「春のグランプリ」GI宝塚記念(6月24日/阪神・芝2200m)は、過去10年間で1番人気が2勝、2着4回、3着2回、着外2回。比較的安定した成績を残しており、一見すると”穴党”の出番はないように見える。 しかし…
「春のグランプリ」GI宝塚記念(6月24日/阪神・芝2200m)は、過去10年間で1番人気が2勝、2着4回、3着2回、着外2回。比較的安定した成績を残しており、一見すると”穴党”の出番はないように見える。
しかし、1番人気の勝率が20%ということは、それだけ好配当の生まれる可能性が高いということ。さらに、この週末は梅雨前線の影響で渋った馬場が予想される。やや重以下のコンディションで行なわれたことは過去10年で4回あるが、いずれも1番人気は敗れている。
とすれば、今年の宝塚記念は間違いなく”穴党”の出番だろう。そして、日刊スポーツの松田直樹記者は、その馬場適性が穴馬を判別する指標になるという。
「6月の阪神開催ではほぼ毎年、開催期間中のいずれかの週で、芝レースがやや重以下の道悪馬場で行なわれています。ましてや、宝塚記念の施行日は開催最終週。仮に良馬場でも、タフな馬場をこなせる脚力が求められます。
それは、これまでの勝ち馬を見れば、よくわかります。2013年、2014年に連覇を遂げたゴールドシップは、泥んこ馬場の皐月賞優勝馬。2016年の勝ち馬マリアライトも、やや重以下で4戦3勝、3着1回と荒れた馬場を得意としていました。さらに、昨年の覇者サトノクラウンも、やや重以下の馬場で重賞を3勝していました」
サトノクラウン(牡6歳)は宝塚記念を制したあとも、極悪馬場で行なわれたGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)で2着と好走している。となると、松田記者は今回、サトノクラウンで勝負するのだろうか。
「いえ、それ以上に注目している馬がいます。キセキ(牡4歳)です。昨年の菊花賞(京都・芝3000m)では、勝ちタイムがレコードより15秒も遅くなった記録的な不良馬場にあって、直線で突き抜けてきました。その脚力は現役屈指と見ています。
ただ、1番人気にはならないとはいえ、『穴馬』とは言い難いですよね。そこで狙いたいのが、香港からの”刺客”ワーザー(せん7歳)です」
宝塚記念における外国馬の出走は、実に21年ぶり。香港調教馬の参戦は初となるが、はたしてどうだろうか。
「今年4月の『香港チャンピオンズデー』の取材で香港に行ったとき、ワーザーを管理するジョン・ムーア調教師に取材をしました。その際、こんな力強い言葉が返ってきたんです。
『(我々は日本へ)旅行へ行くんじゃない。勝ちにいくんだ。しかも、6月の日本は雨の多い時期だと聞いているからね』と。
実際に同馬は、やや重で行なわれた2016年のクイーンエリザベス2世C(シャティン・芝2000m)で、ラブリーデイ、サトノクラウン、ヌーヴォレコルトといった日本の精鋭を一蹴した強豪馬です。そんな馬が、2月の香港ゴールドC(シャティン・芝2000m)で2着後、鼻出血を発症。春の地元の大一番までには復帰できないため、馬場渋化を見込んで日本遠征に舵を切りました。
マイル戦の前走ライオンロックトロフィー(6着。6月3日/シャティン・芝1600m)は明らかな距離不足に加え、何度も進路を取り直すチグハグな競馬。得意の中距離戦に戻れば、一変があっていいはずです」
翻(ひるがえ)って、デイリー馬三郎の吉田順一記者は、松田記者とは”逆”の見解を示す。
「今年に関して言えば、阪神は昨年の第4回開催から好天に恵まれて、いいコンディションを保ってきています。今開催でもレコードに近い時計が連発していて、路盤の硬い高速馬場と判断していいでしょう。
今週は梅雨らしい天気が続くようで、馬場の渋化が残る可能性はありますが、それでも気温が上がれば、馬場の乾きは早く、レース当日に雨が上がれば、好コンディションのまま時計は速くなりそうです。また、やや重になったとしても、極端に時計が遅くなることはないと思います。
あと、夏競馬の格言にある『格より出来』は、宝塚記念には半分しか当てはまりません。実は”格”や実績も非常に重要。過去10年の結果を見ても、1、2着馬のすべてがGI、もしくはGII勝ちの実績がありました。もちろん、もう半分の”出来”に関しても、小柄な牝馬が健闘していることから、その必要性は明白です」
こうした分析から、吉田記者は2頭の穴馬を推奨する。
「まず面白いのは、ここに来ての成長力は半端ないストロングタイタン(牡5歳)。実績に関してはGIIIまでの勝ち鞍しかないのですが、そもそも宝塚記念の前哨戦がコロコロと変わっていて、前走で勝ったGIII鳴尾記念(6月2日/阪神・芝2000m)が、かつて前哨戦だったGII金鯱賞(中京・芝2000m)と同じくらいの価値があると判断してもいいでしょう。
そして、その鳴尾記念で1分57秒2のレコード勝ち。以前はスピード+パワーを生かした頑強な先行力と、早めにラップを踏む立ち回りで結果を出してきましたが、鳴尾記念ではそれを覆(くつがえ)す乗り方を見せてくれました。中団を追走して最後は最内を抜け出してくるという、デビュー以来最高の競馬でした。そのレースぶりはしっかりと評価したいですね。
8歳になったスマートレイアーだが、衰えは感じられない
さらに穴中の穴は、スマートレイアー(牝8歳)。7歳時の昨秋、牡馬相手のGII京都大賞典(京都・芝2400m)を制したことには、頭が下がります。
馬格があって、56kgの斤量も問題ありません。臨機応変に、どんな競馬でもできるタイプ。経験豊富な牝馬のたくましさに期待が膨らみます」
サッカーW杯で番狂わせを起こした日本代表のように、列島に衝撃を与える馬は出てくるのか。ここに名前が挙がった穴馬3頭が、代表FW大迫勇也にも劣らぬ”半端ない”走りを見せてくれることを期待したい。