WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 先週、米女子LPGAツアーのウォルマート NW アーカンソー選手権(6月22日~24日/アーカンソン州)で、日本の畑岡奈紗(19歳)が米ツアー初優勝を果たした。 19歳での米ツア…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 先週、米女子LPGAツアーのウォルマート NW アーカンソー選手権(6月22日~24日/アーカンソン州)で、日本の畑岡奈紗(19歳)が米ツアー初優勝を果たした。

 19歳での米ツアー勝利は、日本勢としては2012年に22歳で勝った宮里美香の最年少記録を更新するもの。トーナメントレコードを塗り替える通算21アンダーをマークして2位に6打差をつけての圧勝は、畑岡の未来へ、一層の期待を抱かせる結果でもあった。

 今年は米男子のPGAツアーでも、小平智が4月のRBCヘリテージで米ツアー初優勝を飾った。最終日、首位に6打差の12位からのスタートながら、「66」の好スコアをマークしてトップに浮上。最後は金シウ(韓国)とのプレーオフを制して、スポット参戦ながら見事に栄冠を手にした。

 今回の畑岡の勝利で、今年は男女ともに日本勢が米ツアーを制覇。まだシーズン半ばにあって、素晴らしい活躍を見せている。



今季、米ツアー初勝利を飾った小平智

 ところで、米ツアーにおける小平の勝利は、日本勢5人目。ゴルフ大国の日本としては決して多くはないが、その分、日本勢の優勝の瞬間は、日本のメディアやファンが大いに沸き上がってきた。そこで今一度、過去に米ツアーを制した日本勢の、初制覇の模様を振り返ってみたい。

 まず、日本勢初の快挙を達成したのは、青木功(現・日本ゴルフツアー機構会長)。1983年2月のハワイアンオープンだった。最終ホールで、イーグルを奪うミラクルショットを見せての逆転優勝。その劇的なシーンが、今なお脳裏に焼きついている人も多いのではないだろうか。

 当時、青木は40歳。舞台となったのは、現在もPGAツアーのソニーオープンが開催されているハワイ・オアフ島のワイアラエCCだ。

 最終日を首位タイでスタートした青木だったが、最終18番(パー5)ホールを迎えると、前の組のジャック・レナー(アメリカ)が先にバーディーを奪取。1打のリードを奪ってホールアウトした。

 1打を追う形となった青木。同じく18番でバーディーを奪えば、プレーオフに持ち込める状況だったが、ティーショットがラフ、2打目もラフにつかまった。

 勝負の行方を左右する運命の3打目、青木がラフから放ったボールはグリーンでワンバウンドして、そのままカップに吸い込まれた。奇跡の逆転優勝を決めた鮮やかなチップインイーグル。青木はカップインしたことがわかると、両手を広げてフェアウェーを駆け出した。

 日本勢、初の米ツアー優勝。日本中が興奮したその瞬間は、まさにドラマチックなものだった。以来、青木は「世界のアオキ」と呼ばれるようになった。

 この青木の優勝から、次に日本勢が米ツアーで快挙を遂げるまで、実に18年の歳月を要することになる。

 それを実現したのは、2000年から米PGAツアーに本格参戦を果たした丸山茂樹だった。

 ツアー参戦2年目の2001年7月、ミルウォーキー・オープンで最終日にトップと1打差の2位でスタートした丸山は、8番パー4でイーグルを奪うなど「66」の好スコアをマーク。チャールズ・ハウエル(アメリカ)とのプレーオフに勝って、悲願の米ツアー初優勝をアメリカ本土で決めた。

 このあと、丸山は2002年にバイロン・ネルソンクラシック、2003年にクライスラー・クラシックを制覇。3年連続でツアー勝利を挙げて、アメリカに拠点を置いて戦う日本勢のパイオニアとなった。

 この丸山の活躍に刺激を受けて、日本勢が次々に米ツアー参戦を目指したのもこの頃だった。田中秀道、横尾要、細川和彦、宮瀬博文、久保谷健一らが果敢に挑んだが、いずれも勝利を得るまでには至らなかった。

 そうした状況にあって、2008年に1勝を手に入れたのが、日本勢としては異色の存在だった今田竜二である。

 今田が他の日本勢と違ったのは、14歳で渡米したこと。フロリダ州のゴルフアカデミーを経て、ジョージア大にも進学している。同大学時代には、NCAAでチームの勝利に大きく貢献した。

 その後、プロに転向してからも、アメリカの下部ツアーで着実に力をつけていった。そして、2005年からPGAツアーへの昇格を果たすと、4年目にAT&Tクラシックで念願のPGAツアー初優勝。日本勢3人目の快挙を達成した。

 実は、今田は前年の同大会でも優勝争いを展開。ザック・ジョンソン(アメリカ)とトップに並んだが、プレーオフの末に惜しくも敗れている。

 会場となるアトランタ郊外のTPCシュガーローフとは、よほど相性がいいのだろう。優勝した際も、ケニー・ペリー(アメリカ)とのプレーオフになったが、強豪ペリーを1ホール目で退けて勝利を収めた。

 それから、日本勢の米ツアーでの勝利までは再び6年の時を要した。

 世界の”厚い壁”を打ち破ったのは、現在も活躍している松山英樹である。米ツアー本格参戦1年目となる2014年、並み居る強豪が顔をそろえたメモリアル・トーナメントで、ケビン・ナ(アメリカ)とのプレーオフを制し、日本勢最年少記録となる22歳という若さで初の栄冠を獲得した。

 松山は、2016年、2017年にもツアー優勝を決めて、現在ツアー通算5勝。そのなかには、世界選手権シリーズ(WGC)での勝利もあって、一時世界ランキング2位まで上り詰めた。

 そして今年、28歳の小平が優勝。日本勢の米ツアー覇者は5人となった。

 小平はスポット参戦でも米ツアーで勝てることを証明。この結果を受けて、日本勢の米ツアー勝者がこれからどんどん増えることを期待したい。