

 で、答えから言うと、東京、名古屋、大阪の3大都市圏で多くのトーナメントを開催する。そうすれば、アクセスもいいし、ギャラリーの大量動員も可能になります。

 ツアーを主催する側は、大都市圏のコースは狭いし、名門が多いので借りにくいと言うけど、名門じゃないコースも大都市にはたくさんあります。

 それに、簡単なコースは、パー72をパー70にすればいいのです。あとは、ピンの位置を難しくしたり、ラフを深くしたりするなどして、対応すれば十分。320ヤードほどのミドルホールをワンオンで狙わせることも、海外では珍しくありません。かえって、そのほうが盛り上がります。

 ちょっとした工夫で、エキサイティングな試合に変えられるのです。そういう意味では、トータルスコアはあまり気にしないほうがいいです。

(5)プロアマをやめて、ファン感謝デーにする
“片山晋呉騒動”以来、プロアマの是非を問う意見も多数聞かれます。そもそもプロアマをやる意義はどこにあるのか?

 はたして、数十名のゲストがプロと一緒にラウンドすることが、大会を盛り上げることになるか? 甚(はなは)だ疑問です。

 プロアマのゲストは、スポンサーが呼んだお客さんであって、簡単に言えば”スポンサーが外部のゲストを招待している”のです。個人的な見解としては、スポンサーの”自己満足”にしか見えません。

 しかも、男子プロゴルフ界には大スターがいない時代です。ゲスト目線で言えば、石川遼選手以外の選手と「一緒に回りたい」と思う人がどれくらいいるでしょう。ならば、無名でも「若くて、可愛い女子プロと回りたい」と思うのが男心ってもの。現にそれは、今の時代によく表れていますよね。

 さすがに”プロアマ廃止”とはいかないのなら、せめて9ホールのラウンドにして、午後からは大会中にギャラリー広場として使われる場所で、誰もが参加できるチャリティーイベントやファンの集いをすればいいんじゃないですか。

 東北福祉大を出ている池田勇太選手がエプロンを付けて、仙台名産の牛タンを焼いて、子どもたちに振舞うとか、喜ばれると思いますよ。

 たくさんのギャラリーによるパターコンテストがあったり、プロアマのゲストに芸能人が入れば、その方の歌謡ショーやものまねイベントを開催したりしてもいい。ほんとベタベタな、ほんわかイベントをやればいいんですよ。

 試合前はイライラするから、試合直前の「プロアマはちょっと……」という選手も、これで少しは楽になるんじゃないですか。



国内男子ツアーを盛り上げるにはどうしたらいいんでしょうかねぇ...

 何はともあれ、プロのトーナメントの賞金は、スポンサーがほとんど出しています。「冠スポンサー」と言って、1社大口のスポンサーがいて、他に数社の協賛スポンサーによって、トーナメントは開催されています。

 だから、主催する側は、メインスポンサーには頭が上がりません。現在、協賛スポンサーをたくさん集めて、メインスポンサーをなくした大会運営も考えているようですが、はたしてうまくいくのやら……。

 今後の動きも見守っていきたいと思いますが、今の体制のなかでも、トーナメントを盛り上げていく方法はいろいろあると思うんですけどね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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