専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第158回 今回はまず、アメリカの人気スポーツであるPGAツアーとMLB(メジャーリーグ)のテレビ中継について考察してみたいと思います。 というのも、最近はNHK BS1のスポ…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第158回

 今回はまず、アメリカの人気スポーツであるPGAツアーとMLB(メジャーリーグ)のテレビ中継について考察してみたいと思います。

 というのも、最近はNHK BS1のスポーツ放送に夢中になっていて、特にMLBの大谷翔平選手(エンゼルス)が出場する試合が始まると、仕事そっちのけで観戦しているからです。

 こうやって、海外のスポーツ中継を頻繁に見るようになったのは、いつ頃からでしょうか。

 最近だと、MLBのダルビッシュ有選手や田中将大選手、PGAツアーなら松山英樹選手の活躍ですか。昨年までは、週末に松山選手の姿を追いかけて、残った日にダルビッシュ選手か、田中選手の登板を見ていたような気がします。

 けど、過去のBSのスポーツ中継において、私自身が最も盛り上がっていたのは、なんと言ってもタイガー・ウッズ選手の活躍です。タイガーがドライバーでかっ飛ばすと、割れんばかりの大声援が沸き起こりますからね。そのうえ、ロングホールで2オンのボールをベタピンにつけたり、30ヤードの難しいアプローチを多彩な技術でカップインさせたりと、ミラクルの連続でしたから。

 要するに、MLBやPGAツアーで興奮するのは”ミラクル”が起きているときなのです。

 そう考えますと今年、大谷選手のMLBでの”二刀流”はまさしくミラクルです。

 投げては、時速160km台のストレートと一級品の変化球で、名うてのメジャーリーガーをなで斬り。打っては、メジャー有数の投手を相手に3割近い打率をマーク。なおかつ、ホームランを何発も放っています。

 MLBファンは、投手で10勝、打者で本塁打10本という、往年の”二刀流”ベーブ・ルースが記録して以来、100ぶりの快挙達成を見届けて、その興奮に酔いしれたいのです。

 というわけで、日本で人気のアメリカのメジャースポーツ、MLBとPGAツアーの見どころを検証しつつ、日本の国内ツアーの現状などにも迫ってみたいと思います。

(1)スターあっての観客動員
 MLBとPGAツアー、どっちがすごいか? という比較をする前に、ちょっとMLBの観客動員数を見てみましょう。

 やはり、重要なことはスター選手がいること。シーズン序盤、大谷選手が活躍しているエンゼルスの観客動員数は、アメリカンリーグ1位でした。昨年は7位だったのですが、”大谷効果”恐るべしです。

 もちろん、試合の勝ち負けは大事ですが、おそらくエンゼルスは球団の経営的にはすでに黒字。大谷選手のおかげでボロ儲け状態です。

(2)感情移入できる選手がいるかどうか
 スター選手であれば、かつて活躍したスターであっても、昔のよしみなのか、全盛時の幻を追うのか、同じ時代を戦ってきた(生きてきた)”同志”という意味もあって、多くの人が応援します。今なら、中日ドラゴンズの松坂大輔投手なんか、そのいい例でしょう。

 メジャーであれだけ活躍した選手なのに、日本に帰ってきてからは、泣かず飛ばず。もはや引退か? という矢先に復活の1勝。これが、日本での12年ぶりの勝利って、松坂世代のオジさんたちは、涙腺崩壊ですよ。

 同様に、PGAツアーを見るゴルフファンにとってたまらないのは、タイガーの復活でしょう。

 先日、日本ツアーの日本プロ選手権においても、50歳の谷口徹選手が優勝。ゴルフでは、パワーが多少衰えても、巧みな技術で補えます。

 そんな谷口選手の姿を見るにつけ、タイガーの復活優勝も時間の問題――そう思って、PGAツアーを見ているファンは多いと思います。ゴルフはシニアツアーもありますし、まだまだ大いに楽しめます。

