「アイツがいるといないではチームが大きく変わる」と対戦相手に言わせる男。(撮影/松本かおり) タフな戦いになる。そう言ったキャプテンは、会見の場でもピッチ上と同様に冷静なままだった。 スコットランド代表が来日し、6月14日、都内のホテルで…

「アイツがいるといないではチームが大きく変わる」と対戦相手に言わせる男。
(撮影/松本かおり)


 タフな戦いになる。そう言ったキャプテンは、会見の場でもピッチ上と同様に冷静なままだった。
 スコットランド代表が来日し、6月14日、都内のホテルで記者会見を開いた。抜群のリーダーシップでチームを束ねるSH、グレイグ・レイドロー主将は日本代表のカナダ遠征での試合やスーパーラグビーでのサンウルブズの試合を「見ている」と言い、「よく展開するのが日本ラグビー。スーパーラグビーで必要とされたものを我々にもぶつけてくるでしょう。はやいテンポで攻めてくるはず。カナダ戦ではレッドカードもあったし、怪我人も出たので、その穴を埋めるための変更があるのではないでしょうか」と予備知識が豊富にあることを感じさせた。

 昨年のワールドカップで日本代表が唯一敗れた(10-45)スコットランドは、今年のシックスネーションズでは2勝3敗の成績だった。しかし、敗れた試合も粘り強く戦ったものばかり。ワールドカップの準々決勝でオーストラリアに(レフリーの微妙な判定によって)惜敗した力は、さらに高まっていると思っていいだろう。ワールドカップの日本代表戦で2トライを挙げたマーク・ベネット(リオ五輪全英代表活動に集中)、同試合で先発したSOフィン・ラッセル(怪我)、巨漢WTB『フライング・ダッチマン』ことティム・ヴィサー(怪我)は不参加も、ワールドカップ、シックスネーションズを戦ったベストメンバーがほぼ来日した。

 レイドロー主将は1989年に日本代表が来日したスコットランド代表に勝った(28-24)試合について「その試合が行われたとき(自分は)まだ4歳で見ていないし、その後も見たことがないが知っています」と話した。豪州遠征中だったブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに数名の選手を送り込んでいた背景もあり、スコットランド協会は同チームを『スコットランドXV』としてノンキャップ試合としているものの、同国ラグビーの歴史の中で苦い思い出として刻まれているのは確かだ。
「今回のツアーメンバーは、代表チームに選ばれたことを誇りに戦います」
 時差ぼけや暑さへの対応はまだ未知数と話すも、あざみのエンブレムを胸に抱く意味を深く理解して戦いに挑む気持ちを表わした。

 ワールドカップ時の日本代表戦で4コンバージョン、4PGと20得点。桜のジャージーを突き放す立役者となったキャプテンは言った。
「あのときと(メンバー構成が)あまり変わりないチーム同士の対戦となりますが(以前の結果と関係なく)油断はできないと思っています。あの試合、最初はスローな展開でしたが、途中から私たちがテンポを上げてパフォーマンスがよくなった。40点以上の得点、相手を10点以下に抑えたのだから意義ある試合だったと思っています」
 今回の2テストの意義を「文化の違うところへチームで向かうのは有意義なこと。ワールドカップ以降、私たちがどれだけ伸びたかを知る指標にもなるでしょう。また2019年には日本でワールドカップもある。ここに遠征して戦うということがどういうものか、と体感できるのも今後につながると考えています」と話す表情は、終始淡々としていた。
 この落ち着きがピッチ上で大きな武器となる。日本代表にとっては、いちばんの要注意人物だ。