ブンデスリーガ2017~18シーズンが終了した。今週に入ると、キッカー誌ウェブ版のトップページも、ブンデスリガーガの話題からドイツ代表の話題に切り替わった。日本人選手もほとんどが帰国するなか、ドイツ杯決勝が残っている長谷部誠だけがフラ…

 ブンデスリーガ2017~18シーズンが終了した。今週に入ると、キッカー誌ウェブ版のトップページも、ブンデスリガーガの話題からドイツ代表の話題に切り替わった。日本人選手もほとんどが帰国するなか、ドイツ杯決勝が残っている長谷部誠だけがフランクフルトでトレーニングを積んでいる。

 今季の日本人選手たちのプレーを振り返ると、失礼な言い方になってしまうが、総じてパッとしなかったと言えるのではないか。複数の選手が優勝争いに絡むチームで主力を張っていた時期に比べると、華々しさはない。逆にいえば、長くドイツでプレーする選手が増え、計算できる戦力としてチームに定着しているという側面もあるのだが。

 ブンデス1部で試合出場のあった8人について、現地での取材をもとに採点してみた(採点は10点満点で標準は6とする)。



最終節ホッフェンハイム戦でようやく復帰を果たした香川真司(ドルトムント)

香川真司(ドルトムント)【6.0】 

 トーマス・トゥヘル時代の苦しみから解放されるかと思ったら、監督がペーター・ボスに交代しても定位置争いに勝ち切れなかった。だが、ペーター・シュテーガーが指揮を執るようになると、一転して香川自身が「キャリアのなかで最もよかったかも」と言うほどのプレーを見せるようになった。

 年をまたいだ第15節から第22節までの間は、ドルトムント加入2年目までのフレッシュさに安定感が加わり、チームを操る存在だった。だが、そんな絶好調のさなか、2月10日のハンブルガーSV戦で負傷。3カ月を棒に振った。最終節ホッフェンハイム戦で復帰を果たしたが、復帰までのプロセスでは、精神的な焦りも見られた。

「照準は6月19日(W杯のコロンビア戦)か」と聞くと「そうだ」と断言。一方で、この4年間を総括するなかで、すでに去っていったチームメイトの名を出す様子などは、今後の何らかの動きを示唆するようでもあった。

浅野拓磨(シュツットガルト)【5.0】

 ドイツでの2シーズン目は傷心の1年となった。チームが2部だった昨季はリーグ戦26試合に出場、4得点をあげている。1部に昇格した今季も、前半戦は15試合に出場して1得点。しかし、後半戦に入ってからの出場は0。終盤には二軍戦で4部リーグの試合に出場している。

 シュツットガルトは結局7位になった。出場機会を失ったのは、チームの一時的な低迷のあおりを受けたことが大きかった。日本をロシアW杯に導いた立役者のひとりながら、代表からも外れ始めている。ここが踏ん張りどころだろう。圧倒的なスピードと真面目で親しみやすい性格は、どこでも受け入れられるはずだ。

長谷部誠(フランクフルト)【6.0】

 一時はチャンピオンズリーグも狙える順位に立っていたフランクフルトだったが、終わってみれば8位。そしてチームをここまで強化したニコ・コバチ監督は、来季からバイエルンを指揮することになった。来季の苦戦は必至だろう。

 前半戦の長谷部は、膝に痛みを抱え、だましだまし試合に出ているような状態だったが、第18節からは一転してフル出場を続けていた。しかし、第31節ヘルタ・ベルリン戦で一発レッドカードとなり、残る3試合を出場停止となった。退場を命じられたシーンは、あからさまな肘打ち。たとえどんなことがあったにせよ、いただけないプレーだった。

 フランクフルトでは、長谷部のポジション変更がシステムの変更を意味する。その存在自体が戦術として機能する大きな役割を担っていただけに、チームにとっても痛手だったはずだ。ドイツ杯決勝は出場可能だが、リーグ戦のラスト3試合に出場していない選手を、コバチ監督は自身の最終戦でどう扱うだろうか。

鎌田大地(フランクフルト)【採点不能】

 今季、鳴り物入りで完全移籍を果たしたものの、リーグ戦の出場はわずかに3試合。ケビン・プリンス・ボアテングの加入などに押され、トップチームの試合に絡むことはほとんどできなかった。21歳という年齢をどう捉えるか。フランクフルトのようなブンデス1部でもう少し経験を積むのか、それとも出場機会を求めるのか。岐路を迎えている。

武藤嘉紀(マインツ)【7.0】

 ハリルジャパンでは評価されず、西野朗新監督の欧州行脚でも面談は行なわれなかった。なぜか代表に縁のない武藤だが、今季は日本人最高の8得点をマークした。一方で、今季こそ「ケガをしないこと」を目標に掲げていたが、やはり昨年末に負傷で4試合離脱。少ない出場時間で8得点を挙げていることを評価すべきか、毎年なんらかのケガをする選手と見るべきか、悩ましい。

 1トップでも2列目でも、トップスピードでゴール前に入れるうえ、守備にも献身的で、スタミナもある。器用なタイプではないが、先発でもいけるし、試合終盤の切り札にもなる。重宝されるのも当然だろう。終盤には移籍報道が出始め、本人もそれを否定しなかった。W杯でさらに価値を上げたいところだ。

酒井高徳(ハンブルガーSV)【5.5】

 キャプテンを任されながら、チームは史上初の2部降格。辛めの採点となったのはそのためだ。酒井自身、今季の序盤は不調に見舞われ、マルクス・ギズドル監督から「さすがにかばいきれない」とまで言われたという。

 その後も調子に波があり、なかなか安定したプレーを見せることはできなかった。特にサイドバックに入った際は、守備と攻撃参加のバランスが悪く、チームの穴になることもあった。とはいえ、サイドバックもボランチもこなせるのは、日本代表においても貴重な存在のはず。早くモードを切り替えてほしい。

伊藤達哉(ハンブルガーSV)【6.5】

 ブンデスリーガに久々にフレッシュな日本人選手が現れた。Jリーグのトップチームを経ずに、高校3年でハンブルガーSVのU-19入り。3年目となる今季は、シーズン半ばからトップチームで活躍した。特に今季3人目となるクリスチャン・ティッツ監督が就任してからは完全にレギュラーを獲得。最終節ボルシアMG戦でもルイス・ホルトビーの決勝点を演出した。

 タグホイヤーの冠がついたブンデスリーガのルーキーアワードにも、ヴォルフスブルクのブラジル五輪代表ウィリアン、レバークーゼンのギリシャ代表パナギオティス・レトソスとともにノミネートされている。

大迫勇也(ケルン)【5.5】

 シーズンイン直前にコンタクトプレーによって負傷。その後も肺炎、食あたりと、不運な災難に襲われたシーズンだった。そんななかで25試合出場4得点。そこまで悪い数字ではないが、2トップの一角、もしくは2列目で起用される選手としてはやはり物足りない。

 降格したチームにとっては、なんといっても1勝もできずに折り返した前半戦の戦いが悔やまれる。大迫はどこに新天地を見出すのか。W杯は大迫の行く末も左右しそうだ。

* * *

 8得点を挙げた武藤と新星の伊藤以外は、特筆すべき活躍は見せられなかった日本人ブンデスリーガーたち。マンネリ感も否めない。彼ら自身、新たな挑戦に踏み出すタイミングがW杯後の夏なのだろう。今夏のマーケットが注目される。