 ちなみに、感情移入と言えば、女子プロを応援するファンもそうでしょう。やはり男性ファンが多いのですが、彼らが、きれいで、上手な女子プロに感情移入するってことです。オジさんの理想の娘なのか、嫁なのか知りませんが、感情移入度としては、男子プロよりも大きいかもしれません。

(3)PGAツアーは松山選手の活躍次第
 さて、気になるPGAツアーの中継ですが、最近は松山選手が優勝争いに加わることが減ってきて、ぼんやり見ていました。

 それでも先日、TPCソーグラスで行なわれていたプレーヤーズ選手権では、”名物ホール”17番(パー3)のアイランドグリーンの攻防を見ながら、あんぐり。あそこでティーショットを打つのは、たとえプロでも生きた心地がしないでしょうね。

 だいたい1試合で30~40個のボールが池ポチャするって、ありえないですよ。そんなですから、昔ここで優勝した選手が、設計したピート・ダイに向かって「よくも苦しめたな」と言って、池に道連れダイブをしたことがあるそうです。選手の気持ちがよくわかりますなぁ~。

 ともあれ、PGAツアーでの楽しみは、なんと言っても松山選手の活躍。もちろん、松山選手が上位に絡まなくても、PGAツアーにはロリー・マキロイやダスティン・ジョンソン、ジョーダン・スピース、リッキー・ファウラーなど、ナイスガイはたくさんいます。そうした選手たちのプレーも見応えがあるのですが、やはり日本人目線で言えば、そんな彼らを、松山選手が接戦の末にやっつける――そういうシーンを見て楽しみたいのです。

 ぜひとも、松山選手の復調を期待しております。



MLBでもPGAでも、期待するのは日本人選手の活躍なんですよね

(4)日本男子ツアーの現状
 MLBとPGAツアーの話から離れて、日本の男子ツアーについてもちょっと触れたいと思います。

 今年の日本男子ツアーにおいては、やはり”スーパースター”石川遼選手の復帰が大きいかと思います。

 石川選手は、ツアー最年少優勝記録を塗り替えてから、最年少賞金王にも輝いて……と、今で言うなら、将棋の藤井聡太7段ぐらいの「天才、あらわる!」だったのです。

 彼の栄光とブランドを傷つけてはいけません。向き、不向きがあるので、必ずしもPGAツアーにこだわる必要はないのです。日本ツアーのチャンピオンになって、たまに海外メジャーなどに参戦してくれればいいです。

 現状、日本ツアーにおいてのスターは、石川選手のみ。さすがに一枚看板ではしんどいです。

 谷口選手には誠に申し訳ないのですが、もっと若い人がメジャー大会で勝たないと。それだけ、日本のレギュラーツアーは人材不足ということです。

(5)野球とゴルフ、どっちが面白い?
 最後に日米を問わず、単純に野球とゴルフ、どっちが見ていて面白いかっていう話をしましょう。

 答えは明快。野球です。

 それは、最高潮に興奮するポイントがわかりやすいからです。「ツーアウト満塁、バッター大谷」とかね。

 スタジアムという興奮を共有するつくりも、ハイテンションになりやすいです。

 先に触れたTPCソーグラスは、最後に「スタジアム」と付けるのが正式な名称だそうです。つまり、野球のスタジアムのように盛り上がれるコースづくりを目指したのです。

 ゴルフで、野球を超える興奮を与えてくれたタイガーは、ある意味、異次元のスーパースターだったのかもしれません。

 我々はゴルフの試合を見ているとき、応援する選手のいない場合、”勉強のふり”をして見ます。「うまいアプローチだな」なんて言って、あたかも自分が次のラウンドで使えそうなことを言うから笑えます。それは、大きな勘違いなんですけどね。

 でも、ゴルフファンの多くは、自らプレーしている人が多いです。中途半端にゴルフをかじり、生半可な情報を得ている人が多いので、よく言えば目が肥えています。悪く言えば、ひねくれていて、選手が素晴らしいプレーを見せても、素直に喜ぶことができません。

 アメリカ人の底抜けに陽気な応援、あれは称賛と尊敬に値します。そんな応援をしたくなる、日本人のスーパースターが、ゴルフ界に現れないですかね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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