NBAプレーオフ2018 カンファレンス・セミファイナル展望@イースタン編 イースタンのファーストラウンドは4カード中、2カードが第7戦までもつれ込んだ。セカンドラウンド(カンファレンス・セミファイナル)も混戦となるのは必至だろう。カンファ…

NBAプレーオフ2018 カンファレンス・セミファイナル展望@イースタン編

 イースタンのファーストラウンドは4カード中、2カードが第7戦までもつれ込んだ。セカンドラウンド(カンファレンス・セミファイナル)も混戦となるのは必至だろう。カンファレンス・ファイナルに進む2チームはどこだ?



2016年のドラフト全体1位で76ersに入団したベン・シモンズ

トロント・ラプターズ(1位/59勝23敗)
vs.
クリーブランド・キャバリアーズ(4位/50勝32敗)

 3季連続イースタン王者に君臨するキャブスが、薄氷を踏むようにしてカンファレンス・セミファイナルへと駒を進めた。

 第7戦までもつれたインディアナ・ペイサーズ(5位/48勝34敗)とのファーストラウンドは、まさに”キング”レブロン・ジェームズ(SF)劇場となった。33歳のレブロンは7試合で平均41.2分出場し、平均34.4得点・10.1リバウンド・7.7アシストを記録。驚愕の成績を残した。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 ハイライトは第5戦。95−95で迎えた第4クォーター残り26.3秒、レブロンがまさかのターンオーバーを犯し、ペイサーズのボールとなる。残り3.3秒でペイサーズのエース、ビクター・オラディポ(SG)がレイアップシュートを放ち、これで勝負ありかと思われた。だが次の瞬間、レブロンが背後からブロック。ペイサーズに決勝点を許さなかった。

 そしてキャブス、最後のオフェンス。レブロンがインバウンズパスを受けると、ドリブルを2度ついてスリーポイント(3P)シュートを放つ。ブザービーターとなったシュートはリングの中へと吸い込まれ、劇的な幕切れとなった。ちなみにこのゲーム、レブロンは4本の3Pを打っているが、決まったのはこの1本だけである。

 ただ、決勝点を決めたレブロンの歓喜する姿に、違和感を抱いたファンも多いのではないだろうか。この試合はファイナルでも、カンファレンス・ファイナルでもない。ファーストラウンドで3勝2敗と王手をかけただけのゲームだ。

 続く第6戦、キャブスは87−121の大差で敗れる。勢いは完全にペイサーズだった。しかし第7戦を前に、レブロンは達観したコメントを残す。

「”ゲーム7”はスポーツにおいて最高の言葉だ。ホームでの第7戦は、ファンなら誰もが興奮するはず。ファンは自分がその試合の一部になれることを喜んでいるはずだ。チームのみんなにも、ゲーム7の一部になれることに興奮し、楽しんでもらいたい」

 そして迎えた第7戦、レブロンは足を痙攣(けいれん)させながら45得点をマーク。最終的に105−101でゲーム7を制し、首の皮一枚で勝ち上がった。

 対するラプターズは、ファーストラウンドでワシントン・ウィザーズ(8位/43勝39敗)と対戦。2連勝後に2連敗、そしてふたたび2連勝し、トータル4勝2敗でセカンドラウンドに駒を進めた。

 キャブスvs.ラプターズのカードは、昨年のカンファレンス・セミファイナルと同じ顔合わせである。そのときはキャブスがラプターズをスウィープ(4連勝)で破っている。

 しかし、今季は状況がまったく違う。ラプターズは放出したデマール・キャロル(SF/ブルックリン・ネッツ)に代わり3年目のOG・アヌノビー(SF)をスターターで起用したが、それ以外は昨季とほぼ変わらないメンバー。チームの成熟度が高まった結果、第1シードの獲得に成功している。

 さらに2年目のパスカル・シアカム(PF)やフレッド・ヴァンブリード(PG)といった若手が急成長を遂げ、セカンドユニットも充実。実際、ウィザーズとの第6戦は第4クォーターでベンチメンバーが活躍し、貴重な白星を手にしている。

 司令塔のカイル・ロウリー(PG)は、セカンドラウンド進出を決めるとこう語った。

「いつもやっていることを確実に遂行できれば、どんな相手であろうと打ち負かすことができる」

 一方のキャブスも、スターターのメンツは昨季とほぼ同じである。シーズン序盤はケビン・ラブ(PF)をセンターに起用してスモールラインナップで戦っていたが、トリスタン・トンプソン(C)をスターターに戻したことで、先発の顔ぶれは昨季のカイリー・アービング(PG/ボストン・セルティックス)からカイル・コーバー(SG)に変わっただけだ。

