専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第153回 過去、アマチュアの競技に何度か出場したことがあるので、その話を元にして、いろいろとお話ししたいと思います。 どんな試合にしろ、競技ゴルフはムチャクチャ緊張します。朝…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第153回
過去、アマチュアの競技に何度か出場したことがあるので、その話を元にして、いろいろとお話ししたいと思います。
どんな試合にしろ、競技ゴルフはムチャクチャ緊張します。朝イチのティーショットで、すでに心臓はバクバクですから。
ここでチョロをやったら、「木村家末代までの恥」「お家断絶か」くらいの空気に襲われます。終(しま)いには、「1日空けて、お金を払ってまでして、何でこんなつらい目にあわなきゃいけないの」と、ひとり逆ギレ状態に陥ります。
ですから、朝イチのティーショットがまあまあ決まると、もうその日の仕事の90%は終了。ウキウキモードとなり、心の中でスキップし、セカンド地点に向かいます。
昔、ある競技に出たときには、友人が2組ぐらい前にいて、第1打でOBをやらかしました。暫定球を打ちましたが、それも怪しい……。第5打目で何とか前に進むことができました。
それを見ていて、足がガクガクでしたね。
「競技ゴルフは恐ろしかぁ~」
結局、彼は1ホール目で予選敗退がほぼ確定。あとは、消化ラウンドですよ。明日は我が身と思って、そのときは超慎重にラウンドしました。
競技ゴルフといっても、多種多様あります。出場したことがあるのは、大きいのだと、日刊アマのダブルス予選とかですかね。クラブ競技は月例から理事長杯予選まで、万遍なく出たことがあります。小さい競技だと、ショートコース選手権というのにも出ました。
最近の傾向としては、何と言っても「ダブルス」の競技が人気です。やはり、ひとりでエントリーする単独競技は、誰とも喋らずに1日が終わってしまうことの虚しさ、すなわち”ぼっちゴルフ”の孤独感に耐えられず、皆、敬遠するんですね。
かつて、パブリック選手権の予選には、仲間5~6人と同じ会場でエントリーしたものです。当時は、自称ハンデ15程度から参加資格があって、基本的には誰でも参加できたのです。
複数でエントリーすると、ラウンド前にはその友人たちと喋ることができます。それだけでも、だいぶリラックスできました。
友人と同じ組に入ることは稀(まれ)ですが、前後の組になることはよくありました。それでも、精神的にはだいぶ楽なもので、後ろの仲間から「ナイスショット~!」と言われるだけで気持ちが楽になりましたし、一方で「試合だ」という意識が増して、張り切ってラウンドできたものです。
そんなわけで、最近のアマチュアゴルファーは”ぼっち”が嫌らしく、気楽にプレーできるダブルスが人気です。テレビでも、芸能人のダブルス競技をよく見ているからか、「楽しそう」と思うのでしょう。
アマチュアの競技では
「ぼっち感」が半端ないんですよね...
それはともかく、主に個人競技ではどういうことが起こるのか。みなさん、多くを語らず、知恵と策略を駆使してプレーを進行していきます。順番に説明していきましょう。
(1)ポジショニング
まず、初対面の4人ひと組で競技開始。通常は競技委員の説明を聞き、誰が誰のマーカーになるかを確認し、軽く挨拶してラウンドスタートとなります。
このとき、「よく(競技には)参加されるんですか?」とか、あまり話かけないのが昭和のゴルファーです。「男は黙ってサッポロビール」(古いなぁ……)のCMで育っているので、多くを語らず、黙々とプレーしていきます。
その代わり、誰が一番うまいのかを見極め、ペースメーカーとして利用します。不思議なもので、うまそうに見える人って、たいがいシングルさんです。
これは、丁寧な物腰、安定しているフォーム、決まっているルーティーンなどを見て判断します。かつ、1ホール目で打った球筋とアプローチでも、それはわかりますね。
うまい人の何よりの証拠は、次のティーショットで先に打ちます。すなわち、オーナーです。さすれば、その人の狙ったところに狙って打てばいいのです。実際、打てるかどうかは、また別問題ですが……。
(2)マウンティング
まんじりともしない試合展開となり……って、そりゃそうだ。5ホール目あたりでお茶屋さんにたどり着く頃、ボギーだらけのいつものゴルフをしている自分がそこにいます。大きな競技ですと、すでにこの時点で予選敗退は決まったようなものです。いまだパープレーか、1オーバーぐらいの人がこの扉の先に進めるのです。
こうなってくると、もう諦めモードですから、うまい人を持ち上げてコミュニケーションを図るしか、楽しく回る方法はありません。
「お上手ですね。しかも、よく飛ぶし。どこかのクラブに所属されているのですか?」
なんて、おべんちゃらをつい言ってしまうんですな。
すると、相手も言われ慣れているので、悪い気はしないのでしょう。「どこぞの試合で予選突破したことがあります」なんて言ってきたら、ハハァ~とひれ伏すしかありません。
そんなふうにして、「弱い犬ほどよく吠える」理論で言えば、予選通過できない者は、うまい人の盛り立て役を自ら率先してやらざるを得ないのです。
もちろん、ず~っと黙ったままラウンドするのも可能ですが、叩いたまま無言って、すごくストレスが溜まります。そこはもう、昔のオリンピックのように「参加することに意義がある」と捉えるのがいいでしょう。
(3)ランチミーティング
競技ゴルフといっても、昼休みは大概あります。短い時間ですが、そのテーブルで会話が弾むきっかけを作れれば、そのパーティーの主導権を握ることができます。
待ってました! 宴会担当の方は、そこでしっかり役目を果たしましょう。「せっかく知り合いになったので、今度一緒にゴルフでも」と、LINEを交換するのもいいでしょう。
ただ、そこで「あれ? そういえば○○さんの姿が見えませんね」ということがよくあります。予選を通過するような、実は上位を目指している人は、昼休みをレストランで取らない人が結構いるのです。
それは「下手が伝染するから」……って、もっともらしい話ですが、あまり和みたくないのと、食べすぎたりしないため、みたいです。
緊張を維持するには、絶えず孤独で、朝買ってきたコンビニのおにぎりを頬張りながら、次の作戦を練る。そして、休憩を早く切り上げて、パター練習をするとかね。そうやっている人が多いです。
(4)結果発表
試合が終われば、順位が発表されます。当然、我々は下から数えたほうが早い順位となって、改めてそのことに慄(おのの)きます。
明らかに場違い感が漂うわけで、いたたまれなくなります。風呂に入る余裕もなくなり、さっさと会場を後にします。
練習する気力もなく、むしろお姉ちゃんのいる店に行き、癒しを求める……って、そのほうが多いかなぁ。
競技に出るのは、ある意味、非日常の緊張感を得るためには、有意義な行動です。けど、レベルが違いすぎるのもね。
やはりここは、自分の実力に見合った競技に出る。それが、精神衛生上、よろしいようです。