「ポーランド人にとって日本戦は、まだだいぶ先の話。いまは国中が初戦のセネガル戦に集中している。何しろポーランドは本大会に出場した直近の2大会(2002年日韓、2006年ドイツ)では、最初の2試合でグループリーグ突破の可能性がなくなってし…

「ポーランド人にとって日本戦は、まだだいぶ先の話。いまは国中が初戦のセネガル戦に集中している。何しろポーランドは本大会に出場した直近の2大会(2002年日韓、2006年ドイツ)では、最初の2試合でグループリーグ突破の可能性がなくなってしまったからね。

 もちろん、第3戦の日本戦が決勝トーナメントに進出できるか否かを決める大事な一戦になることは理解している。ただ、申し訳ないけど、ポーランドの多くの選手は初戦で日本と当たりたかったと残念がっている。ポーランド国内ではグループHで日本が一番弱いという認識があるのは事実なんだ」

 そう話すのは、ポーランドのスポーツWEBサイト「SPORT.PL」でポーランド代表の取材を続けるセバスチャン・スタスゼウスキ記者だ。

 ロシアW杯グループH第3戦で日本とポーランドは対戦する(6月28日・ボルゴグラード)。ポーランド国内では、日本は絶対に負けられない相手と見られているという。



ロベルト・レバンドフスキ(中央)らポーランド代表は国内で合宿中

「たとえ何があろうと日本には勝つと、ポーランド中が期待している。自分たちにも多少の問題があるのはわかっているが、もし優勝を夢見るなら勝たなければならない。もし日本がポーランドから勝ち点1でも挙げたいなら、相当いい守備をする必要がある。

 ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)だけを抑えようとしているなら痛い目にあうだろう。アルカディウシュ・ミリク(ナポリ)やカミル・グロシツキ(ハル・シティ)も得点力豊かな選手だということを覚えていたほうがいいだろうね」

 もともとポーランド国内での日本の評判は高くないようだが、スタスゼウスキ記者は3月の日本対ウクライナ戦を取材し、その後ハリルホジッチ前監督が解任されたことで、その思いは一層確かなものとなったという。

「ハリルホジッチ前監督の解任のニュースにはポーランドでも衝撃が走った。W杯2カ月前の監督解任がチームにとってプラスに働くとは思えないし、ポーランドサポーターの多くが喜んだことも間違いない。ハリルホジッチの解任につながったというチームの雰囲気の悪さはゴシップ記事としてポーランドにも伝わってきた。

 実際に最近の日本は調子がよくないようで、私自身もウクライナ戦を見て感じた。ウクライナは2年前のユーロ2016でポーランドに0-1で敗れたチームだ。そのウクライナに日本は相当苦戦していた。そのことから、ポーランドでは日本を圧倒できるだろうという空気が強まったといえる。

 ポーランドではドイツのブンデスリーガがよくテレビで見られているため、香川真司や大迫勇也、長谷部誠のことはみんな知っている。日本の選手にはサムライのスピリットがあり、最後まで決して諦めない戦いをしてくるのもわかっている。だが、総合的に見ればポーランドの優位は動かない」

 ブンデスリーガで活躍する日本人選手はよく知られている一方で、日本代表についてはそれほど知られていないという。

「ましてウクライナ戦後に監督交代があったわけだからね。新監督が、昨年までポーランドのシロンスク・ヴロツワフでプレーし、その後(ワースランド=ベフェレンを経て)アンデルレヒトに移籍し、ベルギーリーグで屈指のスターとなったMF森岡亮太をメンバーから外したのは大きな驚きだった。その他の選手については多くの情報はないし、いまだにポーランドで最も有名な日本人選手といえば中田英寿だからね(苦笑)」

 もちろん、ポーランドにも不安がないわけではない。スタスゼウスキ記者はその準備状況についてこう話す。

「ロシアW杯に向けた32名の予備登録メンバーにはFWレバンドフスキ、GKボイチェフ・シュチェスニ(ユベントス)、DFカミル・グリク(モナコ)、ルーカス・ピシュチェク(ドルトムント)らおなじみのメンバーに加え、20歳のMFシモン・ジュルコフスキ(グールニク・ザブジェ/ポーランド)や19歳のセバスティアン・シマンスキ(レギア・ワルシャワ)が入ったが、裏を返せば、アダム・ナバウカ監督には選択の余地があまりなかったということだろう。

 また、ユーロ2016の前とは対照的に、指揮官は調子のいい選手だけに頼れる状況でもない。MFグジェゴシュ・クリホビアク(WBA)とGKルカシュ・ファビアンスキ(スウォンジー)はプレミアリーグで降格を味わい、MFヤクブ・ブワシュチコフスキ(ヴォルフスブルク)は何カ月もケガに悩まされてきた。

 また、DFミハウ・パズダン、アルトゥール・イェンドジェイチク、MFクリストフ・マチニスキといった、ユーロ2016の主力だったレギア・ワルシャワの面々も、ケガなどがあってかなり調子を落としている。大会有数のストライカーであるレバンドフスキは健在だが、主力にはベテランも多く、コンディションに不安を抱えている選手がいるのは確かだ」

 ポーランドと日本の過去の対戦をひも解けば、1996年には香港で5-0、2002年にはウッチ(ポーランド)で2-0と、いずれも日本の勝利に終わっている。もちろん、今回のポーランドは組分けでもポッド1に入るなど、過去に日本が対戦したポーランドとは違う。

 ただし、ポーランド国内でさえ、自国の代表チームが過大評価されているという自覚はあり、シード国とはいえ、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、フランスのような過去に優勝経験のある絶対的な強国ではない。

 第3戦は、それぞれの置かれた状況によって戦い方も変わってくるだろう。ポーランドの主力と控え選手のレベルの差は大きく、たとえばレバンドフスキが欠場するようなことがあれば、戦力の大幅ダウンは否めない。そうなれば、日本の戦い方次第では何が起きても不思議ではないだろう。