またしても圧勝である。アンダルシア地方南部にあるヘレス・サーキットで開催されたMotoGP第4戦・スペインGPで、ディフェンディング・チャンピオンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が自身とホンダRC213Vの強みを遺憾なく…

 またしても圧勝である。アンダルシア地方南部にあるヘレス・サーキットで開催されたMotoGP第4戦・スペインGPで、ディフェンディング・チャンピオンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が自身とホンダRC213Vの強みを遺憾なく発揮してシーズン2勝目を達成した。



2連勝でランキングでもトップに立ったマルク・マルケス(左)

 マルケスは日曜午後の決勝レースを2列目5番グリッドからスタート。序盤周回では先頭集団のなかでしばらく様子を見た後、8周目の最終コーナー立ち上がりでトップに立った。そして数周ほど様子をうかがった後に機を見て後続を一気に引き離しにかかり、全25周のレースの終了直前には7秒以上もの大差を築き上げた。

 この大きなリードは、背後で2位争いをしていた3台が多重クラッシュで全滅したために、そのさらに後ろを走行していた5番手走行の選手とのタイムギャップ、という結果になったことを割り引くとしても、マルケスが圧倒的な優位でレースをコントロールしていたという事実は揺るがない。

 ラップタイムの推移を見ても、2位争いを繰り広げていた選手たちが1分39秒中盤から後半で走行していたのに対して、マルケスは1分39秒台前半を刻み続けており、周回ごとに彼らを引き離す傾向にあったことはこの数字にも明らかだからだ。

「ここヘレスで勝てて、欧州ラウンドのスタートには最高の形になった。今回はスピードが左右したレースではなく、正確さと各ラップに適切な判断をしっかりできたことが勝因になった」とレース後に語ったマルケスの言葉が、この日の展開を端的に言い表している。

「このコースでは皆が一発タイムを出せるけど、レースディスタンスについてはまた別の話。25周は長いので、タイヤのマネージメントが大事になってくる。序盤と終盤ではバイクのバランスも変わってくるから、乗り方も変えていかなければならない」

 トップカテゴリーで戦う選手なら、マルケスに今さらそんなことを言われなくても誰しも理解していることだろうが、それを的確なタイミングで「正確」かつ「適切な判断」をできていたかどうかが勝負と明暗を分けた、ということなのだろう。いずれにせよ、これら上記の言葉からも、マルケスはレースに向けて十分な自信を持って臨んでいたことがよくうかがえる。

 今季2勝目を挙げたことで、ランキングでも首位に立った。だが、「まだ4戦終わっただけで、これからレースはたくさんあるから」とマルケス自身が話すとおり、シーズン展開はまだ予断を許さない。

 ホンダ陣営全体のパッケージのまとまりのよさを考えると、チームメイトのダニ・ペドロサや同じくファクトリーマシン勢のカル・クラッチローが表彰台争いに絡んでくることは確実だろう。さらに、今回はノーポイントで終えたものの、コース特性的に苦戦することの多かったヘレスで高いパフォーマンスを発揮していたドゥカティファクトリーが、昨年からさらに進歩を見せていることにも、おそらく異論の余地はないだろう。

 また、今回は幸運に恵まれた表彰台という側面もあるとはいえ、スズキも結果として3戦連続で表彰台に登壇している。もちろん、ただの偶然な幸運で3連続表彰台を獲得したわけではない。

 幸運にも射程距離というものがある。その圏内を安定して走れているからこその、3戦連続3位という結果だ。これらのリザルトを得たことで今後の開発に拍車がかかり、それがさらにライダーとチームのモチベーションを刺激する好循環に持ち込むことができれば、シーズン展開はさらに面白いものになるだろう。

 気になるのが、ヤマハファクトリーの苦戦傾向だ。昨年の第9戦以降、ホンダとドゥカティのライダーのみが優勝しているという事実は、この2メーカーが他を圧するほど図抜けているというよりも、むしろヤマハファクトリーの苦戦と読み取る方向で解釈したほうが適切であるように思える。

 その意味で、次のフランスGPは今季の帰趨(きすう)を予想するいい指標になるかもしれない。

 ルマン・サーキットは伝統的にヤマハが強さを発揮してきたコースで、過去10年の結果を見ても、優勝回数はホンダの3回に対してヤマハが7回という圧倒的な実績の違いがある。実際に昨年のレースでも、マーベリック・ビニャーレスが優勝を飾っている。

 それだけに、現在のヤマハファクトリーの状況を推し量る水準点となるであろうバレンティーノ・ロッシとビニャーレスの次戦での走りには、大きな注目が集まる。