専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第156回 絶好のゴルフ観戦シーズンに突入しました。 近年、ギャラリーへのサービスが充実しております。以前のように、多くのファンがひとりの選手を血眼(ちまなこ)になって追いかけ…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第156回

 絶好のゴルフ観戦シーズンに突入しました。

 近年、ギャラリーへのサービスが充実しております。以前のように、多くのファンがひとりの選手を血眼(ちまなこ)になって追いかけるという現象が薄れて、その分、主催者側は来場してくれたお客さんに対して万遍なくサービスし、顧客満足度をアップさせているのです。

 昔は、ジャンボ尾崎やタイガー・ウッズなどのスーパースターがいて、その姿を追いかけて1日が終わる、そんな感じでした。スター選手の周りは黒山の人だかりで、バシーンとドライバーを打つや、ギャラリーの”民族大移動”開始!っていう様子でしたかね。

 そのため、双眼鏡と脚立は必需品でした。そうして、「打った~、それ動け~」「あぁ~、荷物が邪魔じゃ~」などと言って、フゥ~フゥ~しながら好位置をキープするや、選手が登場して「また打った~」「次のポジションへ動け~」の繰り返しで、いったい何をしに来たのやら……。

 そんなこんなで、あとでギャラリー用のテントにいって、休憩しながらコース内に設置されたモニターのライブ映像を見ていると、はっきりと選手の一挙一動が映し出されているじゃないですか。

 そうなんですよ。テレビのほうが”見た感”があるのです。ナマの試合は、その場の雰囲気を味わいたい、そういうことですかね。

 とりわけ男子ツアーにおいては、ナマで見たい強い選手は、おおよそ海外に行ってしまいがちです。だから最近は、わざわざそこまでして見たいプロは少ないです。

 その代わりに脚光を浴びているのが、女子トーナメントと男子のシニアトーナメントです。どちらも「お客さんあっての試合」ということを非常に理解しており、即席サイン会などはお手のもの。選手と握手もできたりして、AKBみたいな人気で、コース外でも黒山の人だかりができています。

 女子ツアーと男子のシニアツアーはスポンサーの受けもよくて、試合会場に行くと、さまざまな協賛品が無料で配られていたり、安く購入できたりもします。特にシニアツアーは、健康食品やサプリ関連の商品が充実しており、すごく得した気分になります。

 選手にも会えて、しかも優しくしてもらえて、おみやげまでたんまりもらえる。「じゃあ、また行こうかな」となりますよね。



プロトーナメントの観戦はテレビもいいけど、現場も違った楽しさがあるのです

 というわけで、ここからはプロのトーナメントを楽しむための、ちょっとした観戦ポイントを紹介したいと思います。

(1)選手を追うなら前半のハーフ
 試合を見に行く時間帯にもよりますが、先ほども述べましたように、選手を追いかけると結構疲れます。もし追いかけるなら、前半のハーフとか、あるいは途中の4~5ホールでクラブハウスに戻れるコースレイアウトになっていたら、それぐらいを目安にしたほうがいいです。

 会場に着いたら、まず案内図を見てどう歩くか、疲れないプランを決めましょう。動くのがしんどそうなら、池越えなどの面白そうなショートホールに陣取り、定点観測するのも気持ちいいですよ。ちょっとしたパトロン気分になれますからね。

(2)会場入り前にトイレは済ませておく
 トーナメント会場の何が嫌かって、工事現場にあるような仮設トイレです。できれば、あれはやめてほしいところです。

 通常のクラブハウスのトイレは関係者しか使えません。そういうことも知らないで、ハイヒールを履いたイケイケのお姉ちゃんを連れていったら大変ですよ。トイレを見た瞬間、ぶんむくれて「このオヤジ、使えねぇ~」ってなるのがオチですから。

 特に夏場、仮設トイレにエアコンなんてありませんから。あそこに入って、匂いが充満するなか、用を足したくないですね。だから、誰と行くにせよ、できるだけトイレは済ませてから、会場入りしたほうがいいですよ。

