生か死か――。いよいよ、6月29日と7月2日にホーム&アウェーにて、2019年に開催されるバスケットボールのワールドカップ1次予選Window3が行なわれる。日本代表では思い描く活躍がまだできていないと語った田中大貴 日本はここまで4…

 生か死か――。いよいよ、6月29日と7月2日にホーム&アウェーにて、2019年に開催されるバスケットボールのワールドカップ1次予選Window3が行なわれる。



日本代表では思い描く活躍がまだできていないと語った田中大貴

 日本はここまで4戦全敗。オーストラリア、フィリピン、チャイニーズ・タイペイとの争いの中でグループ最下位に沈み、このままでは3位までが権利を得る2次予選にすら進めない危機的状況に置かれている。そのため、1次予選の最終2試合が行なわれるWindow3では、日本に帰化した210cmのニック・ファジーカス、NCAAの強豪ゴンザガ大で活躍する八村塁を招集して挽回を図ろうとしている。

 しかし崖っぷちの中、ファジーカスと八村に頼るだけでは危機を脱することはできない。今まさに、日本のバスケットボール界を牽引している比江島慎や田中大貴といったエースの奮闘が必要だ。決戦直前のインタビュー第1弾に登場するのは、5月末に終了したBリーグでアルバルク東京を優勝に導き、チャンピオンシップMVPを受賞した田中大貴。

 今シーズンの田中は、得点でもゲームコントロールでも、チームを背負う中枢として機能し、名実ともにエースとして存在感を示した。だが、ここまでの日本代表では、Bリーグでの活躍を思えば、今ひとつ役割を見つけられずにいる。この厳しい局面で、得点でもディフェンス面でも、的確な判断力を持つ田中の力は発揮されるのか。

――1次予選は4戦全敗。予選が始まる前に「自分たちのホームは自分たちで守る」と言っていましたが、守ることができていない状態です。この危機的状況をどのように捉えて、Window3に臨む覚悟ですか?

田中大貴(以下、田中)誰もが厳しい状況だとわかっています。もう、自分たちの力だけでコントロールできないところにいるというか、相手(チャイニーズ・タイペイ)の勝敗次第では、1次予選敗退を考えなければいけないところに来ているので、本当に崖っぷちです(※)。でも、相手のことをコントロールできるわけではないので、やっぱり何としても自分たちがオーストラリアとチャイニーズ・タイペイに勝つことだけを目指し、集中してやるだけです。

※6月29日、日本がオーストラリアに負け、チャイニーズ・タイペイがフィリピンに勝った場合は、7月2日のチャイニーズ・タイペイとの直接対決を待たずして、日本の1次予選敗退が決定する。

――1次予選の4試合を振り返って、自分自身の出来をどのように感じていますか。

田中 納得はしていません。こういう代表戦になると、一つひとつのチャンスをしっかり決めていかなければならないし、そう何本も自分にチャンスが巡ってくるわけではないので、確率をもっと高めなければいけない反省があります。

――日本代表での田中選手は、アルバルクでの「自分がエースだ」という背負い方とは違い、どこか迷いが見えるのも正直なところです。自分としては、日本代表での役割をどのように考えて臨んでいるのですか?

田中 正直、日本代表での戦い方は難しいころがあります。自分の中では「アルバルクだから」「日本代表だから」と、特別に何かを変えて戦おうとしているわけではないのですが、代表でうまくいっていないのが現状で、それは何かしら原因があるとは思っています。欲しいところで点が取れないことに関しては、素直に自分の力がないことを認めて、もっとゴールにアタックして、せめて最悪ファウルをもらう技術を身につけなければと思っています。

 ただ、アルバルクと日本代表が違うのは、力のある選手が揃っているのが日本代表で、アルバルクは自分が中心だということ。日本代表には、それぞれに役割があります。アルバルクみたいにある程度全部をこなすというよりかは、求められることを高いレベルでやることが必要になります。日本代表でポイントだと思っているのは積極性です。積極性を失うと自分はよくない方にどんどんいってしまうので、そこだけは最後まで失わずに、思い切りのよさを出したいです。

――アルバルクだと田中選手がピック&ロール(※)から攻める起点になり、時にはゲームコントロールまでしますが、日本代表では先ほど言ったようにチャンスが少なくて起点になれない。その違いがあるのでは?

