ついに錦織圭が、グランドスラムの舞台に帰ってきた――。 昨年夏に右手首の腱裂傷によって戦列を離脱した錦織(ATPランキング21位、5月21日付、以下同)だったが、今年の1月中旬に復帰を果たし、4月から始まったヨーロッパクレーシーズンか…

 ついに錦織圭が、グランドスラムの舞台に帰ってきた――。

 昨年夏に右手首の腱裂傷によって戦列を離脱した錦織(ATPランキング21位、5月21日付、以下同)だったが、今年の1月中旬に復帰を果たし、4月から始まったヨーロッパクレーシーズンから調子が上向いてきた。



大会前の記者会見で、笑顔で質問に答える錦織圭

 4月中旬のマスターズ1000(以下MS)・モンテカルロ大会では準優勝をして、まず復活を印象づけた。ATPバルセロナ大会とMS・マドリード大会では1回戦敗退だったが、5月中旬のMS・ローマ大会ではベスト8。準々決勝では、元世界1位のノバク・ジョコビッチ(22位、セルビア)にフルセットの逆転負けを喫したものの、錦織はハイレベルなテニスを披露し、ショットのクオリティーもトップ10にいたときのレベルに戻りつつある。

「やっとクレーシーズンから、かなり自分の思ったようにボールが飛んでくれたり、狙いが定まったり、感覚が戻ってきている。順調にいい感じでこられていると思います」

 クレーでは球足が遅くなるため、他のサーフェスに比べてラリーがより長くなり、トップスピン(順回転)をしっかりかけてプレーをする必要があるが、その状況で錦織の右手首は着実に回復のステップを踏んできた。

「(右手首は)最初は痛みもありましたけど、今はだいぶよくなってきている途中です。まだまだ完全には治らないと思いますけど、だいぶよくなってはきています」

 回復途中とはいえ、錦織はフォアハンドストロークを100%の力で打てていることを付け加えた。

 また、錦織はモンテカルロ準々決勝でマリン・チリッチ(3位、大会時、クロアチア)に、続く準決勝でアレクサンダー・ズベレフ(4位、大会時、ドイツ)に勝った。さらにローマの2回戦ではグリゴール・ディミトロフ(4位、大会時、ブルガリア)を破ってみせた。すでに今季クレーシーズンで、トップ5の選手を3人破って、本来の錦織らしい勝負強さも取り戻したことは、ローランギャロス(全仏)への準備として大いに好材料となる。

「それが一番自信になったと思います。モンテカルロで決勝に行けたことは一番自信になりました。この前はディミに勝ったりと、トップ10選手に勝てるということが一番の自信にはなるので、またこのレベルに戻ってこれたな、という実感ができた一戦だった。

 試合数をもうちょっとこなして、マドリードとかローマで、本当はもっと上に行きたかったです。行っていれば、もっと自信がついたと思います。いい結果が出ているので(ローランギャロスで)自信を持っていきたいですね」

 錦織がグランドスラムに出場するのは、昨年のウインブルドン以来となる。久しぶりとなる5セットマッチを、このローランギャロスで戦うことになるが、体力面で一抹の不安を抱いていることを吐露する。

「心配なのは、5セット(マッチ)が久しぶりなので。5セットが2日続いちゃったり、自然と長い試合も多くなったりすると、手首だったり、体だったり、久しぶりの5セットに耐えられるかという不安はひとつだけあります」

 今回の全仏で錦織は第19シードになり、大会ドローのボトムハーフに入った。1回戦の対戦相手は、ワイルドカードで出場のマキシム・ジャンビエ(304位・フランス)に決まり、初対決となる。その21歳の選手を錦織は見たことも聞いたこともなかった。驚いたことに、会見時に初めて1回戦の相手を知ったということだ(会見の前日にドロー抽選があった)。

「今、聞いたし……」と錦織は笑ったが、「聞いたことがないので、調べないと。珍しいですね。顔も名前も出てこない。試合をしながらの感じになっていくと思います」と気を引き締めた。

 錦織が勝ち上がった場合、2回戦ではベノワ・ペール(50位、フランス)とロベルト・カルバレス バエナ(77位、スペイン)の勝者と対戦する。ペールとの対戦成績は、錦織の3勝2敗。カルバレス バエナとは対戦がない。

 さらに、それぞれが順当に勝ち上がった場合、3回戦からはシード選手同士の対戦が始まる。3回戦では、第12シードのサム・クエリー(13位、アメリカ)で、錦織の6勝4敗。4回戦では、第7シードのドミニク・ティーム(8位、オーストリア)で、錦織の2勝0敗。24歳のティームは、前哨戦のMS・マドリード大会で準優勝しており、クレーを最も得意とする選手だ。

 そして、準々決勝では第3シードのアレクサンダー・ズベレフ(3位)で、錦織の1勝1敗。21歳のズベレフは、MS・マドリード大会で初優勝し、続くMS・ローマ大会で準優勝して好調をキープしている。

 昨年と比べて錦織はランキングを落としており、全仏では下位シードになるので、勝ち上がると3回戦、4回戦で上位シードを倒さなければならない。この第一関門を突破して、ケガが再発させずに、大会第2週でギアアップできるようであれば、自身初のローランギャロスでのベスト4入りが視野に入ってくるかもしれない。 

「やっぱり久しぶりのグランドスラムは楽しみです。この場にいることが、一番のモチベーションだったり、楽しみだったりする。いい結果を残したいですね。なるべく上に行けるよう頑張りたいです」

 錦織の1回戦は大会初日の5月27日に行なわれる。もし、錦織が今回のローランギャロスで好成績を収めることができれば、トップ10復帰への足掛かりを築くことができ、さらに完全復活を印象づけることもできるだろう。

 そして、今後グランドスラム初制覇を実現できるか――。その力が28歳の錦織にあるのかどうかを見極める、非常に大事な意味もパリでの戦いには含まれている。

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