日本女子 Photo:Itaru Chiba 2年に1度の世界卓球団体戦(4月29~5月6日/ハルムスタッド)を終えた日本代表選手団が5月8日の朝、帰国した。今大会での日本は女子が3大会連続の銀メダル、男子はベスト8という結果に終わり、目標…

日本女子 Photo:Itaru Chiba


 2年に1度の世界卓球団体戦(4月29~5月6日/ハルムスタッド)を終えた日本代表選手団が5月8日の朝、帰国した。今大会での日本は女子が3大会連続の銀メダル、男子はベスト8という結果に終わり、目標に掲げた打倒中国と金メダル獲得は果たせなかったものの、日本は東京2020五輪での悲願成就に向け、現状での中国との力差を確かめ今後の課題を持ち帰った。



中国から大金星を挙げた伊藤

 予選グループリーグ5戦と決勝トーナメント3戦の計8戦した日本女子代表チームは大会を通じて25試合を戦い、22勝3敗という高い勝率を挙げた。石川佳純(全農)、平野美宇(日本生命)、伊藤美誠(スターツSC)、早田ひな(日本生命/希望が丘高校)、長崎美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園)の5人はキャプテンの石川を中心に最後までよくまとまり、石川とともにフル出場した伊藤美誠(スターツSC)は予選グループリーグ第5戦のアメリカ戦で3番手だった以外、1番手で出場。すべてを全勝しチームに良い流れを作った。

決勝 中国・劉詩ブンとの激闘を制した伊藤美誠 Photo:Itaru Chiba


 8戦8勝したのは伊藤ただ一人。とりわけ決勝の中国戦で日本に負けなしの37連勝中だった劉詩ブンから1勝をもぎ取ったのは大きな成果だった。世界卓球団体戦で日本が中国に勝利したのは2004年ドーハ大会以来、実に14年ぶりとなる。今回の伊藤の大金星は彼女の戦型である前陣速攻の高速卓球に、2017年シーズンから取り組んできた「パワー」と「フットワーク」を加えた新しいスタイルの卓球が身を結んだ結果と言えるだろう。


チームを引っ張ったキャプテン石川

 予選グループリーグのアメリカ戦と決勝の中国戦で3番手だった以外、2番手でバトンを受け取ったキャプテン石川も伊藤が作った流れを切らさず、チームの大黒柱としてよく踏ん張った。特に韓国と北朝鮮による南北合同チーム「コリア」とのキム・ソンイ戦ではフルゲームの死闘を制し、決勝へ向かうチームに勢いをつけた。

石川佳純 Photo:Itaru Chiba


 2月のチームワールドカップで石川はキム・ソンイにストレート勝ちしていただけに、思いのほか苦しめられた印象もある。しかし、そこは世界卓球だ。相手とて万全の石川対策を敷いてきたに違いない。その中で大接戦を勝ち切った石川はカットマンに対してさらに自信を深めるとともに、リオ2016五輪個人戦の2回戦で悔しい負け方をしたキム・ソンイ戦に関して、「リオの自分は克服できた」と苦い記憶にピリオドを打った。なお石川が今大会で負けたのは決勝の朱雨玲のみだった。



戦意を取り戻した平野は再浮上の予感

 平野美宇(日本生命)は今大会、3番手に起用されることが多かったが、予選グループリーグ第2戦のエジプト戦は早田ひな(日本生命/希望が丘高校)が起用されたため控えに回り、第5戦のアメリカ戦では2番手、そして決勝の中国戦は2、4番手の2点起用でエースポジションを任された。平野も中国戦で丁寧と劉詩ブンに2敗したが、その試合も含め大会を通して非常に高い集中力を見せていた。

決勝 中国・丁寧戦 平野美宇 Photo:Itaru Chiba


 2017年シーズン後半の不振がたたり、今シーズンに入ってからも平野のプレーには覇気が感じられなかった。それが世界卓球では一変し、全力で勝負に向かう姿勢が感じられた。これもプロになった自覚からだろうか。もともと高い技術を持つ平野だ。結果的に敗れはしたものの、武器である超高速両ハンドドライブで中国人選手を打ち負かす場面も多くあり、メンタル面での復調が今大会の彼女の一番の収穫だったと言えるだろう。

声援でチームをサポート 長﨑美柚/早田ひな Photo:Itaru Chiba


チームを盛り上げた早田と長﨑

 予選グループリーグ第2戦のエジプト戦のみの出場となった早田と出場機会のなかったシニア初代表の長﨑美柚(JOCエリートアカデミー)も仲間を支えチームをよく盛り上げた。振り返ればほんの2カ月前、チームワールドカップでは平野の出番が1度もなく、早田はフル出場していた。それだけ現在の女子選手は実力が拮抗しており競争が激しいということだ。

 東京2020五輪ではダブルスの兼ね合いもあることから、今後の代表争いはますます激しく複雑になっていくと思われる。だが日本の目標はただ一つ。打倒中国、そして金メダル獲得。世界卓球終えた選手たちは共通の目的を持ちながら、再びワールドツアーのポイント争いに戻っていく。


(文=高樹ミナ)