サービスエースを24本も決めて勝利を収めた錦織圭 ウインブルドン2回戦で、第24シードの錦織圭(ATPランキング28位、7月2日付/以下同)は、ラッキールーザー(繰り上がり本戦出場)のバーナード・トミック(184位、オーストラリア)を、…



サービスエースを24本も決めて勝利を収めた錦織圭

 ウインブルドン2回戦で、第24シードの錦織圭(ATPランキング28位、7月2日付/以下同)は、ラッキールーザー(繰り上がり本戦出場)のバーナード・トミック(184位、オーストラリア)を、2-6、6-3、7-6(7)、7-5で破って、3年連続で3回戦進出を決めた。

 トミックは、2011年ウインブルドンでベスト8に進出し、2016年1月に自己最高の17位を記録した実力者。グラス(天然芝)コートでのプレーを得意とし、現在のランキングとはかけ離れたいいプレーをして、最後まで錦織を苦しめた。

 一発の強打で相手をねじ伏せるショットではないが、フラット系のフォアハンドストロークやバックハンドのスライスを、トミックはコート深くに打ち分けてきた。グラスではバウンドが滑るように弾むので、錦織のミスを誘いやすく、第1セットではトミックが錦織のサービスを2回ブレークに成功して、わずか27分でセットを先取した。

「やりにくかったですね。どっちに転んでもおかしくないような展開だった」と試合後に語った錦織は、第2セット終盤あたりから、トミックのショットにうまく対応できるようになり、ストロークで自分から攻めていけるようになった。セットオールにすると、第3セットでは、トミックに3回あったセットポイントを辛くもしのいでタイブレークを制した。

 この日、錦織がピンチをしのげた要因となったのが好調なサーブだった。第3セット第10ゲームで、トミックに2回のセットポイントを握られた場面では、ワイドに2本、センターに1本のサービスエースを決めてみせた。

 トミックは随所にいいプレーを見せるものの、集中力にムラがあり、錦織がトミックのメンタルにつけ込むチャンスは多くあった。時間が経つにつれてトミックのプレーに、いいボールを打つ場面と、イージーなミスをする場面が混在するようになる。第4セットはお互いサービスキープが続いたが、第12ゲームを錦織がブレークして勝負を決めた。

 結局、24本のサービスエースを打ち込んだ錦織。ビッグサーバーではないので、この数字はかなり多い方になるが、サービスエースの要因を次のように振り返った。

「彼が(リターンポジションに)結構早く動いて、(コースを)読んでくるタイプなので。普通の選手だったら、もうちょっとエースが少ないと思います。グラスでは、スピードも大切ですけど、(サービスボックスの)コーナーに入れるだけでエースになってくれる。コースがかなり重要で意識していました」

 トミックは、1年前のウインブルドンで初戦敗退後、「試合中に、テニスに少し飽きてしまった」と発言して問題になり、ラケットメーカーとの契約を打ち切られたという過去を持っており、才能がありながらも、なかなかトップ選手になれずにいる。

 これは、3回戦で対戦することが決まった第15シードのニック・キリオス(18位、オーストラリア)にも当てはまることで、失言の多い彼もまた本当のトップになれない状態だ。

 28歳の錦織は、自分より若い25歳のトミックや23歳のキリオスらの才能を認め、そして、彼らのキャラクターについても理解を示している。

「トミックもキリオスも才能のある選手だと思います。あれだけ才能があって、軽くトップ10にいける選手なのに、まだ入っていない。まぁ、いろいろ変わった選手はいるので。でも、それが彼らのスタイルだし、とやかくいう立場でもないし、彼らの自由なので」

 ちなみにプロ11年目の錦織は、トミックのようにテニスに飽きたことがあるのか聞いてみた。

「今のところ1回もないですね。もちろんメンタルが疲れることはありますけど。やめたいとか、つまんないとか思ったことは、たぶん今までで1回もないと思いますね。でも、バーンアウトする気持ちは何となくわかるし、人それぞれなのでしょうがないですかね」

 錦織は、キリオスに3勝0敗だが、グラスでは対戦したことがない。

「圭は、対戦して一度も勝ったことがない選手だ。たぶんグラスは、彼が一番好きではないサーフェスだけど、すべてのサーフェスでいいプレーができる。素晴らしいリターナーでもあるね」

 こう警戒するキリオスが、時速220km以上を叩き出すサーブを確率よく打てれば、グラスでは、錦織のリターンを上回る場面が多発する可能性はある。

「なるべくストローク戦に持ち込めれば、確実にチャンスは出てくると思いますけど、(キリオスの)サーブがすごいので攻略できるかわからないです。なるべく自分のサービスゲームに集中してやらないと勝てない相手になってくると思います」

 今、錦織はルーティーンのひとつを変えている。いつもはファーストサーブの前にボールパーソンから2球受け取ると、1球はポケットにしまい、セカンドサーブに使っていた。それを、セカンドサーブを打つ前にも、ボールパーソンからもう一度ボールを受け取り、打つことを試している。少しでもいいサーブを打てるような効果を期待しているが、まだ実感はないという。”一球入魂”のイメージでサーブを打とうとする工夫も、錦織がテニスに決して飽きずに進化していくことにつながっているのかもしれない。

◆錦織圭が「友人」を倒して初戦突破。次戦は「問題児」でまたやりにくい

◆今年も期待大。ウインブルドンが大坂なおみに向いているワケ