(3)アトラクションやショップは万遍なく回る
 トーナメント会場に入場したら、まずは入口で配られたチラシやビニール袋の中身などをチェックしましょう。わりとお得なチケットが入っていたりします。

 その他、大会スポンサーのサンプル品やキャップ類なども入っていて、多くは無料でもらえます。もらえるものは、全部いただいて帰りましょう。

 そういう意味では、場内に設置されたショップなども、のぞいてみるといいかもしれません。試供品を配っていたり、ドリンクサービスがあったりもしますからね。

 加えて、パターコンテストみたいな、アトラクションにも参加しましょう。参加賞だけでも、十分にうれしいものがもらえますよ。

(4)ギャラリー用テントでテレビを見ているのが一番楽
 コースまで行ってテレビを見るのか、と思うかもしれませんが、コース内のテレビ中継は独特な雰囲気があります。

 何より、テレビ放送よりも多めの画面で見られます。ギャラリー用に、18番の定点カメラとか、いくつものシーンが複数のモニターで映し出されていることが多いです。ゆえに、家で見ているテレビ中継より、臨場感が断然あります。

 そもそもテレビ中継の多くは録画じゃないですか。会場では生中継で、しかも選手よりも全体の順位を把握できます。

 ギャラリー用のテントに座って、目まぐるしく変わる試合の状況をビールでも飲みながら観戦し、つまみをほうばっていることの楽しさよ、ですね。

(5)SNSはしないほうがいい
 有名なトーナメントなどで優勝が決まった瞬間、喜び勇んでいち早くSNSなどに上げる人がいますが、それについては迷惑に思う人が結構いるようです。

 過去に、そうやって情報をアップしたのですが、「あとで録画した映像をハラハラしながらみたいので、結果を教えないでください」と注意されました。

 よかれと思うことが、余計なお世話だってことはよくあります。勝負の行方は「教えて」と頼まれた人だけにメールをしましょう。

(6)帰るのはちょっと早めか、遅めか
 トーナメントが終了して帰り支度を始めると、みんなも一斉に動き出しますから、シャトルバスが満員となります。それを避けるには、どうしたらいいか?

 だいたい勝負の行方が見えてくる、最終組が17番ホールをプレーしているあたりで、帰り始めるのがいいでしょう。コース内で流されているミニFMの放送を聞きつつ、会場を後にしてシャトルバスに乗車。電車に乗る頃には試合後までいたギャラリーも合流しますから、そこで結果を知ればいいのです。

「いやいや、接戦だし、最後まで見届けるのが試合ってもんだろ」という方は、表彰式が終わっても、さらに会場に粘って居座りましょう。サプライズでいいことが起こるかもしれませんし。

 思い返せば、2001年のワールドカップ。タイガー・ウッズがやって来て、太平洋クラブ御殿場コースで行なわれた試合を見に行ったときのことです。

 試合が終わって、すでに周囲は真っ暗。11月の御殿場は日没も早いです。

 そろそろ帰ろうかと思っていたら、知り合いのHさんというテレビ局の人がこんなことを言うのです。

「タイガーはナイキと契約しているから、帰りは必ずナイキブースに立ち寄るんだよ。それが、契約ってもんだ」と。

 それを見届けようと言うのですが、「そうですか……。でも、もう暗いし寒いので、私は帰ります」と言って、すたこら御殿場から退散しました。

 すると後日、そのHさんと会ったときに見せてくれたのが、タイガー・ウッズと握手しながら、ツーショット写真で収まっているHさんの姿でした。

 本当に来たんだ。外が真っ暗になっているなか、ナイキのブースにいたのは数人だったようで、タイガーとの写真は撮り放題だったそうです。

 やられたぁ~。あのタイガーとのツーショット写真さえあったら、どこぞの市議会議員ぐらいにはなれたかもぉ~……。そうやって、地団駄を踏んで、悔しがったのでありました。

 というわけで、”果報は寝て待て”と言われているように、プロのトーナメントでもギリギリまで粘れば、何かいいことがあるかもです。

 ただしその挙句、シャトルバスの運行が終わって途方に暮れても、当方は責任を負えませんのであしからず。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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