 しかしラプターズとは異なり、今季のキャブスはチームの成熟度が高まっていない。シーズン途中に多くの選手を獲得したがフィットせず、最終的には昨季のスターターからアービングを失っただけの状況に戻さなければならなくなった。つまり、苦肉の策で現状をしのいでいる今季のキャブスは、昨季よりも大幅にパワーダウンしている。

 レブロンがファーストラウンド以上の活躍を見せるか、もしくはラプターズがスウィープされた昨季の悪夢に悩まされでもしないかぎり、戦前予想はキャブス不利と言わざるを得ないだろう。

ボストン・セルティックス(2位/55勝27敗)
vs.
フィラデルフィア・76ers(3位/52勝30敗)

 レギュラーシーズン後半、セルティックスは絶対的エースのカイリー・アービング(PG)が戦線離脱。第2シードの座こそキープしたものの、エース抜きでファーストラウンドを勝ち抜くのは困難だと思われた。しかも対戦相手は、第7シードながらヤニス・アデトクンボ(SF)を擁する成長著しいミルウォーキー・バックス(44勝38敗)である。

 しかし、アービングはコートにはいないだけで、チームメイトとともに戦っていた。控えPGのシェーン・ラーキンが言う。

「僕らの多くは普段、プレーオフでプレーしないような選手たちばかり。そんな僕らにアービングは試合前、全員にアドバイスをくれるんだ。コート上にはいないけど、コートの外から助けてくれる。僕たちは一緒に戦っているんだ」

 アービングのアドバイスの影響もあってか、ルーキーのジェイソン・テイタム(SF)や2年目のジェイレン・ブラウン(SG)ら若手たちは、プレーオフの舞台でも物怖じせずに能力を発揮。バックス相手に堂々としたプレーを見せた。

 また、アービングの代わりにスターターを務めた3年目のテリー・ロジアー(PG)がゴートゥーガイ(大事な場面で力を発揮する選手)となったのも大きかった。レギュラーシーズンのロジアーは平均11.3得点・2.9アシストという成績だったが、ファーストラウンド7試合では平均17.6得点・6.7アシストと急上昇。第7戦では26得点・9アシストとチームを牽引し、セカンドラウンド進出に大きく貢献した。

 第7戦で右のハムストリングを負傷したブラウンのコンディションは気がかりだが、右手親指の手術で3月中旬から離脱していたマーカス・スマート(PG)が復帰したことは朗報だ。セルティックスにとって大きな戦力アップとなるだろう。

 しかし、それでもタレントでは76ersが上回る。

 3月末に眼窩骨(がんかてい)骨折で欠場していたジョエル・エンビード(C)がついに復帰。2年目ながらオールスターのスターターに選ばれたセンターがコートにいるだけで、チームメイトにとっては心強いだろう。また、ベン・シモンズ(PG)もファーストラウンドでルーキーらしからぬ存在感を示していた。平均18.2得点・10.6リバウンド・9.0アシストと、平均トリプルダブルに近い成績を残している。

 ファーストラウンドで76ersに1勝4敗で敗れたマイアミ・ヒート(6位/44勝38敗)のドウェイン・ウェイド(SG)は、エンビードとシモンズを「NBAの未来だ」と語り、引退するかどうかの問いには「これから考える」とコートを去った。

 タレントも、勢いも、76ersが上なのは間違いないだろう。セルティックスは上位シードの意地とホームコートアドバンテージで、どこまで食い下がることができるか。

 最後に話はそれるが、ウェイドの「NBAの未来だ」というコメントが気にかかる。まさに今、時代が新たなスターを求めているように思えてならないからだ。

 NBAの顔として、これまでリーグを牽引してきたのはレブロン・ジェームズ、カーメロ・アンソニー(SF/オクラホマシティ・サンダー)、そしてドウェイン・ウェイドなど「2003年ドラフト組」なのは間違いない。ところが今季、そんな往年のスターたちに若手が引導を渡している。

 ウェイドには前述したルーキーのシモンズと2年目のエンビードが、そしてカーメロにはルーキーのドノバン・ミッチェル(PG/ユタ・ジャズ)が……。では、レブロンには誰が引導を渡すのか? 今季の若手の躍進を見ていると、それはカンファレンス・セミファイナルで対戦するラプターズよりも、若手がチームの中心となっているセルティックスか76ersがふさわしいように思えてならない。

「プレーオフをどこまで勝ち進めるか?」と聞かれたシモンズは、こう答えている。

「望んでいるところまで行けると信じている」

 セカンドラウンドを勝ち抜き、新たな時代のスターとなるのは誰だ?