「そうそう、スペインではセカンドチームはどうなってるの? 下から引き上げるのうまいよね。うちも若い子が育っていて、底上げになりそう。昇格することができたりしたら、面白いんだけどね」 先日、セレッソ大阪の関係者に、そう声をかけられた。 セ…

「そうそう、スペインではセカンドチームはどうなってるの? 下から引き上げるのうまいよね。うちも若い子が育っていて、底上げになりそう。昇格することができたりしたら、面白いんだけどね」

 先日、セレッソ大阪の関係者に、そう声をかけられた。

 セレッソのセカンドチームであるセレッソ大阪U-23はJ3に所属。第11節終了時点で3位と健闘している。例年、J3で戦うU-23のチームは中位以下が定位置なだけに、特筆に値する成績と言えるだろう。レギュレーションによって、J2に昇格することはできないものの、昇格に相応する順位を争っている。

 昨シーズン、ルヴァン杯、天皇杯の2冠を達成したセレッソにとって、セレッソU-23はどんな役割を果たしていくことになるのだろうか?
 



セレッソ大阪U-23を率いてJ3を戦う大熊裕司監督

 5月19日、ニッパツ三ツ沢球技場。J3第11節、セレッソU-23はYSCC横浜と敵地で戦っている。先発メンバーの平均年齢は20歳。ベンチメンバーを含めると19.81歳という若いチームだが、J3で研鑽を積んできた選手が多いのが特徴だろう。その経験が今シーズン、実りとなりつつある。

「(セレッソU-23は)J3参戦も3年目になります。1年目は17~18歳の選手が多かったのですが、経験を積むことでプロのスピードに慣れてきて、本来のクオリティを出せるようになってきました。選手たちは”トップに上がる”という高い志を持って、いいトレーニングができていると思います」(セレッソU-23・大熊裕司監督)

 システムは4-4-2で、尹晶煥監督が率いるトップチームと同じ匂いを放っていた。守備は中央が堅く、球際で激しく戦う。攻撃はサイドを崩し、積極的にクロスを入れ、2トップが飛び込む。目を覆うようなミスはあったし、失点後はリズムを失うなど、若さゆえの波はあったが、練度は高い。

 選手ひとりひとりのプレーキャラクターも、トップの選手と共通するところがあった。

 例えば、左サイドバックの舩木翔は左利きで、プレースキッカーを任されるなど、左足キックだけならJ1でも遜色ないだろう。体格に恵まれて高さや走力もあるのだが、簡単に入れ替わられ、間合いを開けすぎるなど、守備は若干、不安定だった。プレーの質は別にして、キャラはトップの丸橋祐介と似ていた。

 他にも、FWの山田寛人は杉本健勇、MFの西本雅崇は山口蛍を思い起こさせた。

「まだまだトップでレギュラーを取れるような、飛び抜けた選手は出てきていませんけどね」

 トップの選手がそう洩らしていたように、カテゴリーが2つ下でプレーする選手たちだけに、未熟な部分があるのは否定できないだろう。ただ、「トップへの道筋」は感じさせた。もともとセレッソはユースから柿谷曜一朗、山口、杉本、丸橋などが輩出している。もし下部組織から人材を吸い上げるシステムを確立することができたら、確実にチーム力は上がるだろう。

 そのとき、セレッソは真の強豪となるのではないか――。

 ちなみに、以下が冒頭で紹介した質問に対する答えである。

 スペインでは、セカンドチームは2部までは成績次第で昇格することができる。厳密に言えば、トップチームのひとつ下のカテゴリーまで(例えばトップチームが2部だったら3部まで。もしトップチームが降格してきた場合、自動降格の憂き目に遭う)。セカンドチームも実力主義の中で揉まれている。

 スペイン王者FCバルセロナは、セカンドチームであるバルサBが2部に在籍。リオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、セルジ・ブスケッツなどはバルサBを経験(当時は3部だった)している。現在、バルサは降格危機にあるセカンドチームを2部に残留させるために手を尽くしているが、その理由は明白。選手をトップチームに昇格させるためには、カテゴリーが2つも下だとレベルの差がありすぎるのだ。

 もっとも、別の考え方もある。

 欧州王者レアル・マドリードは、セカンドチームであるカスティージャが3部に属している。彼らの場合、3部リーグ以上の実力がある選手に関しては、積極的に他クラブへ貸し出すのがポリシーだ。現在トップに在籍するダニエル・カルバハル、ルーカス・バスケス、ボルハ・マジョラル、ヘスス・バジェッホ、マルコス・ジョレンテなどはいずれも出戻りである。レンタル先で結果を出すことで大人に成長し、トップに戻って先発を争っている。

 この日、セレッソU-23はYSCC横浜と1-1で引き分けた。だが、試合後半は優勢に試合を展開している。右サイドからのクロスにファーサイドで山田が合わせたシーンなどは、トップチームのワンシーンと重なった。

 そのプレーのひとつひとつが「セレッソの未来」となるのだろう。