2018年のスーパーGTシリーズは、早くも中盤戦に突入した。第4戦は6月30日~7月1日、タイ・ブリーラムにある「チャーン・インターナショナル・サーキット」にて開催。気温30度を超える灼熱のコンディションで行なわれた決勝レースは、レク…

 2018年のスーパーGTシリーズは、早くも中盤戦に突入した。第4戦は6月30日~7月1日、タイ・ブリーラムにある「チャーン・インターナショナル・サーキット」にて開催。気温30度を超える灼熱のコンディションで行なわれた決勝レースは、レクサス勢がトップ4を独占する強さを見せて幕を下ろした。



第4戦・タイを制した小林可夢偉/ヘイキ・コバライネン組

 そのレクサス勢のなかでも、予選から決勝まで安定した速さを誇っていたのは、ヘイキ・コバライネン/小林可夢偉の「元F1ドライバーコンビ」DENSO KOBELCO SARD LC500(ナンバー39)だ。予選3番手からスタートした39号車は、レース前半で早々にトップに立つと、そのまま迫りくるライバルから逃げ切って優勝を飾った。

 2015年から参戦しているコバライネンにとっては、スーパーGT通算3勝目。一方、今季からレギュラー参戦している小林は3戦目(第2戦はWECの開幕戦に出場するため欠場)にして、念願のスーパーGT初優勝である。

 昨年の鈴鹿1000kmでWedsSport ADVAN LC500(ナンバー19)からスポット参戦した小林は、今年は39号車のレギュラードライバーとしてスーパーGTに挑むことになった。ただ、スーパーGTは2クラス(GT500とGT300)の混走という特殊なレースフォーマットなため、F1やWECを経験している小林とはいえ、すぐに優勝するのは難しいと思われていた。それが今回、3戦目にして早くも優勝を決めた。

 事実、小林と同じく今年からフル参戦している元F1王者のジェンソン・バトンも、4戦を終えていまだ未勝利。表彰台には2度立っているものの、まだスーパーGTに適応しきれていない部分が垣間見える。

 今年の39号車は、小林が参戦した開幕戦・岡山と第3戦・鈴鹿は苦戦を強いられた。両レースともQ1で敗退し、予選で小林の出番はなし。さらに鈴鹿ではレース序盤でリタイアしてしまったため、後半スティントを担当する予定だった小林は走ることなく鈴鹿を後にした。

 そんな苦しい状況が続いていただけに、小林も今回の優勝には正直、驚いたという。

「今年は岡山しかレースができていないし、予選アタックも今回が初めて。マシンにも慣れたといえる状態じゃないので、正直なところ、勝てるとは思っていなかった」

 ただ、スーパーGTは経験不足と言いつつも、小林は「ぶっつけ本番」での勝負強さを見せた。

 決勝レース前半にトップへと浮上した39号車は、36周目にピットイン。コバライネンから小林へと交代する。だが、ライバルのペースも上がってきており、WAKO’S 4CR LC500(ナンバー6)の大嶋和也、さらにはau TOM’S LC500(ナンバー36)の関口雄飛がトップの小林に迫ってきた。

 小林にとって、39号車で決勝レースを走るのは実質2レース目。しかも、後続のライバルのほうがペースはよく、トップの座を明け渡すのは時間の問題かと思われた。

 しかし、小林はこの土壇場で勝負強さを発揮する。慣れないGT300との混走をうまく利用し、首位をがっちりとキープ。リスクを背負わない走りを徹底することを心がけ、トップの座を譲らなかった。

「向こう(大嶋や関口)のほうがペース的に速かったので、何とかして守ろうという思いはあった。僕たちのクルマはすごく調子がいいわけではなかったので、どうやって(後続を)抑えるかということだけを考えていた」

 そしてもうひとつ、ライバルとのバトルを切り抜けられた要因を挙げるならば、レースの状況を巧みに読んだ小林の冷静さだろう。

「コーナーでは彼らのほうが速いのはわかっていたんですけど、幸いなことに、ターン1では僕のほうが速かった。だから、(一番の追い抜きポイントになる)ターン3で彼らを抑えることができた」

 ヘアピン状のコーナーになっているターン3は、レース中に何度も追い抜きシーンが生まれていた。このコーナーで前のマシンに並びかけるには、直前のターン1での通過スピードがカギとなる。小林の分析によると、このコーナーで後続を少し引き離すことができたことで、相手にチャンスを与えずに済んだという。

 一方、チームメイトのコバライネンは、チームの総合力が上がったことを勝因のひとつに挙げた。

「今シーズン、僕たちのクルマはフロントのグリップが不足していて、コーナーで曲がってくれない症状に悩まされていた。その問題が解決できないまま開幕戦を迎え、散々な結果になってしまった。

 でも、問題解消のために、チームがあきらめずにがんばってくれた。その結果、第2戦・富士では劇的にクルマの動きが変わり、その流れがこのタイでも生きた。まだ改善は必要だけど、シーズン前半で我々はものすごい進歩を遂げたと思う」

 さまざまな要素が絡み合うスーパーGTは、チームの総合力が問われるレースだ。ドライバー、チーム、そしてマシンが徐々に噛み合いだし、その影響が小林のスティントにも間違いなく追い風となったのだろう。優勝という結果を残せたことで、後半戦に向けてチームの士気もさらに上がったようだ。

 これでドライバーズランキングは、コバライネンが35ポイントでトップに浮上。チームランキングも44ポイントで首位に躍り出た。

 今後の後半戦に向けて、小林はこう意気込む。

「僕自身、満足のいく走りは正直まだできていないし、(スーパーGTは)特殊なクルマなので、時間とともに慣れていくしかない。もっとクルマをよくして、がんばるだけです」

 次回の第5戦・富士はウェイトハンデが70kgとなるため、決勝レースでの苦戦が予想される。だが、このタイの勝利で勢いに乗ったことで、コバライネン/小林組が後半戦のチャンピオン争いを面白くするキーマンなのは間違いないだろう。