第102回インディアナポリス500に出場する33台が決まった。 世界一の伝統を誇るインディ500は全長2.5マイルの超高速オーバルコースを舞台に、マシンの限界スピードを保ったまま200周の長距離で争われるレースだ。近年の最高速は時速2…

 第102回インディアナポリス500に出場する33台が決まった。

 世界一の伝統を誇るインディ500は全長2.5マイルの超高速オーバルコースを舞台に、マシンの限界スピードを保ったまま200周の長距離で争われるレースだ。近年の最高速は時速230マイル(約370km)を超える。そのためマシンのセッティングはより研ぎ澄まされる必要があり、長期間にわたるプラクティスが行なわれる。今年は昨年より1日減って4日間となったが、1日の走行時間は6時間から7時間に伸ばされた。

 90年代半ばまでは予選が2度の週末の計4日間で、プラクティスは12日間もあった。2010年から予選はひとつの週末にカットされたが、それでも2日間にわたって行なわれる点は他のレースと異なる。2012年からは予選をよりエキサイティングにするために、ターボのブースト圧が高められるルールが採用され、大幅にスピードアップがなされている。

 予選は1台ずつがアタックするタイムトライアル方式。土曜日にまず全員に1回、アタックのチャンスが与えられ、それ以降は時間が許す限り何度アタックしてもオーケーとなる。ここで決めるのはレースに出場できる33台と、ポールポジションを争うスペシャルステージに進出する9人(ファスト9)だ。今年は35台のエントリーがあったため、初日に2人の予選落ちが決まった。



インディ500予選では16位につけた佐藤琢磨

 2度の雨による中断があった予選ではチーム・ペンスキーの4人とエド・カーペンター・レーシングの3人がファスト9入りした。昨年はホンダ勢6対シボレー勢3だったが、今年はシボレー勢7対ホンダ勢2と、形勢が逆転している。

 ホンダ勢ではセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)が5位で、昨年を含めてインディ500で3回のポールポジション獲得歴を持つスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が9位だった。

 アンドレッティ・オートスポート勢がファスト9にゼロだったことと、女性ドライバーでストックカーから戻ってきたダニカ・パトリック(エド・カーペンター・レーシング)がファスト9に入る予選7位だったのは驚きだった。

 レースでもシボレー勢、中でもペンスキーの4人は速いだろう。プラクティス初日からレースを想定した走行を、チームメイト同士で集団を作って繰り返していたからだ。優勝候補の最右翼はインディ500で3勝、2位も3回という実績を誇るエリオ・カストロネベスだ。史上最多に並ぶ4勝目達成に燃える彼はモチベーションもひと際高い。ウィル・パワー、シモン・パジェノー、ジョセフ・ニューガーデンの3人は初のインディ500優勝を目指す。

 エド・カーペンター・レーシングの3人のなかでは、ポールポジションを獲得したチームオーナー兼ドライバーのエド・カーペンターが優勝候補。彼は今やオーバルレースだけにしか出場せず、ストリート、ロードコースは若手にチャンスを与えている。それでも、インディアナポリスモータースピードウェイのオーナー家族の一員でもあるカーペンターが抱くインディ500優勝への想いは並々ならぬものがある。

パトリックは過去7回インディ500に出場し、トップ10入りが6回、ベストは3位と、インディ500との相性がいいことは間違いない。しかし、7年間のブランクもあり、優勝争いまでは難しいだろう。

 ホンダ勢ではやはりブルデーとディクソンに注目したい。予選を上位で通過した2人のベテランが粘り強い戦いぶりで優勝争いに食らいついていくはずだ。

 そして、この4年間で3勝しているアンドレッティ・オートスポーツ。彼らもプラクティスではペンスキー同様、レースを睨んだセッティングで集団走行を重ねていた。6台をエントリーする彼らだが、期待がかかるのは予選12位のマルコ・アンドレッティと予選14位で2014年ウィナーのライアン・ハンター-レイだ。

 今年のインディカーシリーズで目覚ましい走りを見せているアレクサンダー・ロッシは予選で失敗し、最後列グリッドからのスタートという大きなハンディキャップを負った。とはいえ、フェニックスの1マイルオーバルでは、ピットでのミスで周回遅れに陥りながら、全車をパスしてリードラップに復活してみせた。その再現をインディでも見せることができるか。

 日本のファンはもちろん、昨年のウィナーとして注目度の高い佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、プラクティス3日目から苦戦モードに入った。

 予選1日目の順位は35台中の29位。だが予選2日目は、一気にスピードアップしてグリッドは16番手を確保した。「決勝用のマシンにも使えるセッティングが見つかった。1日目から2日目にかけて、大きく順位を上げることができて気分がいい」と喜んでいた琢磨だったが、予選通過者による月曜日のプラクティスでは、集団走行でマシンのハンドリングが思い通りに仕上がらなかった。

 5月27日のレースに向けて、セッティングを再検討しなければならない厳しい状況に追い込まれているが、はたして”2連覇への正解”は見つかるだろうか。