日本代表の真の10番は誰なのか。西野ジャパンの初陣であるガーナ戦で、香川真司はそれを証明しなくてはならない。10番を与えられてはいるが、いまもW杯メンバーは競争の最中であり、ザックジャパン以来、10番を背負ってきた香川も本大会のメンバ…

 日本代表の真の10番は誰なのか。西野ジャパンの初陣であるガーナ戦で、香川真司はそれを証明しなくてはならない。10番を与えられてはいるが、いまもW杯メンバーは競争の最中であり、ザックジャパン以来、10番を背負ってきた香川も本大会のメンバー入りが保証されているわけではない。
 ガーナ戦の前日練習後、

「香川真司は大丈夫なのか、という声もあるが?」という質問に「逆にどう思います?」と聞き返すシーンがあった。質問者は「いや、いいと思いますけど」と返したが、そう言うしかなかった。それを受けて香川が続けた。



日本代表の合宿、ランニングで汗を流す香川真司

「個人としては問題ないと思っている。いろいろな見方があるので、それは自由ですけど。ただ、集中しなきゃいけないのは自分自身で、自分自身がどう感じるかを問いただしてやっていきたいと思います」

 その表情は、笑顔こそないが、毅然としつつ自然体だった。かつてチームメイトが「真司は顔を見ればその日の調子がわかる」「練習のワンタッチに調子が出る」と言っていたほど、自分の状態を隠し切れないのが香川である。そうだとすると、それほど悪い状態ではないのだろう。

 とはいえ、記者にそんな質問をさせてしまうような状況にあるのは間違いない。

 今回の合宿で西野朗監督がテストしている3-4-3のシステムの練習で、香川はサブ組にまわった。3トップの両サイドはワイドに開くのではなく、シャドー気味に1トップに近い位置でプレーする。香川にとってはもっとも特長を活かせるシステムのひとつだが、主力と思われる組でプレーしたのは香川ではなく、宇佐美貴史だった。宇佐美は西野監督の愛弟子でもある。

 香川は2月の負傷から、ほとんどプレーをしていない。ドルトムントではベンチ入り1回、出場はブンデスリーガ最終節の15分間のみだ。厳しい状況であることは間違いない。しかも、直近の2回の日本代表欧州遠征ではメンバーから外れている。昨年11月は不調が原因、今年3月は負傷と、それぞれ理由は違うものの、ハリルホジッチ監督のままであれば、この段階でメンバーに入っていたかどうかも危うかった。

 香川が活きるか活きないかは、監督やシステムとの相性によるところが大きい。どの監督のもとでも活躍してきたわけではなく、極端に能力を発揮できる場合とそうでない場合がある。

 今季のドルトムントでのプレーを見てもそうだ。開幕当初に指揮を執っていたペーター・ボス監督のもとでは目立った活躍もなく、控えに甘んじていた。ところが監督がペーター・シュテーガーに代わると、一気にチームの救世主に転じた。その落差が激しいのが問題ではあるのだが、要するにハマればピカイチなのだ。

 活かすも殺すも監督次第。西野監督はそんな香川のケガを「選手生命を左右する」と言い、起用に消極的な姿勢をにじませる。一方の香川は「そこまで重くない」と言う。このあたりの認識の違いがどうして生じているのかはわからない。

 ただ、香川としては、シュテーガーが指揮を執り始めた頃のイメージを持ったまま、ケガから今まさに復調しているということなのだろう。難しい状況ではあるが、”監督次第の選手”という現状を打破しなくてはいけないのかもしれない。

「この状況に、みんな前を向いて戦おうとしている。その姿をファン、サポーターに見せたいと思います。少しでも応援してくれる方が増えてW杯に向かえれば」

 香川はガーナ戦への意気込みをこう語った。見せるべきは「日本の10番は俺だ」という存在感だろう。