コロンビア戦まで10日あまり。ゼーフェルト(オーストリア)で調整を続ける香川真司が置かれた立場は、日本で行なわれたガーナ戦のときからあまり変わっていない。 練習では、フォーメーションにもよるが、2列目のどこかのポジション、左MFやトッ…
コロンビア戦まで10日あまり。ゼーフェルト(オーストリア)で調整を続ける香川真司が置かれた立場は、日本で行なわれたガーナ戦のときからあまり変わっていない。
練習では、フォーメーションにもよるが、2列目のどこかのポジション、左MFやトップ下で宇佐美貴史や本田圭佑の控えとしてプレーしている。ガーナ戦前の練習では多少はあった、主力と思われるグループに入っての戦術練習なども、ゼーフェルトに入ってからは行なっていない。
スイス戦前日は、コンディション調整のためか長くピッチに残り、ランニングなどを行なった様子だ。ロッカールームから出てきたのは、ほぼ最後だった。先発争いという意味では、状況はまだまだ厳しいと言わざるを得ない。
ゼーフェルトでの合宿中、笑顔を見せる香川真司
4月にドルトムントへ視察に訪れたときから、西野朗監督の香川についてのコメントは慎重すぎるほど慎重なものだった。負傷は「選手生命を左右するもの」とさえ言った。一方で香川は「そんな大げさなものではない」と説明していた。
負傷の程度について正確なところはわからないが、指揮官がまだまだ香川のコンディションに満足していないのは確かだろう。先発組に入るのは基本的には90分の出場が前提となる。そこまで回復してはいないと見られているのだろう。
それでもゼーフェルトに入ってからの香川はとても前向きだ。状態そのものもけっして悪くはなさそうだ。そして香川の場合、状態がよさそうなときは、けっしてカラ元気などではなく、実際にいいプレーを見せることが多いのも事実である。
控え組にまわることが多いことについて聞かれると、強い口調でこう答えた。
「そこは正直、わからない。どっちにしろ、常にいい準備をして、いいプレーができるようにと言い聞かせています」
そして、個人よりもチームを優先しているとでも言いたげに、やんわりと話をシフトする。
「あと2試合あるので、そこでチームとして一番いい形ができれば、ベースもできてくると思います。まだできていないところがあるので、試合を通して自信、手応えが感じられればいいと思います。この2試合は本番をイメージしながらプレーしていきたいです」
「スイス戦のテーマを守備」と話す選手が多いなかで、香川は「守備も攻撃も、だ」と強調する。
「個人個人が自分のタイミングで動き出すことは大事ですけど、そこにチームが連動しないと、崩しにかかるときは難しい。そのコンビネーションがスイス戦も生命線になる」
ハリルホジッチ時代に比べ、あらゆる意味で自由度が増した今だからこそ、チームとして何をすべきかを模索しているのだろう。
香川が取材対応を行なった前日には、本田が
「トップ下は俺かシンジか」と話していることから、ポジションへのこだわりについても話が及んだ。要は、「本田の控えのようだが……」という意味の質問である。
「(ポジションへのこだわりは)特にないですね。左だろうが右だろうが真ん中だろうが、僕はどこで出ようが準備したい。それらのポジションはすべて経験しているので、どこで出ても問題はないと思っています。まあ、一番得意なのはトップ下ですが、それは監督が判断すること。ケイスケくんが出ようが、(自分が)途中から出ようが、そこはいいプレーができるように準備をするだけだと思います」
また、ベテランとしてのあるべき存在感については、「前回大会のドログバじゃないけど……」と話した。ディディエ・ドログバ(コートジボワール)といえば、前回ブラジルW杯の日本戦で、先制を許したあとに途中出場。若いメンバーを鼓舞して一気に流れを変えた。自身をそんなイメージに当てはめているようだ。
ガーナ戦前、「香川は大丈夫かという論調についてどう思うか」と問われ、「逆にどう思います?」と気色ばんだときに比べると、だいぶ落ち着きを取り戻したように見えた。
スイス代表には、GKロマン・ビュルキ、DFマヌエル・アカンジといったドルトムントのチームメイトをはじめ、ドイツ・ブンデスリーガでプレーする選手が多い。FIFAランク6位の相手とはいえ、香川個人にとってはけっして”格上”ではなく、負けるわけにはいかない一戦でもある。