森保一監督不在の中でトゥーロン国際大会に乗り込んだU-21日本代表の初戦、トルコ戦は、悔いの残る結果となった。 三好康児(札幌)のゴールで先制点を奪った日本だったが、自陣でのパスミスから失点。その後、PKのピンチこそ切り抜けたものの、…

 森保一監督不在の中でトゥーロン国際大会に乗り込んだU-21日本代表の初戦、トルコ戦は、悔いの残る結果となった。

 三好康児(札幌)のゴールで先制点を奪った日本だったが、自陣でのパスミスから失点。その後、PKのピンチこそ切り抜けたものの、相手の勢いを受け止めきれず、終盤に右クロスのこぼれを押し込まれて1-2で敗れた。



トゥーロン国際初戦、トルコに敗れたU-21日本代表

 日本のシステムは3-4-3。柏でCBを務める中山雄太が井上潮音(東京V)とともにダブルボランチを務め、1トップにはケガから復帰を果たした小川航基(磐田)が入った。対するトルコは4-3-3でこの試合に臨んできた。

 序盤は日本がボールを回してペースを握った。立ち上がりこそやや不規則にバウンドするグラウンドに戸惑ったものの、テンポよくパスを繋いで攻撃の糸口を探っていく。トルコは日本のシステムをなかなか把握できず、前線でのプレスに戸惑いが見られた。

 ただ、日本もボールは動かせているものの、なかなかチャンスを作るまでには至らない。7分に森島司(広島)がエリア外から強引な形で狙って初シュートを放つがブロックされ、初瀬亮(G大阪)が放ったFKも小川は触ることができなかった。

 日本にチャンスが訪れたのは17分。中山が中盤のターンで相手を外すとエリア内の小川へパス。これを小川が右足で狙うが、GKにセーブされた。一方のトルコは14分に日本のパスミスを奪ったバルシュ・アルズの左足がクロスバーを叩き、29分にはFKのこぼれ球からアルズとクビライ・カナチュズクシュが立て続けにチャンスを迎える。しかし、両チームともにゴールを奪えず、前半を終えた。

 後半に入ると、日本は立ち上がりに先制点を奪う。中盤からショートカウンター気味に攻撃を開始すると、右サイドから中央に持ち込んだ藤谷壮(神戸)が潰され、こぼれ球が森島のもとへ。ドリブルで持ち運んだ森島が相手を引きつけて、右でフリーになっていた三好へパスを送ると、三好はワントラップから左足で落ち着いてファーサイドに流し込んだ。

 こぼれ球を拾った時点でフリーになっていた三好へ焦ってパスを送らず、ドリブルでさらに相手を引きつけて三好のスペースを作った森島の判断が光った得点だった。

 ところが、五分五分の状態からいい形で先制点を奪った日本は、思わぬミスで自らを苦しい状況に追い込んでしまう。後半21分、ボールを繋いでいた日本がGK山口瑠伊(エストレマドゥーラUD/スペイン)までボールを戻すと、山口が処理を誤り、杉岡大暉(湘南)へのパスが短くなってしまう。これを奪われると、最後はゴール前でフリーになっていたムジャヒト・アクジャイに押し込まれてしまった。

 前半はトルコの前線からのプレスが緩かったため、GKを含めて余裕を持ってビルドアップできていた日本だったが、リードされたトルコが前線から厳しくプレスを行なうようになると、もたつくようになっていた。

 同点に追いついたことでトルコはさらに攻勢に出る。後半32分、杉岡が自陣エリア左で浮き球を処理しようとした際に、不規則にバウンドしたボールが手に当たってしまい、トルコにPKを与えてしまう。これはGK山口がセーブして難を逃れたものの、相手の勢いを止められないまま2分後に勝ち越し点を許す。トルコの縦パスで右サイドを突破されると、そこからのクロスを冨安健洋(シントトロイデンVV/ベルギー)がクリアしきれず、こぼれ球をアクジャイに押し込まれてしまった。

 この敗戦を決定づけた2つの要素は「状況判断」と「切り替え」だろう。

 試合の流れを変えることになった1失点目は、非常にもったいないものだった。実力が拮抗したチーム同士の試合でこのようなミスを起こせば、そのツケは払わなければならない。

 もちろん、ボールを大切にするサッカーをしている以上、自陣深くでボールを失うリスクは常につきまとう。このチームがこのサッカーを追求するのであれば、避けては通れない。だからこそ、リスクを負うのか負わないのかの状況判断が非常に大切になってくる。

 問題は、このチームが同じ形の失点を繰り返していることだ。そのことについては、「これまでと同じような形で失点してしまって、もちろんこれはずっと課題」(横内明展監督代行)、「今回の試合に限らず、今までの活動の中で、ああいった自陣のちょっとしたミスですぐ失点になってしまったことは何度かあった」(中山)、「毎遠征、ああいう失点の仕方をしている」(三好)と、チーム内で問題意識を共有して持っている。

 しかし、改善がなされていない。主としてそれは経験不足からくるものだろう。相手が強くなるほど、”このくらいなら大丈夫だ”と思っても、予想外のところから足が伸びてきてボールを奪われるというような事態は起こり得る。それを経験するために海外へ出向いて試合をしているわけだ。

 とはいえ、「試合前のミーティングでもそういう(自陣深くでのミスは避けるという)話はあった」(中山)というなかでミスが出てしまったのであれば、何かを大きく見直す必要があるだろう。

 また、1失点目が嫌な形だったとはいえ、そこから大きく流れが変わったのは、同点に追いついたことでトルコが勢いづいた部分もあったが、それ以上に日本が大きく崩れてしまったからだ。PKを与えてしまったプレーも、特に慌てるような場面ではなかった。さらに言えば、せっかくPKを切り抜けたにもかかわらず、悪い流れを変えられずに2分後に失点してしまった。

「おっしゃる通りで、そういうところでこのチームは今まで失点を重ねてきましたし、その甘さというか、何とか奮い立たせるというか、チームをもう一度、いいリズムに持っていくだけのパワーは今はまだ発揮できない」と、横内監督代行も現状を認めざるを得なかった。

「あの1失点目もやってはいけないミスだと思いますけど、ああやって失点してしまったということは変えられないので、そこからの立て直しというところが課題かなと思います」と板倉が言うように、選手たちもそれはわかっている。

 ポジティブに捉えれば、改善しなければならない課題は明確だ。もちろん簡単に修正できるようなものではないが、ポルトガルとの第2戦、カナダとの第3戦までの短い期間でどれだけ問題を修正していけるのか、注目したい。