サッカーのワールドカップが開幕した直後に、日本国内で開幕するリーグがある。フットサルの全国リーグ「Fリーグ」の2018-2019シーズンが6月16日に幕を開けるのだ。昨季のFリーグを制した名古屋オーシャンズ 2007年に始まり、12シ…
サッカーのワールドカップが開幕した直後に、日本国内で開幕するリーグがある。フットサルの全国リーグ「Fリーグ」の2018-2019シーズンが6月16日に幕を開けるのだ。
昨季のFリーグを制した名古屋オーシャンズ
2007年に始まり、12シーズン目の開幕を迎えるFリーグは今季、大きく変化した。2ディビジョン制となり、ディビジョン1(F1)に12クラブ、ディビジョン2(F2)には8クラブが所属する。レギュラーシーズン終了後にはF1参入プレーオフも開催されることになっており、より競争力が高まることが期待される。
6月30日に開幕するF2に所属するのは、トルエーラ柏、Y.S.C.C.横浜、ボアルース長野、ヴィンセドール白山、デウソン神戸、広島エフ・ドゥ、ポルセイド浜田、ボルクバレット北九州の8クラブだ。Jリーグを見る人にとっては、「Y.S.C.C.横浜」というクラブ名は聞き覚えがあるかもしれない。J3を戦うY.S.C.C.横浜のフットサルクラブであり、F1に所属する湘南ベルマーレに続くJクラブの参入となった。
今後、J3でプレーする選手がFリーグの舞台でも見られることになるかもしれないが、現時点ではサッカーとは別の選手たちがプレーすることになっている。そのなかには、2008年にタイで開催されたフットサルW杯に日本代表として三浦知良とともに出場した稲葉洸太郎もいる。国内外で蓄積された豊富な経験を、どうチームに落とし込んでいくか注目だ。
過去にFリーグを見たことのある人は、「デウソン神戸」という名前にも覚えがあるかもしれない。Fリーグ初年度に3位となったクラブだ。しかしその後、経営的に厳しい状況に陥り、昨シーズン中に新シーズンからのディビジョン2への自主降格をリーグに申し出た。
この決定はGMの独断だったこともあり、選手たちは次々と退団。最終的に2017-2018シーズンを戦った選手は、わずかふたりしかクラブに残留しなかった。新たに選手を集め直し、ほとんどゼロからの再出発となるクラブがF1復帰へどのようなストーリーを描いていくか、興味深いところだ。
ただ、2ディビジョン制とはなったが、仮に今季F2リーグ戦やF1参入プレーオフを勝ち抜いても、実はほとんどのクラブは来季F1に参入することができない。リーグのF1参入プレーオフの大会要項には「2試合を開催し、勝利チームがFリーグディビジョン1に残留または昇格する。ただし、昇格するチームにF1クラブライセンスが付与されていない場合、F1チームが残留する」と記されている。このF1クラブライセンスの基準を満たしているのは、ボアルース長野とデウソン神戸の2クラブのみだという。そのため、この2クラブ以外がF1参入プレーオフを勝ち抜いても、入れ替えは起こらないのだ。
とはいえ、ほとんどのF1クラブも経営面で苦労をしているのが現状だ。多くの人たちを巻き込み、新たな自分たちの本拠地となるアリーナを見つけられるくらいでなければ、「第2のデウソン神戸」となってしまう可能性も高い。その神戸を含め、特に初年度のF2を戦う8クラブは日本のフットサル界を活性化させるカギを握っているだけに、ピッチ内外でどのような活動をしていくかに注目したい。
話を16日に開幕するF1に戻そう。デウソン神戸の自主降格があったF1だが、今季も日本の最高峰リーグは12クラブで競われる。デウソン神戸の抜けた穴を埋めたのは、「Fリーグ選抜」だ。このクラブは、F1の各クラブから出場機会を得られていない20代前半の選手をリーグが集めて結成した、いわば寄せ集めのチームだ。
交代が自由にできるという競技の特性もあって、フットサルは30代後半の選手であってもチームの主軸を担うことができる。そのため、クラブが意識的に世代交代に取り組まなければ新陳代謝は起きにくく、各クラブはなかなか若手を起用できなかった。その意味では、フットサル界全体にとっての救済措置ともいえる。
もちろん、各クラブで出場機会を得られなかった若手の集まりだから、F1で苦戦することは間違いないだろう。だが同時に、若い選手たちの潜在能力は侮れない。
2016年にはコロンビアでフットサルW杯が開催されたが、その直前にタイで「タイランド5s」という大会が開催された。タイ、イラン、カザフスタンがW杯メンバーで最後調整を行なった大会に、W杯の出場を逃した日本はU-20代表メンバーを中心としたチームで臨んだ。
そして、若い日本はカザフスタンに大敗したものの、開催国のタイとは引き分け、その後のW杯でブラジルを撃破して3位になったイランとも2-4の接戦を演じた。一戦ごとに成長する彼らを見ながら、このチームが継続的に戦えたら面白そうだなと感じたが、まさにそれが現実となった。
残念ながら、このチームは3位以内に入ってもプレーオフに進出することはできず、最下位になってもF1参入プレーオフに出場することもない(※)。それでも数年後、日の丸をつけて戦う可能性を秘める彼ら若手にとって、キャリアの中でも重要な1年となるのは間違いないだろう。
※Fリーグ選抜が最下位の場合は11位のクラブがF1参入プレーオフに出場する。
F1の優勝争いは、昨季タイトル奪還を果たした名古屋オーシャンズが中心になるはずだ。昨季のプレーオフでエースのラファが復帰まで1年を要する大ケガを負ったが、バルドラール浦安の象徴的存在だった日本代表FP(フィールドプレーヤー)の星翔太を獲得し、その穴を埋めた。名古屋は全Fリーグクラブが参戦した6月上旬のオーシャンカップを制して早くも今季1冠目を手にしているが、選手の入れ替わりが少なかったぶん、チームの完成度は高い。
名古屋の対抗馬となるのは、ペスカドーラ町田だろう。直近の2シーズン連続で準優勝に終わっている「関東の雄」は、2シーズン前に加入した森岡薫に続き、今オフにはシュライカー大阪からクレパウジ・ヴィニシウスを獲得。初代Fリーグ得点王の横江怜を含めて、得点王経験者が3人も揃うこととなった。さらに、ブラジルの全国リーグで優勝した経験を持つアウグストも加入し、戦力の充実度では名古屋に引けをとらない。
ほかにも、昨季大躍進した湘南ベルマーレ、タイトル奪還を目指すシュライカー大阪、自前のトレーニング施設を確保したフウガドールすみだ、スペイン人監督を招聘したバルドラール浦安、伊藤雅範監督を呼び戻してブラジル人3選手も獲得した昨季最下位のバサジィ大分と上位を狙うチームは多く、プレーオフ出場権を巡る争いは熾烈を極めそうだ。
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