中盤戦のトロロッソ・ホンダは、中団グループのなかに埋もれつつある。もっと直接的な表現をすれば、ウイリアムズやマクラーレンとの最下位争いに陥りつつある。 「今のトロロッソは中団グループの後方」だと語るガスリー F1のように日進月歩で常に…

 中盤戦のトロロッソ・ホンダは、中団グループのなかに埋もれつつある。もっと直接的な表現をすれば、ウイリアムズやマクラーレンとの最下位争いに陥りつつある。


「今のトロロッソは中団グループの後方」だと語るガスリー

 F1のように日進月歩で常に進化していく世界では、立ち止まっていることは、すなわち後退を意味する。自分たちが立ち止まっている間に、周りは前に進んでいってしまっているからだ。今のトロロッソ・ホンダが置かれているのは、まさにそんな状況なのだ。

 ピエール・ガスリーは、それをはっきりと認めた。というよりも、実際にコース上でライバルと戦うドライバーとして、それを実感しているのだ。

「僕たちはここ数戦で、周囲のライバルたちほどのペースで進歩を遂げることができていないと思う。たとえば、フォースインディアは(第4戦)バクーからかなりコンペティティブさを増してきているし、ザウバーも速くて、(第9戦)オーストリアでは2台とも入賞したように、確実に中団グループで戦える力をつけてきている。ハースとルノーはもっと速い。現実的な見方をすれば、今の僕らは中団グループの後方になってしまっている」

 第6戦・モナコGPで入賞を果たして以降、ポイントの獲れないレースが続いている。速さはありながらも結果につながらなかったレースもあったが、それよりもセットアップの不備やトラブルで、そもそも予選の段階から、中団グループ上位のポイント争いに加わることができていないレースが増えてきた。

 もちろん、トロロッソとしても、ただ手をこまねいているわけではない。

 失地回復のカギとなるのは、第7戦・カナダGPに投入したスペック2のパワーユニットと、続くフランスGPに投入する予定だった新型空力パッケージだった。パワーユニットはまずまずの手応えをチームとドライバーにもたらしたが、空力パッケージの投入はオーストリアGPにずれ込み、しかもそれを使いこなすことができなかった。

 これをいかにきちんと分析し、使いこなせるようにするのか。もしくは、使えないものだと判断するのか。それが今週末のイギリスGPでトロロッソに課せられた使命だ。

 ブレンドン・ハートレイは語る。

「オーストリアGPでは新空力パッケージをきちんと使えず、パフォーマンスを引き出し切れなかった。今週末のパフォーマンスは、その新パッケージをいかにきちんと理解し、最適化できるかどうかにかかっている。

 オーストリアGPの後、チームのみんなが新パッケージに対する理解を深めるために懸命に努力してきたけど、それはとても複雑なもので、そう単純にはいかない。きちんと使いこなせれば、僕らはコンペティティブなレースができるだろう」

 オーストリアGPでは、新空力パッケージをうまく使えず、マシンはひどく不安定な挙動を示していた。それを適正なバランスに仕上げ、ドライバーたちが自信を持って攻めることができるマシンにすること――。そうすればラップタイムは縮まり、タイトな中団グループのなかでポジションが大きく上がる。

 オーストリアの決勝では、旧スペックのフロントウイングに戻し、空力バランスを大幅にリア寄りにしたことで、上々のペースで走ることができたハートレイはこう語る。

「セットアップがきちんと決まって、気持ちよく走れるマシンに仕上がるかどうかで、予選では0.3秒くらい簡単に違ってくるし、中団グループは本当にタイトだから、それだけでポジションが4つも5つも違ってくる。それによって、ポイント圏にも手が届くことになるんだ」

 トロロッソのエンジニアたちはオーストリアGP後の4日間でデータを分析し、ある一定の方向性を見出しているが、実際に走行して確かめなければならい点もまだ多々ある。

「レッドブルリンクでは僕らが望んだとおりの答えが見つけられなかったから、今週末のフリー走行では、かなり多岐にわたったテストをする予定だよ。今週は僕のマシンでかなりの空力テストを行なう予定で、ドライバーとしては楽しい走行ではないけど、新パッケージに対するもっとクリアな答えを見つけ出すために必要なことだからね。ここでもっと理解を深められればと思っているよ」(ガスリー)

 その一方で、シルバーストンはセットアップが難しいサーキットでもある。

 全開率が65%を超えるパワーサーキットである一方で、ダウンフォースをつけてコーナー優先のセットアップを施したほうが速く走ることができる。しかし、決勝でのバトルを考えれば、ライバルと同等レベルの最高速が稼げるように、ドラッグは削っておかなければならない。そのバランスを見出す作業が重要になってくる。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「ここはけっこう低速コーナーがあるので、ラップタイムに振るならば、ダウンフォースをつけてコーナーで稼ぐほうが速いし、(ドラッグで最高速が伸びず)ストレートは遅くなりますけど、パワーセンシティビティは低くなるので、コーナーを速く走ったほうが得だという結論になるんですね。

 でも、そうすると、高速コーナーの後(のストレート)では抜けませんから、それは他チームが最高速をどのあたりにつけてくるかも含めて、バランスを見ながら決めていかないといけません。ダウンフォースをつければ速いけど、燃費は悪くなりますし、そのせいでバックオフしなければならない、最高速も遅い、というのでは最悪ですから。そこまでいかないように最適なバランスを探っていく必要がありますね」

 新空力パッケージに対する学習を進めながら、セットアップの最適なバランスも探っていかなければならない。

「僕たちは空力アップデートがきちんと機能するようにしなければならないし、それによって中団グループの真ん中へ戻れるようにしなければならない。それが今週末のカギだ」

 ガスリーがそう語るように、イギリスGPはトロロッソ・ホンダにとって重要な岐路になりそうだ。