日本代表・西野朗新監督に推薦W杯メンバーにオススメの「新戦力」(3)山中亮輔(横浜F・マリノス/DF)(2)はこちら>> 監督が変われば、サッカーも変わる。当たり前のこととはいえ、今季の横浜F・マリノスはその変化が極端だ。 新たにアンジ…
日本代表・西野朗新監督に推薦
W杯メンバーにオススメの「新戦力」(3)
山中亮輔(横浜F・マリノス/DF)
(2)はこちら>>
監督が変われば、サッカーも変わる。当たり前のこととはいえ、今季の横浜F・マリノスはその変化が極端だ。
新たにアンジェ・ポステコグルー監督が就任した横浜FMは今季、GKまでもがビルドアップに加わる徹底したポゼッション・サッカーに挑んでいる。昨季までチームを率いたエリク・モンバエルツ監督が、シンプルにラインを越えて(ボールを前に運んで)いこうとしていたのに比べると、かなり”キャラが立った”サッカーである。
J1第13節を終了して15位に低迷していることもあり、極端にポゼッションに偏ったサッカーには懐疑的な見方もあるだろうが、極端さはある意味、画期的であり、その挑戦は興味深い。
そんなポゼッション志向を強める横浜FMにあって、才能を開花させている選手がいる。左サイドバックを務めるDF山中亮輔だ。
F・マリノスで難易度の高い仕事をこなしている山中亮輔
ポステコグルー流のポゼッション・サッカーにおいて、”キャラの強さ”がとりわけ顕著に表れるのがサイドバックである。
ライン際を上下動し、サイド攻撃に加わるのはもちろんのこと、頻繁にボランチの位置(DFライン前方の中央に近い位置)にポジションを移し、ビルドアップにも積極的に加わる。”ペップ”・グアルディオラ監督時代のバイエルン・ミュンヘンのごとく、サイドバックに多彩な役割が求められるのだ。
現代サッカーでは、サイドバックは比較的プレッシャーを受けることなくボールを持てることもあり、”使われる”だけでなく”使う”側としてのゲームメイク能力が求められているが、それをより明確な形で要求しているのが、横浜FMのサッカーと言ってもいい。
自分の前方にいるFWとのコンビネーションだけでなく、中央にいるボランチやインサイドハーフなどの動きも見ながら全体のバランスを考え、円滑にボールを動かすための最適なポジションを取る。そのうえで、サイドバック本来の役割とも言うべき、縦への推進力も生み出さなければならないのだから、与えられる仕事の難易度は高い。
ところが山中の場合、こなすべきタスクが難しくなったことで、むしろその存在感を強めているように見える。
ときに絞った位置にポジションを取って、パスのつなぎ役となり、ときにタイミングのいいオーバーラップで前方のスペースへと飛び出し、ゴールにつながる決定的な仕事もこなす。求められる役割が増えたことで、攻撃参加の機会が減るどころか、決定機に絡む回数は増えているくらいだ。
レフティーである山中は、もともと左足のパンチ力には定評があり、ミドルシュートは彼の武器だった。決定機に絡む回数の増加は、すなわちそれを有効活用する機会が増えていることも意味する。
柏レイソルのアカデミー(育成組織)出身の山中は、U-19、U-21などの日本代表として国際大会に出場していることからもわかるように、若くして高い評価を受けていた選手だった。だが、柏のトップチーム昇格後はなかなか出番に恵まれず、2014年にはジェフユナイテッド千葉への期限付き移籍も経験したが、状況を大きく変えられないまま、昨季横浜FMに移籍してきた。
そして今季、ポステコグルー監督の就任、つまりは志向するサッカーの大きな変化とともに、水を得た魚のごとく、持てる才能を開花させている。
直線的でパワフル。身長171cmと小柄ながら、かつての山中のプレーは、どちらかと言えば豪胆なイメージがあった。ひと昔前なら、「和製ロベカル」とでも称されたのではないだろうか。
サイドバックやサイドハーフが本職でありながら、千葉時代には2トップのFWとして起用されたこともある。強烈な左足のキックが魅力的に映る一方で、DFやMFとして使うには、やや大味な面があったということでもあるだろう。
ところが、今の山中はピッチの中で非常に賢く立ち振る舞いながらも、”ここぞ”という場面で豪胆さを発揮している。そんな印象を受ける。
さて、そこで日本代表である。
ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の電撃解任を受け、急きょ指揮を執ることになった西野朗監督がどんなサッカーを志向するのかは、実のところ、まったくと言っていいほどわかっていない。漠然と「日本人らしい」とか、「パスをつなぐ」といったフレーズが聞こえてくるだけで、実態は闇の中だ。
だが、もし本当にポゼッションを重視し、ボールを保持して試合を進めようとしているのなら、この気鋭のレフティーをメンバーに加えたい。
山中が経験と実績では長友佑都に遠く及ばないのは確かだが、ポゼッションに必要なポジショニングの感覚は日々磨かれており、しかも、長友にはない左利きというアドバンテージも持っている。ようやく覚醒した25歳は、伸びしろという点でも長友を上回るはずだ。
ワールドカップ本番では守備に軸足を置かざるをえないと考えているなら、適任は長友だろう。しかし、ポゼッション重視と考えるなら話は別だ。
ゲームメイク能力があって、キックにはパンチ力がある。そんなレフティーを見逃す手はない。