テストマッチは世界ランクに関わる国際間の真剣勝負。そんな「勝てば官軍」が通る世界にあって、この午後の日本代表は勝って反省できた。過去11年間無敗のカナダ代表に26-22と苦しみ、マーク・ハメット ヘッドコーチ(HC)代行も「ストラクチャー…

 テストマッチは世界ランクに関わる国際間の真剣勝負。そんな「勝てば官軍」が通る世界にあって、この午後の日本代表は勝って反省できた。過去11年間無敗のカナダ代表に26-22と苦しみ、マーク・ハメット ヘッドコーチ(HC)代行も「ストラクチャーは完璧とは言えませんが…」と勝利に安堵した。

 相手も、戦い方に芯を通していた。日本代表の重量級走者であるWTBパエア ミフィポセチの周りにキックを放ち、足を止めた。球を持てば、ただただ大型選手の突進力を活かさんとした。日本代表は相手の強みを引き出した格好で、前半20分間を3-12とリードされた。
「崩されて、というより、自分たちのミスからゴリゴリと行かれていた。まず、慌てないでおこう。ボールキープをミスなく」とは、テストマッチ出場数現役3位のPR畠山健介。ジャパンは失点後に円陣を組むたび、少しずつ平常心を取り戻したか。

 28分には、敵陣10メートル線中央でFL安藤泰洋ゲーム副将が敵走者の球をもぎ取る。「ビッグプレーでした」。同22メートル線まで走る。さらには味方の援護が遅れるのを見越し、ボールを腹の下に隠す。「寝方で時間を稼いで…」。チームは攻撃を継続し、33分、敵陣ゴール前左でのモールから10-12と迫った。
 前半終了間際には、SH田中史朗を軸に攻めのテンポを上げる。
 その過程の接点では、カナダ代表の妨害を引きはがす下働きも渋く光る。前半6分の失点の契機は、自軍ボールの密集への寄りの遅れだった。課題改善に努めたジャパンは、SO田村優のペナルティゴールで13-12と初のリードを奪った。間隙を突く走りで魅せたCTB立川理道ゲーム主将は、手応えをつかんだ。
「点を取ったところは、接点を制圧してSHが動いて…というもの」
 それでも快勝には、至らなかった。

 16-17のスコアで迎えた後半13分。FL細田佳也が、接点で身動きの取れぬ相手防御に衝突。ラフプレーの判定で一発退場した。
 何より、29分、35分の得点で9点リードを保ちつつ、ノーサイド直前に逆転負けの危機を迎えた。
 敵陣深い位置で、29分の逆転トライを挙げたFB松島幸太朗が好タックル。しかし、逆サイドに球をつながれ、一気に自陣に押し込められた。
 最後は守り切ったが、勝者に笑いはなかった。
 試合終盤に代表デビューを飾った帝京大4年のFB松田力也は、こう反省する。
「周りと連携をして足を使えば、(組織的に)もっと前のところで止められた。これからの課題です」
 カナダ代表は6本中5本のゴールキックを外していた。昨秋のワールドカップイングランド大会で3勝した日本代表としては、相手に助けられた感も残したか。CTB立川ゲーム主将は「きょうの反省を活かし、いい準備を」。防御の連携やタックルの鋭さなど、細部を再点検したい。

 翌週以降、欧州6強の一角であるスコットランド代表との2連戦に挑む。前半だけで交代したFL安藤ゲーム副将、SH田中の次戦への出場可否が流動的ななか、さらなる結束とスムーズな修正を目指す。
(文:向 風見也)