WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季のメジャー第2戦、全米オープン(現地時間6月14日~17日)がニューヨーク州のシネコックヒルズGCで開催されている。 マンハッタンから東へ約2時間、ロングアイランドの東端近く…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のメジャー第2戦、全米オープン(現地時間6月14日~17日)がニューヨーク州のシネコックヒルズGCで開催されている。

 マンハッタンから東へ約2時間、ロングアイランドの東端近くに位置する同コースは、1891年に創設された。大会を主催するUSGA(全米ゴルフ協会)の初期メンバー5コースのひとつで、1896年には第2回全米オープンを開催。長い歴史を誇る超名門コースだ。

 全米オープンが開催されるのは、今回で5度目となる。前回行なわれたのは2004年。当時34歳の丸山茂樹が初日からトップに立って、「日本人初の男子メジャー勝利なるか」と沸き上がったことが、今なお鮮明に記憶に残っている。

 最終的に、丸山は4位でフィニッシュ。惜しくも栄冠を手にすることはできなかったが、難コースでのプレーぶりは光っていた。その大健闘した姿を、今一度振り返ってみたい。



2004年の全米オープンで奮闘した丸山茂樹

 14年前、丸山は予選ラウンドで全盛期のタイガー・ウッズ(アメリカ)と同組になった。コースの全長は、今大会の7440ヤードよりも444ヤード短い6996ヤード(パー70)だったが、フェアウェーは現在よりもずっと狭く、グリーンは選手から非難の声が殺到するほど硬く、かなり厳しいセッティングだった。

 そうした状況のなか、丸山はティーショットが好調だった。アイアンショットのキレも抜群で、着実にパーを重ねていくと、巡ってきた好機もしっかりとものにしていった。

 結果、初日はなんと4バーディー、ボギーなし。4アンダーでジェイ・ハース(アメリカ)らと並んで首位に立った。

 このとき、自信に満ちた笑みを浮かべて語った丸山のコメントが秀逸だった。

「ウッズが一緒だと、目標が目の前にいて、すごくいいプレーができる。テンポもすごくいい。(すべて)完璧なショットだった」

 第2ラウンドも、丸山はこの好調を持続した。4バーディー、2ボギーの「68」。さらにスコアをふたつ伸ばして通算6アンダーとし、フィル・ミケルソン(アメリカ)とともに首位で決勝ラウンドへと駒を進めた。

 ミケルソンは、この年のマスターズで初のグリーンジャケットを手にしていた。悲願のメジャー制覇を遂げて「無冠の帝王」の汚名を返上したばかりで、勢いに乗っていたことは間違いない。

 そのミケルソンと同組で臨んだ3日目、強風が吹いて一段と難易度が増したコースは、容赦なく選手たちに牙をむいた。ミケルソンが首位と2打差の2位に順位を落とすと、丸山も「74」とスコアを崩して、首位と3打差の4位に後退した。

 とはいえ、舞台は予断を許さない難コース。3打差なら、どう転ぶかわからない。丸山自身、逆転の望みを持って最終日に向かった。

 迎えた最終日、前日以上の強風が吹き荒れた。そしてこの日、アンダーパーで回った選手はいなかった。世界の強豪が集うなか、このスコアはシネコックヒルズGCがどれほど難しいかを物語っている。

「こんなに硬いグリーンは初めて」と丸山も驚愕。風で乾いたグリーンは、選手たちにとってまさに”脅威”となった。

 厳しい条件のなか、丸山のスコアも「76」。通算4オーバーで、4位という結果に終わった。それでも、この2シーズン前の全英オープンで5位となった順位を上回り、メジャーでの最高位を更新した。

 とりわけ評価すべきは、最終日にダブルボギーがなかったこと。打ち上げの難しいグリーンが多いなかで、丸山は絶妙なアプローチを見せて”らしさ”を存分に発揮した。

「一昨年よりも確実に進歩している。これを続けていけば、いつかメジャー制覇できる」

 ラウンド後、そう言って大きく胸を張った丸山の姿は眩(まぶ)しかった。

 余談だが、優勝したレティーフ・グーセン(南アフリカ)に2打及ばず、この大会でも2位に終わったミケルソン。この年を含めて、全米オープンで2位にとどまったことは計6回にも及ぶ。すべての4大メジャーを制す”キャリア・グランドスラム”には、この全米オープンのタイトルだけが欠けていて、今もって勝つことができていない。

 6月16日には、48歳となったミケルソン。はたして、キャリア・グランドスラム達成はなるのか。残り時間は確実に少なくなっている。

 さて今年、14年ぶりにシネコックヒルズGCを訪れた丸山。コースに立つと、「ここに来たかった。この辺から打ったなぁ~とか、あのときの戦いを思い出す」と、当時の激闘を振り返りながら懐かしそうに語った。

 そして、丸山はこう続けた。

「やっぱり自分ががんばれたところで、14年経った今、みんながどんなふうに”新しいゴルフ”をするのかを見たい。でも、今さらながら、このコースは本当にタフだな、と思う」

 戦いのカギは「風」だと、大会スタート前に話していた。

「2004年の決勝ラウンドのような風が吹いたら、(このコースは)本当に厳しくなる。だけど、当時よりグリーンはずっと軟らかいから、風がなければ5アンダーぐらいは出ると思う」

 今年も”風”が勝者を決めるのか。選手たちにとって全米オープンは、やはりコースとの戦いだ。