NBAプレーオフ2018ファイナル展望 シードも違う、ロスターも違う。戦力の均衡を図る厳密なサラリーキャップが設定され、ドラフトは前シーズンの下位チームが優位なウェーバー方式。それでも、この2チームは4年連続でNBAファイナルの舞台で相…

NBAプレーオフ2018ファイナル展望

 シードも違う、ロスターも違う。戦力の均衡を図る厳密なサラリーキャップが設定され、ドラフトは前シーズンの下位チームが優位なウェーバー方式。それでも、この2チームは4年連続でNBAファイナルの舞台で相見(あいまみ)えることとなった。



レブロン・ジェームズは圧倒的不利な状況を覆せるか

 イースタン第4シードから勝ち上がったクリーブランド・キャバリアーズ(50勝32敗)は、アップダウンを繰り返し、今年もファイナルにたどり着いた。

 ファーストラウンドは第5シードのインディアナ・ペイサーズ(48勝34敗)を4勝3敗で下し、カンファレンス・セミファイナルは第1シードのトロント・ラプターズ(59勝23敗)をスウィープ(4連勝)で退けた。

 カンファレンス・ファイナルは第2シードのボストン・セルティックス(55勝27敗)を相手に連敗スタート。しかも初戦を25点差、第2戦を13点差と、大差で敗戦を喫してしまう。その後ホームに戻った2試合で連勝し、どうにか2勝2敗に戻したものの、第5戦でふたたび星を落とし、セルティックスに王手をかけられる。

 後がない第6戦。開始5分でケビン・ラブ(PF)が脳震盪(しんとう)を起こしてコートを去り、キャブスは絶体絶命のピンチに……。しかし、チームを救ったのは、やはりレブロン・ジェームズ(SF)だった。46分の出場で46得点・11リバウンド・9アシストという驚愕のプレーで勝利を掴み取ってみせる。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 第7戦――。舞台は今プレーオフ、セルティックスが無敗を誇るホームのTDガーデン。脳震盪の影響でラブはこの試合も欠場となり、キャブスのピンチは続く。

 しかし、満身創痍のはずのレブロンは、タイロン・ルー・ヘッドコーチにフル出場を直訴。無謀にも思えるフル出場だったが、レブロンは48分間出場を続け、35得点・15リバウンド・9アシストを記録する。

 なかでも試合残り1分の速攻では、ファウルで止めようとレブロンの両肩に背後から手をかけるマーカス・モリス(PF)を引きずりながらレイアップを沈めてみせる。もはや、その姿はモンスターだった。最終スコア87-79でセルティックを下し、キャブスは4年連続のファイナル進出を決める。

 試合後の会見で、レブロンは「ファイナルで勝てるかどうかはまだわからない」と語るにとどめている。しかし、これでレブロン自身は2011年から8年連続、通算9度目のファイナル進出――。4個目のチャンピオンズリング獲得を狙うこととなった。

 一方、ウェスタン第2シードのゴールデンステート・ウォリアーズ(58勝24敗)は、第7シードのサンアントニオ・スパーズ(47勝35敗)、第6シードのニューオーリンズ・ペリカンズ(48勝34敗)を、ともに4勝1敗で危なげなく撃破する。

 カンファレンス・ファイナルでは、第1シードのヒューストン・ロケッツ(65勝17敗)と対戦。「事実上のファイナル」と呼ばれた今シリーズは、ロケッツが3勝2敗で先に王手をかけた。

 しかし、第5戦でクリス・ポール(ロケッツ/PG)が右ハムストリングを痛め、第6戦と第7戦の欠場を余儀なくされると、流れは一気にウォリアーズへと傾く。ウォリアーズも左足負傷のアンドレ・イグダーラ(SF)が第4戦から欠場するも、3年目のケボン・ルーニー(PF)が堂々のプレーでその穴を埋めてみせた。

 できることなら、両チームとも万全の状態での決着を見てみたかったが、ポールを欠くロケッツはジェームズ・ハーデン(SG)が奮闘するものの、第6戦、第7戦ともに後半になって失速。ウォリアーズが4年連続でファイナル進出を果たした。

 4年連続の対戦、果たして今季の勝者は――。そんな安易な一文を書く気にはなれない。

 ウォリアーズ「1.10」/キャブス「7.50」

 これは、イギリスのブックメーカーがつけたオッズだ。ウォリアーズ有利は誰の目にも明らか。ちなみに対戦成績の予想でもっともオッズが低かったのは、「ウォリアーズの4勝1敗」で2.50倍。続いて、「ウォリアーズの4勝0敗」の3.25倍だ。

 過去3年間のファイナルの対戦成績は、ウォリアーズの2勝1敗。

 数字的には拮抗して見えるが、キャブスが第7戦までもつれた末に勝利した2016年は、ウォリアーズが3勝1敗で早々と王手をかけたものの、ドレイモンド・グリーン(ウォリアーズ/PF)が累積フレグラントファウルによって出場停止になった第5戦をキャブスが勝利し、シリーズの流れを手繰り寄せたことで奇跡の3連勝を成し遂げた。もしグリーンの出場停止がなければ、ウォリアーズが過去3年のファイナル対戦成績を3戦全勝としていた可能性は高い。

 しかも、ケビン・デュラント(SF)が加入した昨季はウォリアーズが完勝している。昨季のファイナルで平均29.4得点を記録し、キャブスの得点源だったカイリー・アービング(ボストン・セルティックス/PG)は、すでにチームを去った。休養中のラブはシリーズ中の復帰が濃厚と言われているが、それがいつになるかはわからない。ただでさえウォリアーズが戦力で勝(まさ)るのに、キャブスにはマイナス要素が多すぎる。

 唯一、キャブスが勝利する可能性があるとしたら、2016年ファイナルMVPのレブロンが2017年ファイナルMVPのデュラントとの「MVP対決」で圧倒することくらいか。ウォリアーズは「レブロンストッパー」となるはずのイグダーラの復帰時期が不明で、レブロンにデュラントがマッチアップする回数は増えるはず。パワーではレブロンが勝り、高さとシュート力ではデュラントに分があるが……。

 第4シード以下のチームがファイナルを制したのは、アキーム・オラジュワンとクライド・ドレクスラーを擁し、第6シードながら優勝した1995年のヒューストン・ロケッツまでさかのぼらなければならない。脳内でいくつもの「たら・れば」な妄想を展開してみるが、どう転んでも熱狂的なキャブスファン以外はウォリアーズの優勝を予想するだろう。

 ただし、レブロンが想定以上のバケモノであったら、もしかして……。予定調和の破壊こそ、スーパースターの使命なはず。

 泣いても笑っても、あと4つ白星を積み重ねたチームが今シーズンのチャンピオンだ。いよいよ、NBAファイナルの幕が開く――。