予想外の好発進を見せた西野ジャパン。2戦を終えて勝ち点4。しかも試合を重ねるにつれて手応えと自信を感じさせる戦いぶりは、さらなる躍進を予感させるものだ。 先を見据えた戦いが始まるなか、第3戦ポーランド戦では温存されると予想されているの…
予想外の好発進を見せた西野ジャパン。2戦を終えて勝ち点4。しかも試合を重ねるにつれて手応えと自信を感じさせる戦いぶりは、さらなる躍進を予感させるものだ。
先を見据えた戦いが始まるなか、第3戦ポーランド戦では温存されると予想されているのが主将の長谷部誠だ。初戦では相手にFKを与えるシーンもあったが、おおむね安定したプレーを見せてきた。だが、決勝トーナメントの戦いを想定し、さらにチームの士気を上げるためにも、あえて先発から外すのではないかというのが大方の見方になっている。
合宿地カザンで笑みを浮かべながらランニングする長谷部誠
「監督は策士なので。(チームのモチベーションを上げる方法は)考えているんじゃないですかね」
セネガル戦の翌日、長谷部はニヤリとしながら話している。以前は西野監督の意向が掴みきれないような様子も見せることもあったが、いまではすっかり信頼関係が築かれているようだ。
長谷部と歴代監督との間の繊細かつ独特な信頼関係は、日本代表というチームの精神的な骨格のひとつになってきたように思う。たとえばハリルホジッチ時代も、難しいコミュニケーションをスムーズにやってのけたのは長谷部だった。ハリルが長谷部を誰よりも頼りにしていたのは、よく知られた話だ。
「監督のところに話にいくと、通訳もはさむので、長くなるんですよね。でも、僕はそれを短く切り上げる術(すべ)を持っていますから」
このときも長谷部はニヤリとした。ハリルジャパンが苦境の最終局面に突入した11月のベルギー遠征の最中だった。ハリル解任に際して、「別に3月の遠征の出来が悪く、急展開で決まったわけではない。いろいろあってのこと。すべてを言えるわけではない」という長谷部の言葉は、決して表面的なものではないと思えたものだ。
西野体制がスタートし、オーストリアでの合宿中にはこんなことを話している。
「練習の密度も濃くなっており、ミーティングが長くなると頭がいっぱいになってしまう。できるだけ選手の負担を減らしたい」
主将としてスタッフと事前の打ち合わせなどを行ない、ミーティングの時間短縮をはじめ、効率化に努めていた。
もちろんそこには、自分に余裕があるということもあるのだろう。3度目のW杯。いいことも悪いことも経験してきたからこそ、ピッチ外でなすべきことが明確になる。
オーストリア合宿の途中からは、西野監督からの指示も徐々に明確になってきたようで、「ミーティングは30分と決めたら30分で終わる人」と、具体的なエピソードをまじえて監督像を話してくれた。そして本大会のここまでの2戦。勝ちにいく姿勢を明確にした監督を、客観的な言葉で”評価”している。
「明確ですよね。勝ちにいくということは試合前からずっと言っているし、選手交代でのメッセージもあるし。そのなかでも、ただ前がかりになるだけじゃないというところをみんなが感じとれている。そのバランス感覚が、いま非常にいい状態にあるのかなと思います」
代表チームにおける長谷部の役割は、単にチームの主将というだけでなく、監督やコーチ陣と選手たちとの橋渡し役といっていいだろう。一般社会に置き換えてみると、中間管理職のようなものだろうか。それを長谷部は、少なくとも表面的には、なんの苦もなくこなしてきたように見える。
決勝トーナメント進出がかかるポーランド戦。たとえ先発を外れたとしても、長谷部の存在価値はけっして色あせることはない。