ブラジル代表を率いるチッチ監督。サッカー大国の重いプレッシャーがのしかかり、多忙を極めるなかでも、ワールドカップの全試合に目を通しているという。どのチームといつ当たってもいいように、万全を期しておくためだ。もちろんそのなかには日本も入って…
ブラジル代表を率いるチッチ監督。サッカー大国の重いプレッシャーがのしかかり、多忙を極めるなかでも、ワールドカップの全試合に目を通しているという。どのチームといつ当たってもいいように、万全を期しておくためだ。もちろんそのなかには日本も入っていて、「印象深かった」と言う。ブラジルのラジオ番組に出演したときも、日本の試合のことに触れていた。そこで、優勝候補国の監督に、あらためてその感想を聞いてみた。
「日本の2試合を見たが、90分間よく動き、ゴール前によくボールを運び、見ていて楽しいサッカーだった。私はこれまで何度も日本の試合を見てきたし、対戦したこともあるが、この2戦はピカイチの出来栄えだったろう」
開口一番、チッチはそう評した。
ブラジル代表チッチ監督が印象深い選手として名前をあげた乾貴士 photo by Fujita Masato
「ポジショニング、戦術のセンス、ほぼ完璧なボールタッチ、ミスの少ないパスワーク。どれも見事だ。
コロンビア戦ではハイレベルな選手がいることも垣間見えた。プレースタイルは現代的で、特に相手がボールを持ったときの戦術は興味深い。全体を通じ選手たちが冷静だったのも印象的だった。
またセネガル戦では、攻めるたびに異なるストーリー展開を見せていた。特に驚いたのは、0-1、1-2とされて、追い上げようとしていたときほど、より危険なチームになることだった。右から、左から、中央からと、さまざまな方向からゴールを奪おうと選手が上がってくる」
しかし「追い上げているときが危険」ということは、「優位になると危険性が減る」ということだ。チッチもそこが気になったようだ。
「コロンビア戦の日本は、キックオフから勇敢に攻め上がっていたが、セネガル戦では、1点ビハインドになって、初めて自分たちの力を信じるようになったような印象を受けた。また、初戦のコロンビア戦では距離のある位置からもシュートを試み、より勝利に貪欲だった感じがしたが、すでに勝ち点3を手にしていた2戦目では、どこか”負けないように”という試合をしているようだった」
また、日本の守備には多少の問題を感じたという。
「DFとGKの間で、もっとコミュニケーションが取れるといいね。もう少し注意していたら、セネガル戦の1点目はなかったはずだ。日本のGKは優秀であることを知っていただけに、残念だった」
しかし、「全体的に日本選手のレベルはとても上がっている」と言う。
「日本の選手たちは日々強くなっている印象を受ける。相手に振り回されず、しっかりと自分たちのサッカーができる。多くの選手たちがヨーロッパでプレーしていることもうなずけるよ」
「特に気になった選手は?」と聞くと「イヌイ」という答えが返ってきた。また、西野朗監督には、「その勇気を讃えたい」と言う。
「W杯直前のあの時期にチームを引き受けるというのは、どの監督にとっても並大抵のことではない。にもかかわらず、日本の監督はいい仕事だけではなく、奇跡も起こそうとしている。短時間のうちに、しっかりやるべきことをした証拠だ。拍手を送りたい」
最後に、今後の日本のことを聞いてみた。
「日本はいまだ75%の力しか出していないように見える。より勝利に貪欲になれば、日本はもっと危険なチームになる。このロシアの地で、新たな日本サッカーの歴史が書かれるかもしれないね」