NBAファイナルは第2戦もゴールデンステイト・ウォリアーズの圧勝だった。第1戦は15点差、第2戦ではさらに差は広がり33点差での勝利。特に、ディフェンスがすばらしかった。背丈や手足の長さをいかし、味方同士の連携もすばらしく、コートが狭く見え…

NBAファイナルは第2戦もゴールデンステイト・ウォリアーズの圧勝だった。第1戦は15点差、第2戦ではさらに差は広がり33点差での勝利。特に、ディフェンスがすばらしかった。背丈や手足の長さをいかし、味方同士の連携もすばらしく、コートが狭く見えるようなディフェンスに、カンファレンス決勝までのプレイオフ3ラウンドでは平均106.9点をあげていたクリーブランド・キャバリアーズのオフェンスも、なすすべがないままに第1戦では89点、第2戦では77点しかあげることができなかった。FG成功率は4割を切っている。


それだけ完璧な試合を見た記者の中から、第2戦の試合後に、こんな質問が飛び出した。
「これだけのディフェンスをして、歴代で最高のチームとうい立場をさらに確固なものとしたのではないですか?」
聞かれたドレイモンド・グリーンは、ウォリアーズの中でも自信家で、しかも思ったままを口に出す選手なのだが、このときの答えは慎重で、優等生のコメントだった。まだあと2勝して優勝を決めてからでないと、そういったことを口にすることも考えられないと言い、すべては主観の問題だからと付け加え、さらにこう言った。


「僕らがショータイム・レイカーズ(マジック・ジョンソンとカリーム・アブドゥル-・ジャバーを中心に、10年間で8回NBAファイナル出場、うち5回優勝した80年代のレイカーズ)より上だなんて、どうやって言えるんだ? 一度も戦ったことがないのに」
すると、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、どこからか声が聞こえきた。


「僕らはショータイム・レイカーズより上だ」
深く、断固とした言い方は、まるで天の声のようでもあったが、実際の声の主は、会見場でグリーンの隣に座っていたクレイ・トンプソン。父は、ショータイム・レイカーズの一員、マイケル・トンプソンだ。
ふだんはおとなしく、物議をかもすようなことを口にすることもないトンプソンだが、ショータイム・レイカーズとの比較となると口を出さずにいられなかったようだ。家族間の競争、父に対する挑戦状のようにも聞こえた。


しかし意外だったのはその翌日、父のマイケル・トンプソンが、息子の意見に同意したことだった。ロサンゼルスでレイカーズのラジオ解説者を務め、スポーツラジオ局で番組も持っているトンプソンは、自分の番組で言った。
「クレイに同意だ。彼ら(今季のウォリアーズ)は私たち(80年代レイカーズ)に勝つだろう」
理由としてあげたのが3Pの差。80年代当時、3Pシュートは存在していたが、今ほど重要な武器だとは思われていなかった。実際、たとえば連覇の2年目だった87−88シーズンのレイカーズがプレイオフ24試合で打った3Pは平均6.4本、決めた数は平均2.3本。今季のウォリアーズがNBAファイナル第2戦までのプレイオフ19試合で打った3Pは平均30.8本、そのうち決めたのは平均12.4本。3Pによる点はショータイム・レイカーズが7点弱なのに対して、今季のウォリアーズは37点以上。その差30点差。レイカーズが同じ数の2Pシュートを決めたとしても10点差になる。


「あれだけ速く得点を決めるウォリアーズについていけない」とマイケル・トンプソンは言う。
もっとも、これには当時のレイカーズでチームメイトだったマジック・ジョンソンが異議を唱えた。
「誰にも屈するつもりはない。誰が相手だとしても、マイケルが何と言ったとしても、関係ない。ショータイム・レイカーズは(今の)ウォリアーズに勝つ。シリーズで戦えば、僕らが勝つ。いつのルールで戦おうが、関係ない」と反撃、現役時代のままの競争心だ。


ジョンソンがレイカーズの勝利を明言する理由は、レイカーズのビッグマン。
「ウォリアーズは僕らにマッチアップしなくてはいけない。彼らがカリームに対応できるわけがない。ジェームズ・ウォージー(当時のレイカーズのパワーフォワード)に対応できるわけもない。だいたい、僕らは(ディフェンスの)ハンドチェックが許されていた時代に平均118点あげていたのだから。
確かに僕らはステフ(カリー)やクレイのような選手と対戦したことはない。それは確かだ。でも、彼らも僕らのようなチームを相手にしたことはない。だいたい、僕を誰が守るんだ? 僕らは彼らとのマッチアップに苦労するかもしれないけれど、彼らのほうがさらに僕らとのマッチアップに苦労する」
時代を超えた論争は、言い合いをするだけで結論が出ないのが面白いところであり、考えようによっては不毛なところでもある。


しかし、このファイナルの最初の2試合で連敗したクリーブランド・キャバリアーズにとっては、対ウォリアーズ対策は机上の空論ではなく、現実問題。ホームに戻ったキャブズがウォリアーズのディフェンスを崩すことができなければシリーズはあっさりと終わる。り、私たちはウォリアーズと過去のチームのどちらかが上という論争に戻るしかなくなる。

 

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