テレビカメラの前ではニコニコしながら前向きな言葉を並べていても、ペン記者の前に立てば、仏頂面で、突っ込んだ質問に「そうですね」「わかりません」と、短いフレーズでやり過ごすのは、松山英樹のメディア対応にはままあることだ。 6度目の挑戦と…

 テレビカメラの前ではニコニコしながら前向きな言葉を並べていても、ペン記者の前に立てば、仏頂面で、突っ込んだ質問に「そうですね」「わかりません」と、短いフレーズでやり過ごすのは、松山英樹のメディア対応にはままあることだ。

 6度目の挑戦となる全米オープン(6月14日~17日/ニューヨーク州、シネコックヒルズGC)の、予選ラウンド2日間を終えたこの日もそうだった。

 練習ラウンドのときに口にしていたラインの読みづらいポアナ芝のグリーンの印象を訊かれると、「どうなんですかね。わからないです」。決勝ラウンドに向けた課題については、「もう(時間が)遅いんで、帰って寝ます」のひと言。

 テレビの向こう側に数百万人の視聴者がいるのと同様、新聞や雑誌にも多くの読者がいることを強く意識すべきと、常々思っている。

 だが、2日間の内容を振り返れば、この日の”塩対応”も理解できないわけではなかった。

 強風が吹き荒れた初日は午前組で、深いラフ(フェスキュー)、傾斜の強いグリーンに悩まされ、1バーディー、4ボギー、1ダブルボギーの「75」で回り、ホールアウトの段階では90位台の順位に沈んだ。

 一転して風がやんだ2日目は、午後のスタート時点で35位タイと順位を上げていたが、2バーディー、2ボギーとスコアを伸ばせず、通算5オーバー、26位タイと大きくジャンプアップすることはできなかった。

 予選ラウンドの2日間、松山に求められたのは忍耐力であり、崩れることなくひたすらチャンスを待つ我慢のゴルフだった。

 松山は言った。

「フラストレーション? そんなに溜まっていないです……。ショットも、パットも悪くない。よくもないですけど。パープレーで(2日目を)終えられたので、最低限のプレーはできた」

 開幕前日にキャロウェイ社のエースドライバーのヘッドが割れるアクシデントが起き、初日の朝の段階まで、メーカーの異なる2本のドライバーを試打していた。飛距離よりも、安定を求めたクラブを選択し、コースに飛び出していった。

 2日目のスタッツを見ると、フェアウェーキープ率は86%で14位タイ。パーオン率は78%で10位タイ。ティーショットは安定してフェアウェーをとらえていたが、セカンドショットがなかなかピンにからまず、パット数の「32」は全体で86位タイと下位に沈んだ。

 決勝ラウンドに向けた課題は、セカンド以降のショットの精度と、パッティングであるのは明白だ。



通算5オーバー、26位タイで予選ラウンドを終えた松山英樹

 首位を独走するのは、通算4アンダーのダスティン・ジョンソン(アメリカ)。現世界ランク1位のこのD・Jが、出場156選手の中で唯一、予選ラウンドをアンダーパーで回り、2位以下は団子状態である。松山にも、上位進出の可能性はいくらでも残されている。

「9ストローク差というのはすごく大きいですけど、明日以降の天気次第でどうなるかはわからない。伸ばしていかないとチャンスはないと思うんですけど、ひとつでも縮められるように……」

 日本人初のメジャー制覇を諦めるにはまだ早い。もちろん、誰より松山自身が諦めていない。