何をしても、何もしなくても、注目されるのがスーパースターなのだろう。 ポルトガルの英雄、クリスティアーノ・ロナウドはロシアW杯初戦のスペイン戦(3-3)でハットトリックを記録した。外側から巻き込んだFKは圧巻だった。続くモロッコ戦(1…
何をしても、何もしなくても、注目されるのがスーパースターなのだろう。
ポルトガルの英雄、クリスティアーノ・ロナウドはロシアW杯初戦のスペイン戦(3-3)でハットトリックを記録した。外側から巻き込んだFKは圧巻だった。続くモロッコ戦(1-0)でも決勝点となる一発を叩き込んでいる。チャンピオンズリーグで6年連続得点王に輝くストライカーの面目躍如だろう。
ウルグアイ戦を控え、練習でも厳しい表情を見せるクリスティアーノ・ロナウド
一方、第3戦のイラン戦(1-1)は低調なプレーに終わり、イランのポルトガル人監督カルロス・ケイロスとの軋轢(あつれき)がニュースとして大きく取り上げられている。
「マンチェスター・ユナイテッドやポルトガル代表で、ロナウドとは仕事をともにしている。育成年代でも、ともにタイトルを獲ったことがあった。そんな監督に対し、挨拶にもこないというのはどういう了見なのか?」
ケイロス監督は不満を露わにするコメントを残している。2人の仲は、ドイツW杯を機に冷え切ってしまったという。大会敗退後、「なぜ敗れてしまったのか?」と記者が質問した。するとロナウドは憮然として、「その理由はケイロスに聞けよ」と答えたのだ。
イラン戦は、ロナウドがPKを外したことも話題になった。マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリードというクラブレベルでは、85%以上のPK成功率を誇っている。ところが代表では61%まで落ちると、数字として大々的に紹介された。
とにかく、スターは一挙手一投足が注目される。6月30日、ウルグアイとのラウンド16でも、その存在からは目が離せない。
そもそも、ポルトガルはロナウドを生かすための戦術システムを採用している。
ぺぺ(35歳)、ジョゼ・フォンテ(34歳)という老練なディフェンスをバックラインに並べ、リトリートで相手を引き込む。じりじりと相手を消耗させながら、鋭いカウンターを発動。一気に仕留めるのだ。
ロナウドの決定力を最大限に引き出す、その戦いが奏功したのが、優勝したEURO2016だった。戦術=ロナウドも同然といえるが、そうなる理由は単純な能力の問題だけではない。
「ロナウドは苦しい状況に追い込まれたときこそ、本来の力を発揮する。特別な選手だ」
レアル・マドリードを率いていたジネディーヌ・ジダンはそう語っているが、ロナウドは最も重圧がかかる試合でこそ輝ける。「その星のもとに生まれている」としか説明がつかないのだ。
「俺は鏡の中の俺を見るのが好きだ。自分で自分を評価し、価値を与える。それは大切なことだ」
ロナウド本人はそう語っているが、舌を巻く精神力と言えるだろう。
ウルグアイ戦。ロナウドがマッチアップするディフェンダーはディエゴ・ゴディン、もしくはホセ・ヒメネスになる。実はどちらもアトレティコ・マドリードの選手で、何度となく対戦している。
「1番以外に意味はないんだよ」
そんな信条で生きてきたロナウドだけに、相手が優れたディフェンダーの方が、闘争心はかきたてられる。せめぎ合いの中で、さらに強さを増すのだ。
今回、攻撃のパートナーを組むリカルド・クアレスマやゴンサロ・ゲデスは、ロナウドが自由にプレーできるように、敵を撹乱する動きができる。とりわけ、スポルティング・リスボン時代の先輩であるクアレスマは、トリッキーなプレーで意表をつく。イラン戦も得意のアウトサイドキックでミドルシュートを叩き込んでいる。
一方で、ポルトガルの躍進を疑問視する声があるのも事実だ。
「ロナウドの一発で勝つパターンは、凡庸で退屈」
一部でその戦い方は、好意的に受け入れられてはいない。
「何を言われようとも、我々の目標は試合を勝つことにある。それに、美しいプレーだったかどうかは、君たちの感覚次第だろ?」
右サイドバックのセドリックはそう言って胸を張る。
「ウルグアイは過去に2度、世界王者になっている。2018年に入ってからは無失点だと聞いた。当然、難しい相手になるというのは弁(わきま)えている。ヘディングでのゴールが多いチームだって? どんな攻め方だろうと、対抗できる自信はあるよ。なにしろ我々も、現役の欧州王者だからね。恐れることはない」
33歳になるロナウドにとって、4年後のカタールW杯は未知の領域となる。それだけ今大会にかける気持ちは強い。過去3度のW杯では、そのキャリアを考えればほとんどインパクトを残していない。
「我々は優勝候補ではないだろう。そこは謙虚に向き合う必要がある。まずはグループリーグ突破で、そこから先はひとつずつ戦うことだ」
ロシアW杯開幕前、ロナウドは珍しく慎ましい言葉を口にしている。それがむしろ、彼の野心の大きさを表しているようにも思える。
イラン戦の翌日は全体練習には参加せず、ひたすらリカバリーに徹した。その翌日からは練習に帯同。ウルグアイ戦に向け、臨戦態勢は整った。
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