【福田正博 フォーメーション進化論】西野ジャパンはW杯をどう戦うか 前編 5月30日のガーナ戦に向けて発表された日本代表27人の名前を見て感じたのは、「4年前と変わらないメンバーだな」ということ。個人的には、もっと若い選手を選んでもらい…
【福田正博 フォーメーション進化論】
西野ジャパンはW杯をどう戦うか 前編
5月30日のガーナ戦に向けて発表された日本代表27人の名前を見て感じたのは、「4年前と変わらないメンバーだな」ということ。個人的には、もっと若い選手を選んでもらいたかった。
ハリルホジッチ前監督は、新たな日本代表を作ろうとさまざまな選手を試してきた。彼の志向したサッカーが日本代表に合っていたとは思わないが、メンバー選考に関しては共感していただけに、残念でならない。
ガーナ戦に向けて合宿を行なう日本代表
今回の選手選考でポイントになったのは、W杯アジア予選後に代表から遠ざかっていた本田圭佑、香川真司、岡崎慎司が選ばれるかどうかだったが、3選手とも27人の枠に入った。
これは、W杯開幕2カ月前に就任し、時間が限られている中でチームを作り直さなければいけない西野朗監督の立場を考えれば理解できる。本戦で厳しい戦いを強いられるだろうことも含め、経験値がある選手を重視したのも頷ける。
それでも驚いたのは、中島翔哉がメンバーから外れたことだ。西野監督はメンバー発表の記者会見で「彼はポリバレントではない(複数のポジションをこなせない)」と理由を説明したが、現段階で彼を残さなかったことには疑問を感じている。
3月のマリ代表とのテストマッチで代表デビューした中島を、今のタイミングから先発起用という形でチームに加えるのは難しいだろう。しかし、途中出場のカードとしては、彼のダイナミズムは日本人選手の中でトップクラスだと思っている。
試合の流れを変えられるパワーを持っていなければ、途中起用されても存在感が発揮できないことは多々ある。だが、ゴールを積極的に狙っていく中島の貪欲さが相手の脅威になることは、3月のテストマッチ2試合で証明済み。さらに、ピッチ上での躍動感を考えれば、堂安律という選択肢もあったはずだ。
若さという点では、浅野拓磨、大島僚太、三竿健斗、遠藤航、植田直通というリオ五輪世代も名を連ねている。しかし、ポジションやプレースタイルに違いはあるとはいえ、「何かをしてくれるのではないか」という期待感やゴールの可能性は中島や堂安に及ばない。選手選考に時計が逆戻りした印象を覚えたのは、期待感の物足りなさが原因なのかもしれない。
「ガーナ戦後に追加召集があるかも……」という可能性を言い出したらキリがないため、ここでは27選手の顔ぶれから予想される戦い方、最終メンバーに残る選手について考えていきたい。
※ケガの影響で、サンフレッチェ広島のMF青山敏弘は離脱
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W杯に連れていける選手は23人。GKは3人で、フィールドプレーヤーは、ひとつのポジションに2人ずつを選ぶのが基本になる。ポジションの構成から推察すると、西野朗監督が2トップをベースに考えていることが見えてくる。ハリルホジッチ体制の日本代表はこれまで1トップか3トップで戦ってきたが、私は2トップにすることに賛成だ。
1トップは、前線で起点になれるFWがいてこそ有効だ。しかし、W杯に出場する強豪国の屈強なDFを相手に、日本人FWがひとりで時間を作るポイントになることは難しい。岡崎、武藤、浅野がサイドアタッカーとしてもプレーできるため、オプションとしては1トップもアリではあるのだが、距離感を保ちながら2トップで起点を作ったほうが、日本人FWのよさが出やすいと考えている。
2トップの場合、組み合わせは、大迫と岡崎、大迫と武藤、武藤と岡崎になるだろう。スピードがある浅野は、途中出場のジョーカーとしての役割が期待されるが、浅野は所属クラブで試合に出ていなかっただけに状態がわからない。ガーナ戦で出番があるかはわからないが、浅野には「やっぱり浅野でよかった」と思わせてくれるプレーを期待している。
その点では、浅野ではなくFC東京の永井謙佑でもよかったのではと思ってしまう。永井は決して器用な選手ではないが、スピードを生かしてガムシャラにボールを追い回すことができる。今季のJリーグでは前線からの守備でも存在感を見せているし、ロンドン五輪やベルギーリーグなど、海外でのプレー経験もあり、国際経験も問題ないだけに残念だ。
一方のDF陣とGKは、Jリーグ中断前の試合で負傷したGKの中村航輔は状態を見ながらだろうが、このメンバーでほぼ当確と言っていいだろう。守備の連係は一朝一夕で築けるものではないし、これまで培ったものを壊して新たに作り直す時間もないため妥当な判断といえる。
CBの軸は吉田麻也で、その相棒が槙野智章か昌子源。バックアッパーが植田になる。西野監督がCBに何を求めるかで、槙野と昌子の優先順位は変わる。ハリルホジッチ前監督は前へ出ていく強さをCBに求め、それに秀でた槙野を買っていた。だが、西野監督が安定感を求めた場合は槙野のよさが生きないため、昌子がファーストチョイスになる可能性がある。
ただ、昨シーズンから現在までのJリーグでのプレーを見ていると、昌子の調子はいいとは言えない。2017年末のクラブワールドカップで、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウドを止めた時のパフォーマンスには程遠い。自分のできないことまでやろうとして、空回りしているように見える。今の状態を考えれば、CBには槙野が入るのではないか。
いずれにしろ、CBができる選手は4人必要だ。3人の登録で2人がケガをしたら窮地に陥る。槙野にSBを兼ねさせ、SBのメンバーを3人にしてDFを7人にする手もあるが、CBの人数はよほど前線で特別な事情がない限りは変えるべきではない。
SBは右が酒井宏樹、左が長友佑都。右SB、CB、ボランチ起用の可能性も考えて遠藤航、左右SBのバックアッパーとして酒井高徳を選んでいる。遠藤は、浦和では主に3バックのセンターでプレーしているため、ユーティリティな存在としてフォーメーション変更時のオプションになる。
といったように、FW、GK、DFは本番に向けた形が見えやすいが、中盤のメンバー構成は頭を悩ませるところだ。
(後編に続く)