J2第17節、町田ゼルビアは愛媛FCをホームに迎え、2-1で勝利した。 立ち上がりから主導権を握りながらも、先制を許す嫌な試合展開だったが、前半のうちに同点に追いつくと、後半に勝ち越し。鮮やかな逆転勝ちだった。 町田は前節、同じくホー…
J2第17節、町田ゼルビアは愛媛FCをホームに迎え、2-1で勝利した。
立ち上がりから主導権を握りながらも、先制を許す嫌な試合展開だったが、前半のうちに同点に追いつくと、後半に勝ち越し。鮮やかな逆転勝ちだった。
町田は前節、同じくホームにファジアーノ岡山を迎えた一戦で、1-3と敗れていた。町田の相馬直樹監督曰く、「時間帯は違うが、(愛媛戦同様)自分たちのリズムで試合を進めながら、(得点を)取り切れずに先制された」試合は、その後、立て続けに追加点を許し、完敗に終わった。
だが、今節の愛媛戦では「前回を教訓に、失点後、崩れなかった」と相馬監督。決勝ゴールとなるPKを決めたFW鈴木孝司も「前節と同じ過ちを繰り返さないよう、いい準備をしてきた」と胸を張る。
これで、町田は勝ち点を29に伸ばし、首位の大分トリニータとは勝ち点5差の4位。あと4節でシーズンの折り返し地点を迎えるという現在、優勝にも手が届きそうな好位置につけている。
現在4位と好調な町田ゼルビア
思えば、町田はJ2再昇格1年目だった一昨季にも、同じように好スタートを切っている。第17節終了時点の成績で比較すると、順位は同じ4位ながら、勝ち点31は今季の数字を上回っていた。
だが、相馬監督は「(昇格1年目の)最初の勢いで、と言ったらアレですが、相手も初対戦ではナメてくれていたところがあった」と自嘲気味に振り返り、こう続ける。
「でも、今はどのチームも、うちとのゲームでは(いつもの戦い方とは)まったく違うゲームをしてくるケースが多い。それくらい相手にきちんと対策を練られたなかでも、これだけ勝ち点を積んでこられているというのは、いろんなことが整理できているからだと思う」
決して町田は、J2の中で他を圧倒する戦力を備えているわけではない。だからこそ、自分たちができることは何か。何がどうなったら、難しい戦いになるのか。そうしたことをきちんと整理して試合に臨むことによって、「勝つ方法、勝ちに近づく方法を、ある程度チームで共有できている」(相馬監督)。勝ち点でこそ一昨季の同時期を下回るものの、当時はなかった手応えを、はっきりと指揮官はつかんでいる。
しかし、だからといって、町田が着実にJ1昇格へ近づいているかというと、ことはそれほど単純ではない。
というのも、町田はJ1昇格に必要なライセンスを有していない(ホームスタジアムや練習場などの施設が必要な条件を満たしていない)からだ。
つまり、町田は今季J2を何位で終えようと、現状においては自動昇格することも、プレーオフへ進出することもできない。ある意味においては、J2を戦ううえで唯一無二とも言える目標を持ちえない町田は、高いモチベーションを保ってシーズンを戦うことが最も難しいチームだと言えるかもしれない。
好調だった一昨季にしても、最終的にプレーオフ進出圏外の7位に終わったのはモチベーションに差があったからだと見るのは、あまりに意地の悪い見方だろうか。
とはいえ、現実から目を背けても話は前に進まない。相馬監督は目の前の事実は事実として受け止めたうえで、「6位以内」という目標を掲げ、選手とともにその達成を目指している。
なぜ6位以内なのか。
もちろん、それがJ1昇格のための最低基準(J1昇格プレーオフ進出圏内)であることがひとつの理由ではあるが、単なる”目安”で、それが掲げられているわけではない。
指揮官が言う「6位以内」が意味するものは、「J1にチャレンジするにふさわしいチームになっていこう」ということであり、「J1のスタンダードに少しでも近づこう」ということだ。相馬監督は厳しい現在の状況についても、「自分たちが近い将来J1へ上がったときに、まったく歯が立たなかったではなく、少しでも爪痕を残したり、継続して残留したりできるようなベースを作る時間をもらっていると思っている」と、前向きにとらえる。
もちろん、長い目で見れば見るほど、「ベテランの選手たちなんかは、本当に自分がJ1で戦えるかどうかわからない」という現実もある。それでも、「彼らは、そのための礎(いしずえ)を作るという気持ちを持ってやってくれていると思う」と、相馬監督は語る。
実際、名古屋グランパスから期限付き移籍で今季新加入したMF杉森考起は、「(ベテランの選手から)アドバイスもしてもらえるし、プレーしやすい。チームの目標である6位以内にいるので、雰囲気はすごくいい」と口にする。
相馬監督もまた、頼もしい選手たちをこう言って称える。
「あまり先のことを言うと目の前のことが見えなくなってしまうので、とにかく一戦一戦、少しでもJ1のスタンダードに近づけるようにやっていきたいし、選手たちがこれだけがんばってくれているのは、その気持ちを共有してくれているからだと思う」
自分たちの実力とは別の理由でJ1昇格を阻まれたまま、先の見えない戦いを続けることは決して簡単ではないだろう。だが、どうせオレたちは昇格できないからと、すねたり嘆いたりするよりも、ずっと健全かつ前向きな姿勢だと思う。