田中 そうですね。アルバルクではピック&ロールの展開で僕が起点になることが多く、うまく回っていると思います。それがなぜうまくいっているかと言えば、いいスクリーンをかけてくれる選手がいて、得点をしてくれるセンターがいるからこそ、相手のディフェンスが迷うと思うので。

 これは自分のプレースタイルの問題でもあるのですが、自分はどちらかというと、1対1をガンガン仕掛けるスタイルではありません。その場その場でいい判断をしてプレーしたいと思うタイプの選手なので、パスを選択することもありますし、それを見方によっては「積極性がない」と見られてしまうのかもしれないと感じています。とくに国際大会だと自分が攻めるチャンスはそんなに多くはないので、そこは変えていかないといけないところです。

 ただ今回は、ニック・ファジーカスと八村塁というインサイドで起点となる選手が入ったことによって、アルバルクと同じように何でもこなす役割かといえばそうではないし、2人を生かすことで、自分たちのピック&ロールがもっと生きてくると思うので、息を合わせてやっていきたい思いがあります。

(※)ピック&ロール=スクリーン(壁になること)を使って得点チャンスを作り出す2対2のコンビプレー

――ニック・ファジーカスと八村塁選手の加入で日本のバスケは変わると思いますか?

田中 変わると思います。今まではどうしてもインサイドが起点になって得点を取る人がいなかった。ピック&ロールをしてダイブする選手にパスをどんどん配給できる状態ではなかったので、2人が入ってピック&ロールでのオプションができたのは、自分たちアウトサイドの選手にとっては大きなことです。あとは自分たちが2人をどれだけ使って、2人に合わせられるかだと思います。

――韓国との強化試合(6/15、17)で田中選手は2戦とも出場しませんでした。Bリーグのセミファイナルで痛めたハムストリングが完治していないとのことですが、現在のコンディションは?

田中 前回の11月の予選のときもケガをしていて直前合流だったので、今回はファイナルが終わって、いい状況で代表に合流したいと思っていました。そこは残念なのですが、だいぶよくなっているので、オーストラリア戦には出られる状況には持っていきます。

――日韓戦をベンチから見ていて、気づきはありましたか。

田中 ニックと八村にボールを預ければ点が取れて、試合が落ち着くというのは今までになかった形で、それがどんどん出てきているのですが、もっとうまくやれると思って見ていました。もっと周りがニックと八村をうまく使わないといけない。彼らにもボールが欲しいタイミングがあると思うので、そこはもっと練習をやり込まないといけないです。

 課題として、ニックはディフェンスでそこまで動けるわけじゃないので、ディフェンスの共通意識が必要だし、ガードとアウトサイドの選手がもっとディフェンスを激しく頑張ってリズムを作らないと、オーストラリアのような相手にはやられてしまいます。

――田中選手にとってワールドカップとは。

田中 ものすごく出たいところです。出なければいけないと思っています。

――アルバルクを優勝に導いたエースとして、やはり田中選手には日本代表でもやってもらわなければならない。この2戦にかける意気込みを聞かせてください。

田中 アルバルクで優勝できたことで、自分に自信がついたというのはあります。より気持ちの強さを試されるのが代表の試合なので、もっと気持ちを出して、自分の持ち味であるハードなディフェンスをやり続けることから貢献したい。

 自分としては、ケガをしてしまったこの厳しい状況を、自身のチャレンジとしてどうにか乗り越えて結果を出したい思いが強いです。そのためには、自分で攻めるにしろ、ニックや八村を生かすにしろ、どんな状況でも自分のパフォーマンスをもっと上げていかなければと思っています。

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